#台風19号災害支援 発災から2週間NPOの軌跡 長野県
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台風19号水害発生から2週間、長野でNPOはどう動いたか?

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長野市民新聞「市民とNPOのひろば」2019.11.5掲載 執筆:ナガクル編集デスク 寺澤順子
 2019.11.13

10月12日から13日未明に掛けて襲った台風19号。その被害は長野県各所で甚大です。

10/24決壊現場付近、民家の庭に流れ込んだ体育館床材を、重機で撤去する支援グループ(DRT JAPAN)

穂保地区では、堤防が決壊した後15日水位が低下し、17日には仮堤防が完成。ようやく住民が現地に入れる状態となりました。24日に決壊現場近くの民家でボランティアと一緒に作業する被災者の大学生に話を聞くと「17日に県外から戻ると、実家周辺は見渡す限り泥だらけ、言葉を失った」と話しました。決壊箇所のすぐ近くにある長沼コミュニティセンターの体育館の床ははがれ、北側の民家に突っ込んでいました。重機を持って助けに入ったグループが撤去作業を行っていました。こうしたプロボノ(専門家のボランティア集団)といわれる民間NGOが、重機やダンプ、軽トラなどを全国から調達し、廃棄物や泥を運び、道を明けていました。

10月15日、長野県対策本部で災害ボランティア担当者の会議

災害が発生してすぐに、災害専門のNPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)が県災害対策本部室に入り、岡山や広島の災害での経験をもとに、現地調査をし対応に当たりました。また県NPOセンター、県社会福祉協議会、県生協連などの民間が作る「長野県災害時支援ネットワーク」のメンバーも対策本部で県職員と共にボランティア担当としてその対応に当たっています。

10月19日長野市南部ボランティアセンターの様子

長野市では市社会福祉協議会が中心となって「災害ボランティアセンター」南部と北部団体サテライトの立ち上げ運営に着手。

第2回情報共有会議(10/16)では次々と課題が出されていく

また民間組織「長野市災害ボランティア委員会」や防災啓発グループ「ながのみらい」のメンバーが、避難所やボランティアセンターなどに調査、サポートに入り、毎晩ミーティングを重ね、現状と課題を共有し被災者支援に尽力してきました。フェイスブックやメッセンジャーなどのSNSを活用して、24時意見交換を行い、民間サイドにできることを模索。同時に市民に様々な情報提供をし対応に当たっています。

毎回共有会議では車座で情報交換し、課題に対し知恵を出し合う(10/23)


県災害時支援ネットワークはNPOや市民グループなどを集め、14日から週3回、情報共有会議を開催。6回までで延べ332人、94団体が参加しました。毎回、県の防災本部からの情報共提供、被災現場の状況、災害ボランティアセンターの現状、避難所での被災者の様子などについて報告があり、分野ごとに車座で意見交換します。

第6回情報共有会議では前原氏(災害NGO結代表)が地域をきれいにする作戦を呼びかけた


24日に行った第6回会議では「今、現場では災害廃棄物の山、泥の山がたくさんあり無残な光景に。住民やボランティア、関係機関みんなで心を一つにして景色をきれいに一変させたい」と災害NGO「結」の前原士武さんが訴えました。また県災害時支援ネットワークは市災害ボランティア委員会と協働で、炊き出しや心のケアなどのボランティアをマッチングするシステムも準備しています。

穂保サテライト拠点でNGO(写真は青年海外協力協会)や市民グループも活躍(10/24)


今までに経験のない災害対応の混乱の中で、県と市や自衛隊、県内外のNPOや社会福祉協議会、そして小さな市民グループと一緒にスピーディな協働が求められています。「ここからが長期戦。在宅避難者の調査や支援活動もし、一人も取り残さず助けたい。みんなで一緒にがんばりたい」と第6回会議参加者が最後に呼びかけました。

ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。

 

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 #生物浄化法による安全な水
関連する目標:  
ソーシャルライター 吉田百助
 2019.11.6

海外を旅行する際、生水を飲まないように注意を受ける。現地の水が合わずにお腹を壊すことがある。水道水が飲める国は世界でも十数カ国しかなく、蛇口をひねれば「きれいな水」が出る日本は希少な国。
ユニセフ(UNICEF:国際児童基金)のホームページには、「2017年時点、世界では22億人が安全に管理された飲み水を使用できず、このうち1億4,400万人は、湖や河川、用水路などの未処理の地表水を使用しています」とある。下グラフ参照

SDGs(持続可能な開発目標)のゴール6「安全な水とトイレを世界中に」のターゲット1は、「2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する」こと。水質の安全性に加え、必要な時にいつでも手に入れられる「安全に管理された水」を求めている。

安全な水、きれいな水、おいしい水を目指したみなさんの活動を表彰するとした「第21回日本水大賞」(主催:日本水大賞委員会/国土交通省)で2019年6月25日、「生物浄化法による安全な飲料水の普及」で国際貢献賞を受賞した中本信忠さん(信州大学名誉教授理学博士、NPO地域水道支援センター理事、NPO沖縄Blue Water理事)。同氏が案内する現地見学会があると聞き、長野県上田市を訪ねた。

1923年(大正12年)に建設され96年目になった現在も現役の染屋浄水場

水をきれいにする浄化のしくみ
「水が第一」にちなんで毎月第一水曜日(2019年は11月5日で終了)に見学会を開く上田市の染屋浄水場(上田市古里2250)。場内を見学しながら、中本信忠さんの説明を受けた。
同場の浄水方法は「緩速(かんそく)ろ過法」と呼ばれる。戦前の浄水はほとんどこの方法で行われていたそうだ。国内外で「小石や砂の層による物理的なろ過(砂の層にゆっくり水を流すことによって浄水する仕組み)」(英名Slow Sand Filtration)と考えられていた。
中本さんは長い研究の末、水をきれいにしていたのは砂ではなく、水中の多様な生物たちであることを発見した。砂の間に棲むバクテリアやプランクトン、藻など顕微鏡で見ないとわからないほどの微小な生き物が、水に含まれる不純物や濁りを体に取り込み、排せつ・発酵・捕食といった食物連鎖を繰り返して細菌やウイルスまで分解・除去している。「砂の層の表面にすんでいる生物群集の働きによって、水の汚れや雑菌を除去している」とし、名称を「生物浄化法」(英名Ecological Purification System)とした。

写真右から二人目、ハンドマイクをもって案内してくれた信州大学名誉教授の中本信忠さん。世界各地の浄水場で生物現象を調査し、生物群集による浄化の仕組みと方法を世界中で指導している。

コストいらずでエコな施設
この浄化場での人の役目は、生き物にやさしい環境を守ること。薬品も機械も電気も使わない施設は低コスト・省エネで、維持管理もメンテナンスも容易。自然の力を活かすだけで機械を使っていないので災害に強く、停電になっても断水することがない。薬品を使わないので、水道管などの設備が痛まず長持ちする。まさに持続可能な仕組み。簡易な施設であれば現地にある材料で手造りすることができるスマートテクノロジー(賢い技術)として、世界中に広がっている。
詳しい様子は、中本信忠さんのブログでさまざま紹介されている。


染屋浄水場の浄水濁度は0.000度。水道水基準で定められた浄水濁度2.0度と比べると、ものすごく いい水、安全・安心な水なのがわかる。口に含むと、とてもやわらか。口の中を刺激するものも匂いもなく、のどにしみ込むようなおいしさが広がる。

日本の主流「急速ろ過法」
日本の水道水を供給する施設の多くは、1960年から70年代に造られた「急速ろ過法」という方式を採用している。
川から取り込んだ水に凝集剤(ポリ塩化アルミニウム)を加え大型の機械で攪拌して濁りを沈め、臭気を活性炭で吸着し、塩素を加えて消毒。さらに薬剤処理で発生した大量の汚泥を処分しなければならないのが「急速ろ過法」。戦後「化学薬品が万能」と言われた時代から大量の殺菌剤などを使い、浄水場に藻が繁殖しないよう殺藻剤をまいた。
1974年には、アメリカの消費者団体が「急速ろ過処理では腐植物質が塩素と反応し発ガン物質が生成している」と警告し、大きな問題になったそうだ。(中本信忠さんの著書「おいしい水の探求-2」より)
日本の水道水の消毒に使用される塩素は、水道法で各家庭の蛇口で1リットルあたり0.1mg以上の濃度を保つように規定されている。一方、塩素が有機物と化学反応することにより、カルキ臭が発生するほか、発がん性が疑われるトリハロメタン(トリハロメタンのうちクロロホルムおよびブロモジクロロメタンについてはIARC(国際がん研究機関)においてGroup 2B(発がんがあるかもしれない物質)として勧告)を生成すると言われている。
さらに、大量に使用する薬剤は、機械や水道管などの設備も痛める。機械設備の維持・修理と交換・更新にも多額の費用と手間がかかっている。
ここまで聞くと、染屋浄水場の「生物浄化法」とは真逆な高リスク高コストの方法にしか思えない。

水道法の改正で水道事業はどうなる
2019年10月、水道基盤の強化を理由として「改正水道法」が施行された。老朽化した機械施設や水道管の更新などに多額の費用がかかる一方、人口減少に伴う水使用量減で水道料の減収が見込まれることから、水道事業に民間企業の参入を促すことを目的にしている。施設を自治体が持ちながら経営権限を民間へ売却する「コンセッション方式」の導入や、市町村の枠を超えて経営の一本化を探る「広域連携」といった検討がはじまっている。
世界を見ると、水道事業の民営化は1990年代に世界銀行とIMFなどの国際金融機関が水道民営化を債務国への融資条件としたことで各国に拡大していった。
ところが、PSIRU(公共サービス国際研究ユニット)のデータによれば、2000年から2015年の間に37か国235都市が民営化した水道事業を再び公営化に戻している。主な理由は、①水道料金の高騰、②財政の不透明性、③劣悪な運営、④サービスの低下など。民間企業側は、契約打ち切りで予定していた利益が得られなくなったと違約金の支払いを求め、アメリカのインディアナ州は仏ヴェオリア社に2900万ドル(日本円で約29億円)を支払っている。

中央の「ろ過池」には藻が繁殖している。光合成で酸素を生産し微小生物が活躍しやすい環境をつくっている。

気候と自然に恵まれた日本は、水にも恵まれている。多様な生き物の力を活かした「生物浄化法」は、環境にやさしく、経済的な負担も少ない。世界が認める持続可能な仕組みが長野県にある。生きるために欠かせない命を支える水を再認識し、これからの水道事業のあり方を注視していきたい。
(文責:吉田百助)

 

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 #県民が誇れる「長野県産」を
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「長野県産」で子どもたちの健康を守りたい

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執筆 吉田 百助
 2019.2.7

いまは「安心」の長野県産農産物

店頭に並ぶ農作物に「長野県産」の表示を見つけると「安心」できる。さらに生産者に知った名前があれば、迷うことはない。見た目や値段にとらわれず「安心」を選べるのがうれしい。

そんな農産物が店頭から消える日がやってくるかも知れない。2018年4月に廃止された主要農産物種子法の影響が心配だ。戦中戦後に食料難の時代を経験した日本が、「食料を確保するためには種子が大事」という国の意思を現し、米・麦・大豆の優良な種子を安定的に供給することを都道府県に義務付けていた法律が、マスコミも取り上げることなく静かに廃止された。

さらに国は、種苗法で定める農林水産省令を改正し、農業者による「自家採取を原則禁止」した。これらによって、種子は毎年「企業から買わなくてはならないモノ」になった。

 

失われる多様性と脅かされる健康

種子を巡る同様の動きは、すでに世界各地で重大な環境問題を引き起こしている。企業は最大の儲けを追求するため、種子の種類を限定する。地域のニーズは関係ない。大規模な単一農業で、地域にあった生物の多様性が失われ、土壌劣化などの環境被害が起きている。もうひとつの問題は、企業が扱う「遺伝子組み換え種子」とセットの農薬が引き起こす健康被害だ。

 

食べものを選べない

種子が「企業から買うモノ」になり契約栽培に縛られれば、そこからできる農産物もすべて企業のものになる。種子を支配すれば、食も支配できる。「それしかない」社会では、消費者が買うものを選ぶことすらできない。食料の6割以上を輸入している日本で、国内栽培の種子までが企業に支配されたら、国民は「与えられたモノ」を食べることでしか生きられなくなる。

子どもたちの健康も守れない

失うのは食べものを選ぶ権利だけではない。健康への影響も心配だ。アメリカでは現在、Non-GMO(非遺伝子組み換え)有機農産物の消費が増え続けている。アレルギーや発達障害、内臓疾患、肥満、糖尿病、自閉症、うつ病などに苦しむ「子どもたちのため」を考えた母親たちの取組が、大きな社会現象になっている。

 

長野県産農産物の安心を守るには

もし、長野県内で「遺伝子組み換え作物」が栽培されるようになったら、「長野県産の農産物は安心」という信用はなくなってしまう。「安全性に疑問のある種子が栽培されている県」になるからだ。「うちは違う」と証明することも、下がった信用を取り戻すことも極めて難しい。

農業者の自由な栽培と消費者の選べる機会、子どもたちの健康を守れるとしたら、これまで長野県が守ってきた米や麦の種子を引き続き県が責任をもって生産・供給するともに、県産の価値を下げないため「長野県では遺伝子組み換えの米や麦を一切栽培しません」と、県が宣言し規制するしかない。これに、大豆やそば、野菜、果樹などを含めて県産の農産物すべてを対象にできれば、県は子や孫に世界にも誇れる「NAGANOブランド」を手にすることができる。その経済的な効果は計り知れないものになり、県民の大きな誇りになる。

 

(執筆:吉田 百助)

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 #NPO法施行20年記念特集1
関連する目標:  

NPOの運営、60代が中心、高齢化が浮き彫りに

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アンケート主体:ナガクル編集室 協力:ながの協働ねっと「市民とNPOのひろば編集委員会」
 2018.2.8

2018年12月で、特定非営利活動促進法(NPO法)が施行され20年を迎えます。同法は95年の阪神淡路大震災がきっかけとなり、98年3月に成立し、12月に施行されました。NPO法20周年記念「優良NPO活動に関する調査」を昨年12月に実施しました。運営とその課題部分の集計結果の一部を紹介します。

優良NPO活動に関する調査
ナガクル編集室(NPO法人長野県NPOセンター)が、ながの協働ねっと「市民とNPOのひろば編集委員会」に委託し実施しました。NPOの運営・資金調達・情報開示・広報に関する実態調査です。調査対象は、市内で設立登記  から10年以上経過し、28年度の予算が100万円以上の団体としました。県ウェブサイト公開書類で確認し、郵送による送付数は68団体、返信数は26団体でした。


9割以上がNPOのミッションを達成している

活動する中でミッション(使命)の達成度についての質問(図1)に、「ある程度ミッションは達成したと感じている」は38%、「ミッションの一部は達成できたと感じている」は54%で、多くのNPO法人が設立以来、目標を達成できているという結果でした。

 

34%が運営にあまり満足していない

 

それに対して、運営(経営)について満足していますかの問い(図2)には、「満足している」「まあまあ満足している」が66%、「あまり満足してない」が34%と運営の難しさがうかがえます。  

 

課題のトップ3は人材、そして協働の推進

運営上の課題について(図3)、スタッフの人材確保、高齢化、会員確保と、人材の問題がトップ3を占めました。資金調達が4位に入り、次に企業・地域・行政との協働が挙げられたのが特徴的で、NPO法人が単独の活動ではなく、さまざまな組織と協働することの必要性を課題と感じていることがわかりました。

 

60代がNPO運営の中心に! 課題はやがて後継者不足に

また特に大きな課題として挙げられた高齢化について理事の年代を調べた結果(図4)、理事の年齢について60代がもっとも多く96人、次に70代と50代が占める割合が高く20代はゼロでした。立ち上げ時から年月を経た今、後継者不足や世代交代が大きな課題となったことが浮き彫りになりました。

また、調査団体の中の各分野のNPO理事長に取材し、その成果や課題について話を聞きました。順次取材、トピックス頁に掲載していきます。(>トピックス>NPO紹介 参照)

(執筆:寺澤順子)

ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。

 

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