#クライシスサイコロジーの視点から新型コロナウイルス感染を考える
関連する目標:  
寄稿: 太田秋夫/HopeApple(穂保被災者支援チーム)代表、脳力開花研究所 クライシスサイコロジー アドバイザー 
 2020.5.14

こころのなかから不安を取り除くには

新型コロナウイルス感染が日本列島を襲い、国民を不安に陥れています。「緊急事態宣言」が出されたことにより経済活動もストップ状態で、こちらの面でも不安が広がっています。*クライシスサイコロジーの視点から、この現状と対応策を考えてみたいと思います。

クライシスとは「危機」「重大局面」のことです。そのとき人間の心理はどのようになるのか、どうすればよいのかをお伝えしましょう。不安と恐怖が蔓延している局面を乗り越え、暗闇から脱出する方法です。

人間はクライシスの状況に直面すると不安や恐怖を感じます。今回の新型コロナウイルス感染拡大でも、昨年10月の台風19号災害でも、「危機」に対して人間はそのような心理状態になります。脳のはたらきがそのときどうなっているかというと、大脳辺縁系(好き嫌いなどの感情基づく本能的な情動や記憶を司る部分)のなかにある偏桃体が活発に動きます。ここには恐怖や不安といった生命の危機に関わって本能的な行動を駆り立てる機能があり、交感神経を刺激し、心拍や血圧が上がり、全身の筋肉を収縮させるなどの身体反応も起こります。

この反応は危機に対して「攻撃」もしくは「逃避」するための本能的なはたらきで、危機から脱出するために人間に備わった本能的機能であり必要なはたらきです。しかし、問題になるのは、偏桃体が優位になると思考や認知・判断をする大脳皮質のなかの前頭前野のはたらきが低下してしまうことです。つまり、的確な判断や行動ができなくなってしまうのです。

そのため人間は意味不明な行動をとるようになります。今回のコロナ騒動でも、デマが広がってコロナとは無関係なトイレットペーパーがなくなり、在庫が十分にあると報道されてもなかなか買い占め行動がとまりませんでした。感染していない医療従事者のお子さんが登園するのを拒否した保育園もありました。理性がはたらいて考えれば、おかしな対応であることは明らかなのに不可解な行動に出てしまったのです。外出自粛のために家庭内でのDVが問題になっていますが、これも精神状態が恐怖と不安に巻き込まれているためと考えられます。県外の車両を傷つけるといった事件も起きていますし、海外ではマスクをつけていない人を殴るといったことも起きています。先が見えないためにうつ状態になる人も増えます。これらはいずれも前頭前野の思考が低下しているがための現象です。

正しい情報を自らの意思で入手し、客観的に判断することが大事

危機に直面すると偏桃体が不安・恐怖を呼び起こす。偏桃体のはたらきが優位になると、前頭前野のはたらきが低下して思考・判断力が鈍る。

 次に、どうすればよいかということですが、前頭前野を正しくはたらかせ、偏桃体の動きにコントロールされないように(つまり恐怖・不安に支配されないように)する必要があります。そのためには、正しい情報を自らの意思で入手し、高所対処にたって判断することが大事です。テレビや新聞などのメディアから流れてくる情報をうのみにしていると不安が増幅するばかりです。ちょっとでも咳が出たり喉が痒かったりすると「自分が感染しているのでは」と不安になる人がたくさんいます。それは、「自分もすでに感染しているかもしれないと思って外出を控えてマスクをし、人にうつさないように」と連日脳に刷り込まれているからです。

日本の感染者確認数は5月5日現在、1万6067人で、死亡者は579人です。これを抑えるために外出自粛や三密防止をするのは当然ですが、実は毎年冬季におなじみになっているインフルエンザは、昨年の冬は1200万人(今年の冬は激減して730万人)が感染し、3300人が死亡しています。交通事故の死亡者も一時1万人を超していたものが年々減少したものの、年間3000人以上が犠牲になっています。今回のコロナとは比較にならない大量の感染者と死亡を出している現実があります。

長野県の感染確認者は72人(5月5日現在)です。人口比でいうと、およそ3万人のうち1人です。確認されていない人もこの何倍かはいるでしょうが、それでも圧倒的な人は感染しておらず、根拠なく隣の人が感染しているかも知れないと不安に思う必要はまったくありません。しかし、日々のメディアの報道だけに接していると正しく判断ができなくなり、不安が深まるばかりです。前頭前野が得た情報を何の判断もなく受け入れると偏桃体の恐怖を増幅させてしまう危険があります。意識的に情報を選択し、正しく判断できるようにしましょう。

正しく恐れることが何より大事です。新型コロナウイルスの感染は飛沫感染と接触感染です。マスクの着用と手洗い・消毒が基本です。対面での食事を避け、三密を守れば感染のリスクは下がります。人と人とが接近したら伝染するわけではありません。前頭前野を働かせ、偏桃体の動きに支配されるのでなくコントロールするようにしましょう。

新型コロナ感染予防の国民的取り組みの効果からか、今年のインフルエンザが前年の6割に激減しています。コロナの予防策といっしょだからです。メディアで判断材料となる数値もようやく発表されるようになってきました。一時より再生産数が下がっているのも嬉しい情報です。頭をはたらかせて不安を取り除き、新しい生活スタイルを確立しながら暗闇から抜け出しましょう。

*クライシスサイコロジーとは/クライシスは「危機」「重大局面」、サイコロジーは「心理」「心理学」という意味で用いています。クライシスサイコロジーは機能脳科学者が提唱する新たな学問体系で、感染症流行や災害時の対応を心理面からアプローチするものです。

寄稿・文責: ゲストライター: 太田秋夫さん/HopeApple(穂保被災者支援チーム)代表、脳力開花研究所 クライシスサイコロジー アドバイザー 

ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。


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 #衰退していく長野県の地域の足=交通手段をどうすべきか
関連する目標:  

地域の足が無くなっていく!
交通弱者、買い物難民……
その現状と取り組み

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文責 ソーシャルライター 立岡淳志
 2020.5.6

人口減少・高齢社会がやってきた

 少子高齢社会と言われて久しい。若者は都市部に流出し、地方には高齢者だけが残っていく。長野県も例外ではない。長寿県ランキングでは常に上位だが、長生きであるというポジティブな側面がある一方、高齢社会にまつわる問題に直面している、ということでもある。

 高齢化社会とは高齢化率が7%を超えた社会のことである。さらに、高齢化率が14%を超えると高齢社会、21%を超えると「超高齢社会」と定義される。都道府県別に見ると、長野県は31.9%。日本国内で19番目の超高齢社会だ。
([人口推計 2019年10月1日現在(総務省統計局)]より)

 そして県内の市町村別に見ていくと、ランキングは以下の表の通り。

グラフ[毎月人口異動調査年齢別人口(2020年4月分)(長野県企画振興部)]より引用

 

 都市圏の長野市でも30.6%、松本市でも28.1%である。大変な高齢社会が到来している事がわかる。

「生活の質」にかかわる交通手段

 その中で、問題になっているのが、交通弱者だ。明確な定義は存在しないが、ここでは「自家用車などの移動手段を持たず、公共交通機関に頼らざるおえず、日常の移動に困難を生じている人々」のことを指すこととしよう。

 コロナウイルス感染症の感染が拡大している。そんな今、stay homeが呼びかけられ、移動する人は少なくなっているが、その分、路線バスなどが減便されていて、交通弱者にとっては、苦しい状況が続いている。

 交通弱者になると、移動することが困難になるため、生活の質が低下する。病院に行くにも金銭的負担がかかる、徒歩圏内に商店やスーパーが無ければ買い物難民になってしまう、学校に通うことができず結果として移住せざるおえない、等々……地域で元気に生活することが出来なくなってしまうのだ。

 国内全体で、買い物難民(または弱者)は700万人程度と推計されている。([買物弱者対策に関する実態調査結果報告書 平成2 9 年7 月 総務省行政評価局]より)

「交通に係る県民等意識調査[長野県 平成24年6月]」では、「自由に移動できる交通手段がないことで困るのはどのような時か」という設問がある。そこで多かった答えは「食料品などの普段の買い物」である。

免許返納したくてもできない

 過疎地域を中心に、人口減少~公共交通機関の利用客減少~公共交通機関の廃止・縮小~さらに人口減少、といった負のループに陥っている。その一方で、県内のマイカー保有率は全国7位で世帯あたり1.579台([自動車検査登録情報協会 令和元年8 月20 日 ニュースリリース]より)となっている現状がある。

 しかし、マイカー移動から公共交通機関での移動へのシフトは容易ではない。市民の意識の問題もある。だが、それ以上に、衰退し始めている公共交通機関は、例えば1時間に1本しか電車が来ない、土日休日はバスが運休になってしまう、など、すでに利便性は事実上失われている状態だ。そこに「マイカーをやめて公共交通機関を利用しましょう」と言っても、なかなか難しいのが、そこに生活する人の本音なのではないだろうか。

 そのため、マイカーがないとやっていけないが、マイカーを使えば使うほど公共交通機関が衰退して、交通弱者にとってはより厳しい状態になる、というジレンマを抱えている。

 既出の「交通に係る県民等意識調査」では、3~4割の人が鉄道在来線を使う時に、不便や不満を感じているという結果が出ており、その理由は「日中の便数が少ない」というものが多くなっている。そもそもで「利用していないので、わからない」という回答もかなりの割合を占めている。

グラフ「交通に係る県民意識調査 [長野県 平成24年6月]」より引用

 また、昨今では、高齢者の起こした交通事故が報道で注目され「免許返納」の機運も高まっている。県内での交通事故の約4割(39.6%)、交通事故死者の半数以上(55.4%)が高齢者だ。([長野県警察 令和元年交通統計]より)

 しかし、免許返納をしようにも、マイカーの運転が「生活の生命線」となっている場合、「返納したくてもできない」ということになってしまう。高齢者も、若者も、お互いに安全に暮らすためにも、何かしらの移動手段の保証は、不可欠だと思われる。

交通弱者問題に対する新しい取り組み

 交通弱者の問題に対して、新しい取り組みも行われつつある。



 1つ目は「既存の路線をデマンド交通に転換する」というものだ。デマンドというのは「要求」という意味で、決まった時間に時刻表通り運転する路線バスに対して、予約制のワゴン車などを運行する。予約制なので、空っぽのバスが走っている、という事態は回避されて運行効率が上がる。

 ただし、デマンド交通は、予約する手間がある。予約方法は、高齢者でも簡単にできるように、スマホといった電子機器だけでなく、電話などでも予約できるようにしておくべきだろう。

 また、当然のことながら、ただデマンド交通を走らせるだけでなく、どの程度の効果が上がったのか、検証し改善することが必要だ。既存の鉄道・バスとの連携も重要である。

 飯綱町では「iバス」というデマンド交通があり、年間250万円の経費削減につながり、また住民の3分の2が利用登録をしているという。([自治体通信オンライン ウェブサイト]より)

 


 2つ目は「MaaS=マース(モビリティ・アズ・ア・サービス)」という仕組み・考え方の導入だ。ITを活用して、すべての交通機関のデータをつなぎ、運行主体にとらわれずに「移動」をもっと一体的に捉え、便利にしよう、というものだ。

 利用者はスマホを使い、移動方法の検索から決済までを行う。国土交通省が全国で先行モデル事業を19事業選定し、その導入促進を模索している。([国土交通省報道発表資料 「日本版MaaSの展開に向けて地域モデル構築を推進!~MaaS元年!先行モデル事業を19事業選定~」より])

 長野県内では、まだMaaSの導入事例はないと思われるが、IT・スマホを活用したサービスとして「信州ナビ」というアプリが公開されている。公共交通のルート検索や、一部地域では、走行中の路線バスの現在位置が分かる「バスロケーションサービス」が提供されている。


 

 3つ目は「移動販売などによる買い物難民の支援」だ。県内でも各地で移動販売や宅配・ネットスーパーの取り組みが行われている。決まった場所や、自宅の目の前など、自分の生活圏内に移動販売車がやって来て、買い物ができる。

 県内にどんな支援事業があるのかは、長野県のウェブサイト「買物環境向上支援事業実施事業者一覧」で閲覧することができる。

 信濃町では地元の人が、地元スーパーと協力して「移動スーパーとくし丸」を運営している。買い物難民を支援することは、日々の食料品の調達を助けるだけでなく、コミュニケーションが生まれて、暮らしの活力になるのだ。([信濃町の移住者支援サイト 「ありえない、いなかまち。」より])

 また、向こうからやってくる移動販売とは逆に、市街地へ自分たちででかけていく「買い物ツアー」を企画しているところもある。長野市鬼無里地区では、住民自治協議会が主体となり、地元の路線バスを使って市街地へ行き、買い物をしながら、住民であるお年寄りの心身のリフレッシュを図っている。([FNNプライムオンライン]および[鬼無里地区住民自治協議会フェイスブックページ]より)

 

交通の問題は、生活の維持に直結する

 本稿では、交通の問題、特に「交通弱者」をキーワードに、問題の現状や新しい取り組みの一端を見てきた。

 地域の交通手段は、利用者の減少とそれに伴う収入減で、非常に厳しい状況に置かれている。路線バスだけでなく、鉄道も同様だ。「乗って残そう」というのはよく聞かれるスローガンだが、簡単なことではない。例えば、しなの鉄道は平成10年度から平成20年度の10年間で、利用者が14.7%も落ち込んでいる。([しなの鉄道総合連携計画 平成22年2月]より)

 自家用有償旅客運送(福祉有償運送)などの場面では、地域の社会福祉協議会やNPO法人等が努力を重ねているが、それもこのままでは、限界を迎えるかもしれない。

 交通手段が本当に無くなってしまえば、その地域には住むことはできなくなる。その現実を、我々は早く直視すべきだろう。今ならまだ間に合うかもしれない。

 交通は、それ単体で見れば、単なる移動手段だが、生活のすべてに関わってくる重要な要素だ。しかし、国家レベルでも県や市町村レベルでも、それぞれのシーンで担当部署が異なり、一貫した施策が行われているとは言い難い。早急に、横断的なチームの立ち上げが望まれる。

 今までは、主に民間事業者が担っていた公共交通だが、まさに今「公共」のものとして、考え方を変え、もう一度意識し直す時期に来ているのではないだろうか。行政や事業者だけでなく、何より利用主体である市民一人ひとりが考えて、行動することに、公共交通機関ひいては地域の未来がかかっている。

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 #五輪決定から激動の7年、消える訪日観光客

インバウンド:五輪決定から激動の7年を振り返る

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長野市民新聞コラム「カムカム外国人」2020.2.24 の再編執筆:ナガクル編集デスク 寺澤順子
 2020.3.26

インバウンド戦略の始まりは東京五輪決定から

いま、広がるコロナウイルスの影響で、観光客が長野でも激減している。そもそもインバウンドはどう始まったのか振り返ってみる。

2013年9月に東京五輪開催が決定し、訪日外国人観光客誘致「インバウンド」という言葉が浮上し、10年発表の政府の成長戦略では20年に2000万人を目標とし、16年には目標を4000万人に修正した。

中国をはじめ、東南アジア諸国の日本への観光ビザを緩和し、中国人観光客による「爆買い」の様子がトップニュースを飾った。ICT整備によるスマートフォンでの決済も広がった。

エア・ビー・アンド・ビーという民家宿泊のインターネットを使った世界的なサービスが日本にも到来。住宅の空き部屋への宿泊をルール化したいわゆる「民宿新法」が18年に整備された。空き家を利用した格安ホテルができたり、富裕層を狙った高級リゾートホテルの建設が相次いだ。同年、外国語での観光ガイドを、有料でできるようにした通訳ガイド制度の改正もあり、受け入れ環境が整備された。そして、18年を終えると、訪日観光客は1年で3200万人を越えた。

長野駅にはアジア諸国からの個人客が詰めかけるようになった。2020.1.18撮影。この直後にコロナウイルスが浮上した。

訪日外国人延べ宿泊者数は6年で7倍に

県内では、11年には訪日外国人延べ宿泊者数は20万人だった。自治体や観光関係機関が、WiFi整備や人材育成、海外での観光プロモーションなど、インバウンド推進に力をいれてきた。そして18年には120万人を突破したった6年で6倍に。

長野県観光部発表「平成30年 外国人延宿泊者数調査結果 」


リゾート地だけでなく、善光寺や戸隠などでも外国人観光客を多く見かけるようになった2019年2月には「長野県インバウンド推進協議会」を設立。官民一体となって世界にアピールすると同時に受け入れ環境整備を強化する基盤ができた。まさにインバウンド経済は、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

 

2019年2月、300人もの団体や企業が加盟し、立ち上がった長野県インバウンド推進協議会の設立総会の様子。

相次ぐ不運で危ぶまれるインバウンド


ところが、昨年秋より、かげりが見え始めた。外国人観光客が急激に増加したことによる「観光公害」が話題となり、その後日韓関係の悪化により、韓国人観光客が減少。相次ぐ大型台風によるダメージ。そして暖冬によるスキー客の減少。今年に入って、新型コロナウイルス問題が浮上し、外国人観光客が観光地から消えた。

美しい千曲川の河川敷の風景が台風19号により一変した。堆積した川砂が強風で舞い上がる様子。

(筆者は長野市民新聞で東京五輪が決定する前2013年7月よりインバウンドに関するコラムを連載してきました。当記事は最終回の文章を編集加筆したものです)
 

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 #地域おこし協力隊、長野県で約350人、6割が定着
文責:ナガクル編集デスク 寺澤順子
 2019.3.31

地域おこし協力隊は「地方創生」の一環で2009年からスタートした総務省の制度です。特別交付税措置によって、隊員の給与や活動に伴う経費、終了後の起業経費も100万円上限で認められています。また、隊員の募集・研修(普通交付税)についても賄われています。全国で2017年度で約5000人が活動しています。

 

人口減少を食い止めるための施策

そもそも、なぜ地域おこし協力隊が必要となったか。長野県の場合も2010年度の国勢調査をもとに試算した結果、2040年には上図のような人口減少が予想され、特に中山間地はもちろん、市街地をもつ自治体でも、高齢化と少子化、生産人口の減少は深刻。消滅する集落をどうみおくるのかの議論までされてきたのです。

中山間地の村では75歳以上の後期高齢者たちが、自治の中心となり、祭りの担い手がいなくなったり、雪かきや草刈りなどを担えなくなってきました。限界集落の住民が、若い人に移住してほしい! と願ったところで、疲弊する地方の自治体にとってはアイデアも予算もなく、課題を放置せざるを得なかったのです。

一方都会では、過剰労働で疲弊した若者の過労死がニュースで大きく報道されました。二拠点生活、副業、テレワークなどの新しい労働・生活形態が話題となり、実践するオピニオンリーダーが相次いでいます。

「県内の地域おこし協力隊受入状況 市町村別」 長野県のホームページ「地域おこし協力隊の広場」より

 

6割が任期の後、地域に残るという好実績

そうした状況の中で、地域おこし協力隊が生まれました。7割が30代以下で、女性も4割。その多くが東京などの都会出身者です。任期中に結婚して定着する事例も増えてきました。長野県でも2018年4月時点で350人の地域おこし協力隊が上記の様に各自治体で活動しています。

「平成29年度中 任期終了者の動向」 長野県のホームページ「地域おこし協力隊の広場」より

 

制度の初期段階では、すぐに離職したり、地域の住民の理解が得られなかったりで、なかなか定着することが難しいという現状もありました。しかし、いま、統計を見ると全国でも6割、県内で63.8%が地域に定着しています。終了後は、農業者となったり、ゲストハウス、カフェなどを起業するなどのユニークな活動も。また地域のNPOや社会福祉協議会などへの就職という形も見られます。しかし、あくまでも終了した時点での定着の有無の調査であり、その後数年してからの追跡調査の結果はありません。

 

課題は受け入れ側の態勢づくり

今年3月、地域おこし協力隊の任期終了報告会が、いくつかの自治体で開催されました。佐久市は第一期地域おこし協力隊が3年の任期を終え、4人中3人の最終活動報告会が開催されました。平日の夜にもかかわらず、ざっと120人を超す人たちが集まっていました。

課題として出ていたのは、行政の担当者との連携でした。右も左もわからない民間の青年たちが、突然、田舎の行政に配属になって、住民との関係に一喜一憂します。やりたいことが出てきても行政との関係でできなかったり、予算が取れなかったり・・・。受け入れる側の態勢づくりはやはり大きいようです。

佐久市地域おこし協力隊第一期最終活動報告会が、2019年3月19日19:00~佐久平交流センターで開催された

市民からは「4月から住むところも取り上げられ、収入も断たれ、大丈夫なのか?」と心配する声が上がるなど、協力隊員に対して好意的な意見が多く驚きました。起業したり結婚したり、子どもができたりと、それぞれたった3年ですっかり、地元に定着したように見えました。

都会に比べて、人間関係が濃く、いつも監視され評価される地域の中で、この若者たちが実にユニークな自身のスタンスを確立できたことは、彼らの精神力とコミュニケーション能力、行動力のなせる業でしょう。都会にそのままいたら、もしかしたらこんな風に、公私にわたって多くの人に心配され、応援され、自分のやりたいことを見出せる人生は味わえなかったかもしれません。

実は県内各地に、移住者や、起業家、NPOスタッフ、行政マンなど、地域おこし協力隊とつながって面白いことをやろうとする人たちのつながりができてきました。SNSによる情報交換や、ワークショップなどのイベント増加の力は大きいかと思います。情報発信ツールの整備が、地域おこし協力隊の活動の追い風になっていることも確かです。

こうした制度は税金で成り立っています。その成功は彼ら次第ではなく、我々次第だということを忘れてはいけません。

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 #消える人と人とのつながり
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消える人と人とのつながり

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文:亀垣嘉明
 2018.4.14

自治会の加入率に見る「人と人とのつながり」

自治会や町内会の加入率は全国の自治体で軒並み低下。

長野県内では...

長野市96.1% 須坂市98.3%と高率の一方、南箕輪村では67.2%

南箕輪村は全国でも珍しい人口増加中の村なのに加入率が低迷しています。

今、加入率が高い県内の他の市町村も安心はできません。

地域の象徴的な存在であった自治会や町内会ですが、そのあり方や内容が現代にマッチしているのかという議論はさておき、人と人をつなぐ一つの形である事は確かです。

大阪商業大学(JGSS研究センター)の2010年日本版総合的社会調査によると、20歳~39歳の青年男性で「過去1年間、必要なときに心配事を聞いてくれた人はいますか?」という問いに14.6%の人が「いいえ」と答えています。

つまり、約7人に1人は誰も心配事を言える相手が居なかった事になります。

しかし一方で「何かにつけ相談したり、たすけ合えるようなつきあい」が望ましいという人の割合は年々減少しています。

NHK放送文化研究所 第9回日本人の意識調査より

新たなつながりを模索する必要がある

ただ、この調査結果が現代人が「相談する人がいなくてもいい」と考えている訳でも無さそうです。平成23年度 横浜市こころの健康相談センターの調査によると、男性では概ね半数以上の人が、女性ではそれより更に高率の人が「悩みやストレスを感じたときに誰かに相談したい」と答えています。

平成23年度自殺に関する市民意識調査(横浜市こころの健康相談センター )より

これは、つまり何かあった時に誰かに相談はしたいけど、職場の人や親戚、近隣(隣近所)には相談したくないという事なのかもしれません。

自治会でもない、職場でもない、親せきや隣近所でもない、困り事を気軽に相談できる新たな形の人と人とのつながり方を私たちNPOは模索していかないといけないのかもしれません。

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 #空き家対策が求められる

長野県は14.7%が空き家に
特に中山間地が深刻

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引用:平成25年住宅土地統計調査(長野県分)、平成28年長野市空き家など実態調査
 2018.2.9

別荘や貸家などを除くと、7万7400戸、全体の14.7%に及ぶ

長野県では今、空き家が大きな地域課題となっている。都会からの移住を推進するも、空き家の増加になかなか追いつかない。

総務省統計局の昭和38年から5年ごとに行われている、平成25年住宅土地統計調査(長野県分)では、住宅数98万2400のうち、空き家は19万9000世帯、そのうち、別荘や貸家などを除くと、7万7400戸、全体の14.7%に及ぶ。

子どもの都会への流出で、親の世代が取り残され高齢化

その後、数年で、7軒に1軒が空き家という可能性が高い。昭和38年から半世紀を経て、世帯数が2倍以上に増加。一方で、空き家は10倍となっている。別荘の多い長野県では、バブル期に建てられ都会の居住者によって買い求められた別荘が空き家となって、買い手がつかず、点在する地域も少なくない。

高度経済成長とともに、長野市や松本市などの都市周辺での団地造成と、住宅建設が相次いだ。しかし一方で、少子化が加速し、東京などの都市への進学率が上昇し、若者が都会へ流出した。

中山間地では、放置される空き家や、荒れ地が深刻化

 

特に中山間地は深刻で、長野市の28年度の調査では、中心部に比べ、中条、大岡をはじめ、鬼無里、戸隠、信州新町に続いて、比較的中心部に近い、芋井、七二会、信更、小田切などの地域も深刻な状態となっている。

年老いた夫婦だけが世帯に取り残されることとなり、やがて、亡くなったり、施設に入ると空き家となってしまう。持ち主は都会にいるため、近隣の畑や水田も含め、放置されたまま、なかなか手が入らないという実態がある。

 

 

まちづくりの活用へ国や地方自治体が補助へ

国土交通省は2018年度から、一戸建て住宅が並ぶタイプの団地にある空き家を老人ホームや保育所などに転用すれば、国と自治体が3分の2を補助する制度が発表された。

県内では、戦後造成された郊外型の団地も多く、耐震補強などのリフォームをしたうえで、NPOが地域の実情に合わせたまちづくりへの活用が期待されている。

(執筆:寺澤順子)

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