#部活動の地域移行で教員の負担が軽減されても地方の心配は拭えない訳

部活動の地域移行で教員の負担が軽減されても地方の心配は拭えない訳

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<取材・編集>ソーシャルライター 吉田 百助
 2024.11.11

学校での部活動が地域へ移行するとしても…。
「それぞれの地域に指導者や施設が揃っているとは限らない」
「たとえ受け皿があったとしても学校や自宅から遠い場合、通いに伴う身体的・時間的・経済的な負担が発生し、気軽に参加しにくくなる。家庭生活や勉学に支障が出るようでは続けることが難しい」

結果、地域格差と経済格差が顕著になり、不公平感が生まれるのではないか…。
地方の保護者から「心配だ」という声が聞こえてきます。

一方、学校では教員の負担が軽減されるのではと期待が高まっています。
学校での部活動は、担当する教員の「無償の奉仕」です。部活動は「教育課程外」にあって賃金には含まれません。早朝・夕方も土・日曜日も勤務時間にはならず、手当がありません。文部科学省の資料には「部活動は必ずしも教師が担う必要のない業務である」と明記(後述の「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革」資料を参照)されていますが、実際は「断れない」ために教員の長時間労働と過労の原因になっています。

文部科学省の「令和4年度 学校の働き方改革に関する調査結果」によると、2022年度における部活動の顧問教員の配置状況は、公立中学校で91.1%、公立高校で97.1%が「全教員が顧問にあたることを原則とし、複数名の顧問を配置」、または「全教員が顧問にあたり、人数は部員数などに応じて配置」と回答しています。

28年前から課題だった「部活動の問題」

1996年の中央教育審議会が「学校のスリム化」の観点から、「地域社会にゆだねることが適切かつ可能なものはゆだねていくことも必要」と答申しています。

(学校のスリム化)中段を抜粋

部活動は、教育活動の一環として、学級や学年を離れて子供たちが自発的・自主的に活動を組織し展開されるものであり、子供の体と心の発達や仲間づくり、教科を離れた教員との触れ合いの場として意義を有しているものである。しかしながら、学校が全ての子供に対して部活動への参加を義務づけ画一的に活動を強制したり、それぞれの部において、勝利至上主義的な考え方から休日もほとんどなく長時間にわたる活動を子供たちに強制するような一部の在り方は改善を図っていく必要がある。また、地域社会における条件整備を進めつつ、指導に際して地域の人々の協力を得るなど地域の教育力の活用を図ったり、地域において活発な文化・スポーツ活動が行われており学校に指導者がいない場合など、地域社会にゆだねることが適切かつ可能なものはゆだねていくことも必要であると考える。

21世紀を展望した我が国の教育の在り方について/第4章 学校・家庭・地域社会の連携丨中央教育審議会

2018年3月にスポーツ庁が「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を出し、翌年の国会では「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部を改正する法律案」で「部活動を学校単位から地域単位の取組とし、学校以外の主体が担うことについて検討を行い、早期に実現すること」を含む付帯決議が可決されました。

そして20年9月に文部科学省から「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について(下図)」が出され、「持続可能な部活動と教師の負担軽減の両方を実現できる改革が必要」とし「令和5年度以降、休日の部活動の段階的な地域移行を図るとともに、休日の部活動の指導を望まない教師が休日の部活動に従事しないこととする」とされました。

さらに22年12月に、スポーツ庁と文化庁の両庁名で「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」が出されるなど、数々の指針が続いています。

土台なき部活動改革~中学校部活動の地域移行問題を考える

国の方針には、「生徒にとって望ましい持続可能な運動部活動と学校の働き方改革の両立を実現」とありますが、なにが問題になっているのでしょうか。

24年10月19日(土曜日)、長野県松本市あがたの森文化会館で開かれた「サロンあがたの森2024」のテーマは、「土台なき部活動改革~中学校部活動の地域移行問題を考える」でした。地域の教育関係者など10数名が参加して、松本大学人間健康学部の中島弘毅教授の話に耳を傾けました。

※本記事は中島教授の講演内容を基にし、筆者が独自の調査資料も交えて順不同で編集しました

24年のノーベル経済学賞は「社会制度と国家の繁栄の関係」の研究者たちが受賞

授賞理由は「制度がどのように形成され、国家の繁栄に影響を与えるかの研究」でした。
スポーツは「人類の文化」で、人間性を育み健全な心と身体をつくるために役立ちますが、環境を整えるには社会的・経済的な条件が必要です。

日本が「クラブ化」の模範にしているドイツは、国民全体がスポーツを楽しむ環境にあります。
国際競争力1位のデンマークは、16時に仕事を終えて帰り、プライベートライフを大切にしています。
両国は、それぞれの根底にある考えのうえに社会的な制度を整えてスポーツができる環境を整えています。

生活基盤を国が整備するドイツのゴールデン・プラン

ドイツは「豊かな国民は国の財産」として、生活基盤を国が整備しています。
ゴールデン・プランは、「健康は人間にとって黄金のように尊い」ということから命名されたスポーツ施設整備のナショナルプロジェクトです。子どもの遊び場は、地域の中核となる最重要の施設として位置づけられ、人口ごとに広さと数を決めて自治体が場所を設けています。

キャッチフレーズは「家族の声の届くところに遊び場があり、次の横町に緑の広場とプールがある」で、徒歩2~5分内には砂遊び場や水遊び場、徒歩5~15分に用具遊び場やボール遊び場、15~25分に指導者付の遊び場や身障者の遊び場、25~35分にスポーツ広場や保養パーク・公共オープンスペースなどを設けるといった地域における遊び場の配置イメージが決められています。

ドイツにおける子どもの遊び場計画の下地には、子どもの心身の健全な成長に必要な身体的・精神的・社会的能力を伸ばすために遊びの環境が非常に重要であること、また子どもが充分な遊び体験を積むことは、生涯を通じての遊び・スポーツ活動の基礎として不可欠なものであるという基本的な考え方があります。

「幸せの国」デンマークの8-8-8

8時間労働、8時間の自由時間、8時間の休息(睡眠)、という意味の暮らしを1919年に実現したデンマーク。日中の仕事を早く終わらせて、仕事以外の時間を大切にできることが、幸福度の高さにつながっているようです。

国連が発表する毎年の幸福度調査では10年連続で1〜3位につけるという安定した「幸せの国」で、一人当たりGDP(国内総生産)は6万7,800USドル(21年) と、日本の3万9,280USドル(同年)とは倍近い差があります。

ちなみに日本は2022年の幸福度調査では54位でした。また24年の国連のデジタル政府ランキング(電子政府開発指数)でもデンマークは世界1位。日本は13位でした。

日本に欠けている「土台」とブラックな教員の実態

日本は、昭和時代の高度成長期を経て物質的には豊かになりましたが、社会的な制度面や人間的な精神面はどうでしょう。懸命に働いても大変なことばかり。特に教員は疲弊しています。
「人間としてよりよく生きるために、日本は今までの認識や価値観を見直す必要があるのではないか」と、中島教授は言います。

日本における公立学校の教育職員の給与や労働条件を定めた法律に、給特法(正式名「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」)があります。教員には、原則的に時間外勤務手当や休日勤務を支給しない代わりに、給料の月額の4%に相当する額を「教職調整額」として支給することを定めています。

時間外勤務を命じることができる仕事は「超勤4項目」だけで、具体的には①校外実習その他実習、②修学旅行その他学校行事、③職員会議、④非常災害や緊急措置を必要とする場合などに関する業務に限られていて、「部活動」は入っていません。

この調整額の4%は、昭和41年の勤務実態調査の結果「教員の時間外勤務時間数:平均約8時間/月」を基に設定されたものですが、現在の教員の時間外勤務は大きく増加しています。令和4年の勤務実態調査によれば、月50時間を上回る時間外勤務をしている教員の割合は、小学校教諭64.5%、中学校教諭77.1%に及んでいます。

58年前の給特法に基づく4%の支給だけで「定額働かせ放題」ともいえるブラックな教員の実態。部活動は、教育の一環だけれど「教育課程外」で「教員が自主的で自律的な業務を行い、それが勤務時間外に及ぶこともあるので『超勤4項目』に該当しないそれ以外の業務の時間外勤務についてお金を払う必要がない」というのが文部科学省の解釈。厚生労働省が示す「労働時間の考え方」とも差があります。

教員にしてみれば部活動は、「断れないサービス残業」という負担でしかないという一面もあるようです。そもそも家庭を犠牲にして疲弊している教員にしてみれば、お金の問題ではなく「負担を軽くしてほしい」というのが願いかもしれません。

22年6月に出された「運動部活動の地域移行に関する検討会議の提言」では、運動部活動の課題として、「競技経験のない教師が指導せざるを得なかったり、休日も含めた運動部活動の指導が求められたりするなど、教師にとって大きな業務負担。<土日の部活動指導:平成18年度1時間6分→平成28年度2時間9分に倍増>」と記されています。

また、文部科学省の「教員勤務実態調査〈令和4年度〉の集計〈速報値〉」では、教員の約8割が部活動の顧問を担当していて、平日の在校等時間は1日当たり11時間11分。通常の勤務時間は7時間45分ですから、超過勤務時間は3時間26分になります。これに加えて土日の活動も担当していることから、部活動を担当する教員の負担は非常に重たいものになっています。

教員任せだった部活動

文部科学省の「教員勤務実態調査〈令和4年度〉の集計〈速報値〉」では、部活動の「指導可能な知識や技術を備えている」と回答した教員は48.9%と半数を下回っていて、教員の資質・能力にかかわらず担当を求められるケースが少なくないのが実情のようです。

単に「やる」のと「指導」は別もの。できる人もいれば、できない人も未経験者もいて、レベルはさまざま。やり方は自由だけれど、やり過ぎや体罰は問題になります。

平成29年5月 文部科学省スポーツ庁「運動部活動の現状について」から

少子化で困難になるチーム競技

1学校だけではチームがつくれず試合や大会に出られないという問題は、人数を必要とする団体競技ほど深刻な問題です。実際、近年は学校の枠を超えて仲間を集めた「合同チーム」が増えています。

国は、部活動の地域移行で次のようなメリットがあると言います。
1.児童生徒の選択肢が広がり希望する活動種目に参加しやすくなる。
2.専門的な指導が受けられやすくなる。
3.教員業務のスリム化が期待できる。

スポーツ庁の「部活動改革ポータルサイト」では、地域連携・地域移行における現状・課題と全国各地の取組事例を見ることができ、長野県における令和3年度からの取組(地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書)も掲載されています。

以下に成果報告書の一部を紹介します。

長野県飯山市では少子化の進行が顕著で、中学校の休日部活動の地域クラブへの移行にあたり、地域クラブとしての受け皿や指導者の確保、少子化により参加生徒数が少ないことによる地域クラブとしての独立した運営体制の構築、レクリエーション的な部活動の受け皿がないなどの課題が挙げられています。また、学校部活動の地域移行に向け、小学校5・6年生、中学校1・2年生、保護者、教員にアンケートを実施したところ、活動場所までの送迎の負担や地域の受け皿、指導者や他校生徒との人間関係などが不安であるとの意見が多かったようです。特に、活動場所までの送迎については、市域が広いため活動場所となる中学校から遠い生徒もおり、練習や大会などへの参加は、親や親戚などによる送迎に頼らざるを得ない面もあり、保護者の負担となることが考えられる。

長野県南佐久郡内では、中学生の「入りたい部活動がない」「部活動には入れたが、人数が少なく大会に参加できない」などの実態を解決するため、佐久穂町・小海町・北相木村・南相木村・南牧村・川上村の6町村が連携して「南佐久郡中学校部活動運営委員会」を設置。佐久穂町教育委員会内に事務局をおき、統括コーディネーターを配置して、部活動地域移行の推進に当たっています。必要となるお金は、6町村が負担。6つの部活動(サッカー・男子バスケット・女子バスケットA・女子バスケットB・男子バレー・卓球)で休日における地域移行の活動を始めています。

長野県長野市

令和5年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 運動部活動の地域移行に向けた実証事業 成果報告書(概要)から

しっかりした「土台」が必要な部活動の地域移行問題

部活動改革の背景には、少子化による生徒児童の減少とニーズの多様化、そして休職や退職が増え続ける教員の「働き方改革」があることは理解できます。志望者の減少で教員の絶対数が足りなくなれば、教育のレベルが下がってしまうことも問題です。

しかし、部活動の地域移行に関しては、「地域の実情を踏まえ」という日本独特の制度設計の曖昧さが、中山間地域を抱える地方の心配を特に大きくしているように思えます。

ドイツの「クラブ」を模範にめざすのであれば、「豊かな国民は国の財産」として生活基盤を国が整備することや、「健康は人間にとって黄金のように尊い」というゴールデン・プランにならって、子どもの遊び場を地域の中核となる最重要の施設として位置づけて整備し、国民全体がスポーツを楽しめる環境を社会制度として整えることが求められます。

古代ギリシャでは「人間としてよりよく生きるための時間的・精神的ゆとり(スコレー:休息や終止、平静や平和を意味する言葉で、市民としての「徳」を実現するための時間的・精神的「ゆとり」を指す)が必要と言われ、哲学者のアリストテレスは「幸福はスコレーに存すると考えられる。けだし我々は、スコレーを持たんがために忙殺されるのである」(ニコマスス倫理学、岩波文庫、十巻七章)と遺しています。

「幸せの国」デンマークは、この古代ギリシャからの思想を体現しているようですが、現代の日本人は「カネやモノを持つため」に忙殺されていて精神的ゆとりを持てていないように思えます。

問題が起きたら「ガイドライン」という絆創膏を貼るような対処療法を常とする日本は、根本的に治療する必要=制度そのものを見直す必要があるかもしれません。部活動の地域移行を、地域任せの対処療法に留めないために、向かうべき方向と社会制度のあり方をしっかり固める「土台」が必要なのではないでしょうか。

#コロナ禍で増える子どもの自殺

コロナ禍で増える子どもの自殺

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執筆者:松井明子 (ナガクルソーシャルライター)
 2021.3.29

昨年から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界で大流行し始めました。日本国内では2020年1月15日、長野県内ではその約1ヵ月後に最初の感染者を確認。2021年3月28日現在、陽性者(患者等)は2711例目まで確認されています。未だ収束せず、感染予防のための生活様式の変化、仕事や学業への影響で、大人はもちろん子どもにかかるストレスは大変大きくなっています。

未成年者の自殺率が高い長野県

日本全国では年々、自殺死亡率がゆるやかに下がってきていましたが、2020年の自殺者数が11年ぶりに増加。特に女性や小中高校生の子どもの自殺者数の増加が目立ち、全国で479人の小中高校生が自殺しました(前年比140人増)。

文部科学省「令和2年 児童生徒の自殺者数に関する基礎資料集」から抜粋

長野県内では、コロナ禍前から全国の中でも未成年者の自殺死亡率が高く、平成21年以降、全国平均を上回る年が続いてきました。

長野県 保健疾病対策課「未成年者の自殺の現状及び対策について」より抜粋

もともとの自殺者が多い状況下で、コロナ禍がますます子どもたちが生きる環境を厳しいものにしています。

つらいときに自分の気持ちを話せる場

子どもが悩みを抱えたときに、その気持ちを否定せずに受け止めて聞いてくれる人がいることで前を向けることがあります。

そんな子どもたちのためにと全国で取り組まれているのが、研修を受けた電話の「受け手」の大人が自ら電話してくる子どもの話を聴き、気持ちに寄り添いサポートする「チャイルドライン」。全国70団体、県内4団体が連携し活動しています。携帯電話が普及したため自宅に電話がない家もあり、また電話での直接対話が苦手な子どももいるため、いろいろな手段でアクセスできるようにと、電話だけでなくチャットでも受け付けています。

県内では、2020年は2019年に比べて電話の件数が増加。長野県チャイルドライン推進協議会では、「コロナ禍を理由に電話を掛けてくる子どもは少ないが、学校で『密にならないように』と言われたり、消毒やマスク着用など、生活環境が変わり生きづらさにつながっているのではないか。よく話を聞いていくと、コロナの影響を受けていると感じる」と話しています。

また、「子どもは悩みを抱えているとき、よそよそしさなどのしぐさで必ず何かしらの発信している。自分の子だけでなく、身近な子どもたちに日ごろから声をかけ、『あなたのことを気にしているよ』ということを伝え、何か変化があったときには見過ごさないことが大事」と訴えます。

人に相談をするなどして自らアクションを起こせている子どもは、自ら解決する力を持っていますが、一方で誰にも相談せず思いつめる子は死の選択に進んでしまいかねません。

「子どもの話を聴くことと同時に、命の大切さや子どもの人権について伝える活動も大切」としています。

「子ども第三の居場所」で子どもたちを見守る

チャイルドラインのように、匿名で相談できる場だけでなく、ゆるやかにつながる「第三の居場所」で子どもたちを支える大人もいます。

長野市三本柳西で「子ども第三の居場所」を開くNPO法人にっこりひろばは、コロナ禍でも居場所を開き続けています。

旧JAグリーン長野三本柳支店の建物を活用して開く「にっこりひろば」は、子どもに限らず誰でも利用でき、日中、放課後、夜の居場所を提供。三本柳小学校の児童をはじめ、不登校の子、地域の親子や高齢者など様々な年代の人が訪れます。

3月から5月にかけての臨時休校期間は、児童センターやプラザに登録していない子どもたちの居場所を確保しようと体制を整え、午前から午後までオープンして子どもたちの預かりをしました。

コロナ禍前の放課後利用は毎日20~30人程度。3月23日現在は放課後は10人まで、夜は制限なしで開いています。

子どもたちは、宿題をやったりカードゲームで遊んだり、自分の好きなことをして思い思いに過ごします。やってくる子どもたちの顔ぶれはおおむね決まっているので、自ずとちょっとした変化に気づくという代表の岡宮真理さん。「『今日はうれしそうだな』『いつもと様子が違うな、大丈夫かな』と感じることがある」と話します。

NPO法人にっこりひろば代表の岡宮真理さん

クラス替えの後やコロナ禍の休校期間明けは、何となく落ち着かなかったり、気持ちが沈んでいる様子の子も見られたそうですが、保護者から「学校の環境が変わっても、いつもと同じにっこりひろばがあったから、いつもの日常を取り戻すことができて良かった」という声ももらったといいます。

同年齢の子どもの交わりとは違う、知らない子同士や学年を超えた縦の関係ができるのも、このような地域の居場所の特徴です。

2020年6月から始めた夜の居場所では夕飯の提供をしてきましたが、感染拡大以降は弁当を持ち帰ってもらう方式に変更。本来でしたら同じ場で食事を共にしたいところですが、子どもの安全を確保して居場所を開くことを優先し、食事は控えることにしました。

にっこりひろばの活動は、子どもの自殺予防に直接的に関わるものではありませんが、岡宮さんは、「落ち込んだりしたときに、『頑張ってみよう』と思い出してもらえる人、場所でありたい。ゲートキーパーでありたい」と、子どもたちに目を配ります。

社会全体で子どもを育てる

家庭や学校という固定的なつながりだけでなく、全ての大人が社会全体で子どもを育てるという意識で地域の子どもと関わることの大切さを感じます。関係づくりは一朝一夕ではできないからこそ、地域の大人が地域の子どもを見守るという「当たり前」を続けたい。そして、助けを求める子どもがアクセスできる手段を多く持てるように支援体制を整えることで、大切な命が守られるようにと切に願います。

取材:2021年3月23日 にっこりひろば

#「信州型やまほいく」が、子どもたちの未来を拓く

「信州型やまほいく」が、子どもたちの未来を拓く

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文責 ナガクル編集デスク 寺澤順子  協力: 上田女子短期大学
 2021.3.28

「自然保育」「やま保育」「森のようちえん」「野外保育」・・・。

信州の自然や、豊かな地域環境を生かした「信州やまほいく(信州型自然保育)」。長野県が認定制度を作り、6年目を迎えます。2021年3月時点で225の認定団体が、県のホームページで公開されています。

「やまほいく」とはなんなのか。その歴史と、現場の保育士たちの声、その意味と効果について、長野県上田市にある上田女子短期大学が「信州上田 “やまほいくの里山”プロジェクト」を立ち上げ、検証しました。

※筆者は、研修会、鼎談、学生の感想などを、原稿化・編集を担当しました。大学の理解を得て、内容について一部を紹介します。

森のようちえんは、1983 年長野市で全国初の開始

上田女子短期大学・信州大学 大学連携事業 第 13 回合同学習会の講師、内田幸一さんは、日本における「森のようちえん」の第一人者として知られています。1983年から飯綱高原で自然の中で森のようちえんをスタート。現在は飯田市で「野あそび保育みっけ」という小さな認定こども園を運営しています。

講演で内田さんは、「子どもたちは、幼児期から小学生にかけて、自然の中で心地よい色々なもの、面白さ、楽しさ、ワクワク感などを感じます。自分の五感を使って自然の中の事象や、人との関係性をたくさんつかみ取ることができます。」そしてそれが選択する力につなが。「この地球に生まれて、その中で生きていく人間として、社会を作っていくには何が一番大切なのかを、自分たちのつかんだ幼い頃の感性で、決めて欲しいなと思っています。」と述べています。

最後に、自然保育などの言葉の定義付け、「森のほいくえん」の基準化で、国などの行政の制度の組み立てや協働、そして理念法の整備などにも関わってくると言います。40年の時を経て、全国で自然保育を実践し、その効果や定義がすこしずつ明確化してきたとも。そこで、こうした大学の研究者や学生が、さらに研究を進めていくことの重要性を研修会の中で訴えました。

自然保育は想像力や問題解決能力につながる

「鼎談1」では「幼児期から学童期につなげたい育ち-自然保育の中にある学びを考える-」をテーマに、自然を取り入れた保育を実践している園の園長2人と、子どもの人格形成の基礎を培う時期に、自然を活用した保育を行うことがなぜ大事なのかを、実践事例を元に考えました。

信州大学教育学部准教授、髙栁充利さんがアドバイザーとして加わり、園児が泥んこになって遊ぶ中で、水を運んで川をができて、トンネルを作っていくという様子を聞き、「子どもの学びは人類の文明の発見をなぞっている以上のことが起こっている」ということばを引用して、その経験の大切さに言及しました。

また、「大人を満足させることだけが「いい子」の条件になってしまったときには、自分の満足・納得よりも他人に気に入られることが優先されているともいえます。(中略)どうしたら自分が一番満足し、本当に胸を張って後悔しない人生につながるのか、という感覚にもとづいて選択ができるかどうか。それは、自分の人生はもちろんのこと、自分の家族にも、さらには世の中にも、少なからぬ影響を与える。」とのコメントが印象的でした。

ホームページに研修会、鼎談、学生の感想が掲載されています。

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また、上記、ホームページに掲載した鼎談と講演会のダイジェスト版をも一部に掲載した、同短大が「やまほいくハンドブック」を発行しました。お問い合わせは上記、ホームページから大学まで。


最後に、長野県の発表によると、小学校以上の不登校が増加傾向にあります。また、若者の自殺も社会の大きな課題となっています。

幼児期の環境や教育がその原因であるとは言えません。しかし、改善策の一つとして、自然保育を取り入れることによって、成長過程で、自己肯定感が増したり、自分で課題を解決する能力、また他の仲間とコミュニケーションをとって楽しく物事を作り上げていく力が培われることは、今回の上田女子短期大学のプロジェクトで明らかになってきました。

さらに研究が進み、指導者の育成はもちろん、社会全体の制度が整っていくことを期待します。

信州の自然や、豊かな地域環境を生かした「信州やまほいく(信州型自然保育)」。長野県が認定制度を作り、6年目を迎えます。2021年3月時点で225の認定団体が、ホームページで公開されています。
#長野県発祥の山村留学は地域活性化のカギか?!
関連する目標:  

山村留学は長野県が発祥、県下10ヶ所で137人受入
長野市大岡で廃止の危機に!?

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文責 : ナガクル編集デスク 寺澤 順子  写真提供 : 内田 光一郎 (大岡地区住民自治協議会 事務局職員)
 2020.5.30

体験の裏付けがない知識習得は砂上の楼閣であり、子どもが真の生きる力を獲得するには、様々な自然体験、生活体験の場が必要である (公益財団法人育てる会ホームページより)

山村留学は、昭和51年、教員や保護者、教育関係者により長野県八坂村(現在大町市八坂)で任意団体(現 公益財団法人育てる会)を発足、初めて実践活動をシステム化して教育に取り入れた。その後、山村留学は全国に広まり、これまで小中学生約12,000人が参加し体験してきた。「山村留学とは、都市部の子どもたちが自然豊かな農山村地域の共同宿泊施設や農家などで暮らし、地元の学校に通いながら、自然体験や生活体験をする取組」としており、自然という県財を有効に活用した教育県として、世界に誇れる功績の一つだ。

雄大な北アルプスを抱きながら、子ども達の心と体が育まれる。写真提供 : 内田 光一郎

しかし、今、その山村留学が長野市で危機となっているー。

長野市大岡地区には「大岡ひじり学園」(長野市大岡農村文化交流センター)がある。今年度は小学生9人、中学生6人が在籍。大岡ひじり学園は長野市(教育委員会)が育てる会に委託し運営されている。

写真提供 : 内田 光一郎

旧大岡村時代、村長が八坂村の山村留学施設を視察し、大岡村での開設を模索し調査、平成9年より村が主導で「大岡ひじり学園」を開設した。その後大岡村が平成17年に長野市に編入したため、長野市が2100万円の予算を割いて、育てる会に委託し運営する形となった。

学園生は平日昼間は大岡小中学校に通うことはもちろん、年間120日は地区内の農家に民泊し生活するため、地域住民との絆も深く、県外から留学しているとはいえ、立派な地域の一員だ。開設以来約400人にのぼる子ども達がここで成長し、中にはそれがきっかけで移住する家族も。大岡地区住民自治協議会には学園を支援する会もでき、地域と連携した学園運営を続けている。

大岡ひじり学園の様子は「ナガラボ」(内田 光一郎 さん執筆)のこちらの記事から

突然、山村留学事業は打ち切りの知らせが?!

 

大岡地区住民自治協議会 会長 下倉光良さん

大岡地区住民自治協議会会長下倉光良さん・事務局長中村哲夫さんによると、今年3月11日、担当である長野市教育委員会の職員から青木高志学園長を訪ね「平成2年度で山村留学事業は打ち切りとし、育てる会への委託契約もしない」と伝えられたという。「まさに寝耳に水。学園から住民自治協議会に連絡があり初めて知り驚いた」と話す。

 

「いわば山村留学は合併前から大岡の社会教育の柱」と下倉さんは語気を強める。「山村留学の経験を生かして、もっと小さな子どもや、その家族を誘って大岡の自然体験をしてもらう企画を進めているところ」と話す。

この2年、大岡地区住民自治協議会も後押しし、地域住民らの有志が活動グループ「Oooka森の学び舎」を立ち上げ活動してきた。今年2月にはNPO法人化し、保育園児の親子を対象に自然体験教室に力を入れていこうとした矢先の出来事だった。

大岡地区住民自治協議会 事務局長中村哲夫さん

数日後、教育委員会より住民自治協議会へ正式に説明があった。「これはえらいことだ」と、大岡地区住民自治協議会は3月25日〜4月17日の短期間で、地区内外から852名の山村留学予算打ち切りの反対署名を集めた。

そして4月21日、長野市長を訪問しその署名を提出。市長からは「(廃止)期間を区切らずに協議していこう」というコメントを得たところだ。

「しかし油断はできない」と二人は話す。なぜなら、山村留学事業の受け入れの可否は、小中学校の合併問題とも深く絡んでくるからだという。4月1日現在で、大岡小学校の児童数14人、内山村留学が9人、大岡中学の生徒数は13人、内、山村留学が6人。特に小学生の数は地元の児童を上回っているという現状がある。地域で生まれる子どもの数が年々減少し、このままでは小中学校自体の存続が危ぶまれる。

一昨年には、長野市が主導し「小さな拠点ワークショップ」を開催、大岡地区の住民自治協議会は協働し、県外から講師を呼び大岡の今後について考えてきた。過疎化が進む地域をどう存続していくのか。その魅力を掘り起こし、活動者同士の交流を通じて、関係人口増加や移住促進のために今、何をすべきかを模索してきた。

「地域づくりの新しい視点~関係人口の増やし方~」大岡地区住民自治協議会主催 2018年1月10日(水)13:30~17:30大岡支所2階大会議室にて、月刊「ソトコト」編集長の指出一正さんを迎えて関係人口について学んだ。(写真提供:市民協働サポートセンターまんまる)

昨年春には11人の住民有志により、「自然教育の大岡」を目指し「Oooka森の学び舎」を結成。親子山村留学の提案を視野に入れて、シンポジウムを開催したり、学園と連携し、保育園児を招いた自然体験教室を開くなどの活動を実施。「移住促進を目的として、長い間培ってきた山村留学の経験を生かして、小学生低学年や保育園以下の子どもたちとその親が遊びに来られる企画をと考えてきた」と言う。

2月1日(日)長野市大岡地区で親子自然体験「100の大岡」イベントがあり、長野市街地に住む親子14組約50人が参加しました。(写真提供:市民協働サポートセンターまんまる)

「山村留学」は移住促進のカギに

冒頭に書いたように、山村留学は長野県発祥。長野県全体で、現在10ヶ所で山村留学を受け入れている。「山村留学で学ぼう!」と題して、県主催で東京都にある「銀座NAGANO」で昨年も2回の合同説明会を開催。10月には20組50人の参加があった。継続希望者が多いため、新規の需要に対し供給が追いつかないこともあるという。(長野県の山村留学ホームページ)

29年度NPO法人全国山村留学協会の全国の山村留学実態調査より

公益財団法人育てる会が中心となり、全国山村留学協会を1987年に設立、現在全国で23団体が加盟している。その協会が行った29年度NPO法人全国山村留学協会の全国の山村留学実態調査によると、地域活性化のため新たな政策として山村留学に着目する自治体が増えていると分析している。

29年度の山村留学者数は全国で628人に登り、増加傾向にある。最も多いのが鹿児島県で165人、長野県は2番目で130人、北海道が61人と続く。

29年度NPO法人全国山村留学協会の全国の山村留学実態調査より

大岡地区では、毎年、8月15日の夏休みに行う成人式には山村留学卒業生も地区へ招いている。また、「お祭りなどに第二の故郷として、子連れで遊びにきてくれることもある。移住者もいるし、地域おこし協力隊となって戻ってきてくれた卒業生もいる」と下倉さんらは誇らしげに語る。

山村留学大岡ひじり学園から望む北アルプス 写真提供 : 内田 光一郎

新型コロナウイルスでICT化が進み、どこにいても、仕事ができるテレワークを取り入れた働き方や生活が主流となる可能性が見えてきた。そんな中、今後、密集した都会から離れ、自然の中でのびのびと子育てをしようとする家族の増加が期待される。

一方で、災害や新型コロナウイルスによる経済危機により、税収の落ち込みが懸念され財政改革が叫ばれ、過疎化・小子化による教育施設の編成にも手をつけざるを得ない状況が迫ってくる。

こうした状況は大岡の山村留学だけに限らない。削減か継続かの二者択一という従来型の議論から脱却する必要がある。行政と地域が対峙する関係ではなく、協働し、第三の道を探る必要性に迫られているのではないだろうか。

 

取材:2020年4月22日 大岡地区住民自治協議会にて

ナガクルは国連が提唱する

「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。

この記事は下記のゴールにつながっています。

#学校に行けない子へ新たな居場所を
関連する目標:  

学校と家以外の居場所。官民連携の必要性を問う。

2,989
文責 ソーシャルライター さらみ
 2020.3.28

もし自分が、自分の子どもが、孫が、
ある突然学校に行かなくなったら、行けなくなったら。
どうなってしまうんだろうか。

本記事では、不登校の現状と、県内での取り組みを2例紹介していく。

文部科学省が毎年実施している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」では「小・中学校における不登校児童生徒数は164,528人(前年度144,031人)であり,前年度から20,497人(約14%)増加。在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は1.7%(前年度1.5%)。過去5年間の傾向として,小・中学校ともに不登校児童生徒数及びその割合は増加している」としている。

ただし、この調査の対象となっている児童生徒は、「何らかの 30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を. 心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、除いたもの」と文科省によって定義されており、保健室登校や欠席日数が29日以下の場合は含まれておらず、また「明確な理由がなく学校へ行かれない」児童生徒も現実でいることから、実際の数は164,528人よりも多いのではないかと言われている。

調査の中で不登校の理由として、学校に係る状況(いじめ、友人関係、教職員との関係、学業の不振、進路に係わる不安、クラブ活動・部活動等への不適応、学校のきまり等をめぐる問題、入学・転編入学進学時の不適応)と家庭に係る状況に分けられている。

不登校の理由として70%以上が学校に係る状況になっており、内訳は友人関係、学業の不振と続く。

長野県教育委員会発表による「児童生徒の問題行動・不登校等に関する調査」平成30年度

長野県も例外ではない。

平成30年度調査では、小中学校合計で在籍比1.95%と全国平均よりも多い。

県や市町村は居場所作りや相談窓口を開設、運営しているが、不登校児童生徒は増え続けている。

 

 

当事者が立ち上がった!! 不登校への取り組み

2019年8月18日 #不登校は不幸じゃない というイベントが全国100箇所以上で行われた。

発起人は、10年間の不登校経験を経て、現在は実業家として全国で活動している小幡和輝氏(和歌山県)。長野県では千曲市、佐久市、木曽町の3箇所で開かれた。

佐久の様子を伝えていく。

会場は佐久市の旅館・野澤館さん

イベントのスタッフには、子どもや自分が過去に不登校だった人たちが多くいた。

子ども大人合わせ20名を超える参加者が集った。

実際に今不登校の子どもをもつ親御さんの話を聞く。

「1人じゃないとわかり、安心した」と涙ぐむ親御さんもいた。

大人が参加している間、スタッフの大越要さんや他のスタッフが、子どもと話をしたり、別室でゲームをしたりしていた。

佐久では当日来られらなかった人たちや、来てくれた人の居場所として、年に数回集まりを主催している。

 

「hanpo」長野で暮すマイノリティを生きる僕らのために、
僕らが作るフリーペーパー

hanpoは、不登校をはじめとする、難病、障がい、LGBTQなど一般にマイノリティ当事者が書いた記事が載っているフリーペーパーだ。

毎回5000部~発行し、県内各所のフリースペースや、病院、カフェなどに置かれている。

一歩ではなく、半歩。

今苦しんでいる子どもたちに、自分たちの経験を伝える。

3,4ヶ月に一度のペースで発行し、現在までに3部(4部制作中)が発行されている。

記事の内容は「普通」「夜」など毎回テーマごと異なる。

「必要としている子に届くよう、これからも継続して発行していきたい」

と編集長であり、不登校の元当事者でもある草深将雄氏は話す。

なお、費用は寄付や制作スタッフの自己負担でまかなわれている。

寄付は随時募集中。寄付先は以下

「ゆうちょ銀行 hanpo[ハンポ] 店名059  口座番号00510-5-0053632」

 

まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

文部科学省は「平成28年9月14日付 不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」において『(3)不登校とは,多様な要因・背景により,結果として不登校状態になっているということであり,その行為を「問題行動」と判断してはならない。不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し,学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが,児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要 であり,周囲の大人との信頼関係を構築していく過程が社会性や人間性の伸長につながり,結果として児童生徒の社会的自立につながることが期待される。』という通知を各都道府県教育委員長や知事宛に出している。

また、文部科学省は 令和元年10月25日付 不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」において、全国の知事や教育庁等宛で基本的な考え方の見直しを行った。

そこでは「(1)支援の視点
     不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある」とあり、50年以上続けてきた「学校復帰を目的とする方針」の転換を行った。

これは大変大きな一歩であることに違いはない。

ただ、「一方で、,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。」と不登校におけるリスクの存在においても同文で言及している。

 

長野県でも、『「不登校への対応の手引き」H31 改訂版』を作成。

これは県教育委員会が実施した「不登校当事者である子どもたちに対するアンケート調査」を元に作成したものだ。

不登校当事者である子どもたちに対するアンケート調査(心の支援課)令和元年9月~10 月調査

 

手引きでは「これまでの不登校対策は何か根本的に違っていたのでは」「学校以外の多様な学びの場への支援が不十分なのではないか?」といった問題意識を提示し、「科学的知見活用した取り組みを含め、学校そのものを変えていくことが必要である」「子どもたちの社会的自立を目指し、学校以外の多様な学びの場と連携した取り組みが必要である」という従来の在り方を見直す方向性を明示している。

アンケートと記事の序盤で示した児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果との違いで特徴的なものは、不登校になった要因だ。

アンケートでは学業の不振(30.6%)、教職員との関係(27.4%)、友人関係(24.2%)、入学・転入・進級(19.4%)となっており、家庭に係る状況は一番低く9.7%に過ぎない。

一方、問題調査結果では家庭に係る状況(43.4%)、学業の不振(38.8%)、友人関係(30%)となっている。

この開きは何なのだろうか。

児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果学校側が回答をしている。学校側は不登校の要因の多くを「本人と家庭」の問題としているが、当事者は「学業と教職員の関係」と認識している。

今回の手引きでは、学校と当事者との意識の差を踏まえている。

だが、課題はまだまだ山積しているのではないだろうか。

県教委は不登校児童生徒への理解を示す姿勢を表しているが、実際に現場で子どもたちと係わる教職員や市町村教委への認識の変化はまだまだのように見受けられる。

せっかく県教委から不登校の子どもたちに寄り添った指針を出しても、市町村教委、現場へと降りてくるまでに先細りし、従来の考え方が席巻してはいないだろうか。

県教委は全県で4箇所ある教育事務所や総合教育センターなどで、いじめ不登校に係わる研修に取り組んでいるようだが、校務分掌上仕方なく参加するという認識の教職員はいないだろうか。

一つの提案として、中学校区単位で元当事者や、現に不登校の児童生徒を持つ保護者、支援者の話を聞くリアルな研修の機会を学期ごとに実施するのはどうだろう。

現場では自分のクラスの児童生徒が不登校になり、悩んでいる教員もいる。ただ、それをベテラン教員に相談しても「先生が頑張れ」のようにアドバイスにもならない言葉をもらい、結局何にもできず不甲斐なさにさいなまれているということも考えられる。

教職員も学びたいはずだ。

民間の活動の後押しする動きが地方公共団体でとられていき、「不登校」への認識が変わっていくなか、県民・市民も従来のような「問題行動」ではなく「選択肢の一つ」としていくの認識をしていく必要がある。

 

 

ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。

 

 
#健康づくりは、子どもの頃からの食育の積み重ねが大切
関連する目標:  

今、子どもの食が危ない! 食育の積み重ねを

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文責: ソーシャルライター 野菜ソムリエプロ:増田朱美
 2020.2.17

今、子どもたちの食が危ない。

 

2020年1月29日、長野県長野保健福祉事務所を会場に

「令和元年度長野地域 健康づくり・食育フォーラム」が開催された。

このイベントを通して、長野県における子どもたちの食育の重要性を考えたい。

NPOと行政が手を組んで、子どもたちの食育を支える必要性があるのではなかろうか。

長野県が独自のアンケートを実施し策定した

「長野県こども若者支援総合計画 ~子ども若者未来の応援~2018-2022」

を見ると・・・・・

小中学生の9割は朝食をとっいてる一方で、

約半数しかバランスの良い朝食を摂れておらず、約2割の児童生徒が、

副菜なしの朝食となっているなど、

望ましい食事内容となっていない子どもがいたとしている。

1月29日の健康づくり・食育フォーラムの冒頭、

長野県立大学健康発達学部長:笠原賀子氏は

「持続可能な食育の推進にむけて ~地域の野菜と果物で健康づくり~」の

をテーマに講演を行い、

SDGsの17の目標すべてが「食」に関連している。

その中、長年の生活習慣は変えないほうがよい。

それには、幼少期からの生活習慣を教育で積み重ねていくことが大切と提起した。

 

 

続いて長野地域(長野市、須坂市、千曲市、坂城町、小布施町、

高山村、信濃町、飯綱町、小川村)で

              日頃の「信州の食でつながる 人づくり・地域づくり」を テーマとして

食育活動を発表する3団体が発表。

長野市を活動拠点とし、10年間食育活動を続けている、

NPO法人「食育体験教室・コラボ」理事長の飯島美香さんは

「朝、味噌汁飲んできた人?と子どもたちに問うと、

クラスの半数以下しか食べていない。

私たちのNPOはこれからの未来を生きる子ども達が

自らの力で生き抜く術を身に着けるお手伝いを活動をしている。

子どもと母親に寄り添い続けている

と発表。

このNPOはキッズファーム、弁当の日応援プロジェクト、

おでかけみそフェスタ、和食の日などの取組をしている。

味噌の生産量日本一の長野県。

このイベントで健康効果も説明しながら「みそボール」づくりを出展。

子どもでも手軽に作ることができる「みそボール」は、様々なイベントで大好評だ。

 

また、信濃町立柏原保育園での取組「地域の文化にちなんだ活動と献立」

信濃町教育委員会管理栄養士:小林真澄さんより紹介された。

 

信濃町に生まれた、俳人:小林一茶にちなんだ献立を取り入れている。

1例として、5月5日は、一般的には「こどもの日」だが、一茶誕生の日。

子どもたちに、「5月5日はなんの日?」と問うと、

「一茶の誕生日!」と答えるまでになっている。

 

 

 

 

もう1団体は、飯綱町食生活改善推進協議会。

会長:黒栁美和子さんから「地域に密着した食育活動」として、

2歳児向けの食育シアターの実施、

男性向けの料理教室など、地域に密着した活動が報告された。

 

課題は、会員数の減少と会員の高齢化と

農繁期に活動できる会員が限られてしまうこと。

 

「今後は、子どもを通して、子育て世代の保護者にも向けた

食育活動の実施に力を入れたい」と述べた。

 

このフォーラムは、

長野地域振興局を中心に、

おいしい果物を活かした地域活性化を図る「長野果物語り」を展開している中、

地域の特性を活かしながら、健康づくりと食育、

そして地域づくりの推進を図る目的で、

長野県長野保健社会福祉事務所の主催で開催されたもの。

 

会場には、食生活改善推進業議会、

農業委員、栄養士、JA職員などの160名ほどの大人に混じり、

教師の引率のもと、食を勉強している高校生も参加している姿も見られた。

 

開会前には、須坂健康スムージー等の試食提供や、

フォーラム途中に健康体操の実演も行われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

現在、小児生活習慣病が増えている。

朝食や昼食などの欠食や、野菜類が少ない偏った食事などの要因により、

小児肥満に加え、栄養失調も起因の一つと言われている。

 

 

これを機会に、

それぞれの団体が繋がり、それぞれの実績等を共有し、

食育活動の輪が広がることを期待したい。

 

 

「子どもに伝える」

 

 

 

小さなうちから食事の大切さを伝えていくことは

大人の大切な役目であると思われる。

 

ほんの少し前まで食事は各々「箱膳」を使っていた。

そして小学生になると自分専用の「箱膳」が与えられる。

 

食事をしながら作法、食事の内容、

その食事に関わっている多くの人達に感謝の心等も

大人から子どもたちへ伝えながらだったという。

 

 

長野地域及び長野県内の子ども達は

もっと健やかに過ごすことができ大人となり、

そして将来、自身が子どもを育てるとき、

それを継続して伝えていく大人となることを期待したい。

 

(文責: ソーシャルライター 野菜ソムリエプロ:増田朱美)

 

 

 

 

 

 

 

 

ナガクルは国連が提唱する

「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。

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#家庭崩壊が生み出すものとは
関連する目標:  

子どもの6人~7人に1人が「貧困家庭」にいる
60万余組が婚姻関係を結び、21万余組の離婚

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寄稿: NPO「子ども・家庭支援センターHUG」副理事長 山口利幸さん
 2018.10.12


学校教育に携わる者にとって、不登校やいじめ、非行などへの対応、即ち生活指導は学びの指導とともに教育活動の二つの柱です。

生活指導と学習指導は相互に絡み合って子どもの成長、人格形成の不可欠の両面をなしています。私は、近代日本の教育がこの両面を視野に入れてきたところに大きな特徴があると思っています。「知・徳・体のバランスのとれた全人教育」が「信州教育」の使命、目標に据えられてきたのもこのような子ども観、教育観からです。また、社会全体から見ますと、たとえ貧しい家庭の出身であっても教育を通じて貧しさからの脱却が可能となり、中間層の増大と社会の流動性(風通し)がよくなったのもこのような教育の成果といえます。

現在、「子どもの貧困」が社会の階層化と固定化につながる恐れが出てきました。学校教育においても、「子どもの貧困」にどう向き合っていくかが大きな課題となっています。経済成長の時代から1980年代の低成長・成熟時代、そして金融資本の暴走によるバブル崩壊後の「失われた十年(二十年)」の中で急速に「子どもの貧困」が浮上してきました。

「豊かな日本」で、子どもの6人~7人に1人が「貧困家庭」にいるといわれています。スナック菓子の「食事」、まともな食事は給食のみ、洗濯や入浴不足で「くさい」といわれ不登校になった例、運動用品が買えなくて部活をやめざるを得なかった例、外から見えにくい家庭内での虐待・ネグレクトやDVの急増等々目を覆うばかりの実態が生じてきました。いま、子どもの成長の基盤となる生活環境が崩壊している現実があります。社会全体で家庭を支え、子どもの生活環境を整える支援が喫緊の課題となっています。

 

貧困家庭の増加の一因に離婚による母子家庭の増加があます。

平成に入ってから離婚件数と離婚率が急増し、平成14年には29万件弱と最高を記録した以降は減少してきています。昨年は60万余組が婚姻関係を結び、21万余組の離婚がありました。その離婚夫婦の約6割に未成年者がいて、その数は約20万人弱に上っています。昨年の出生数は94万人ですので、単純計算しますと、子どものおよそ5人に1人が将来離婚家庭で育てられる可能性があるという数字です。

我が国は離婚の際、親権を片方の親に限定する単独親権制をとっています。欧米などを中心に概ね共同親権制(離婚しても子どもが成人するまで父親・母親としての義務を果たす)であり単独親権制の国は少数派です。加えて離婚の際、85%以上は母親が親権者になる中で、シングルマザーの子育てと仕事の両立の困難さや労働環境等の厳しさもあって、母子家庭の半数以上がいわゆる国民の平均所得の半分以下にある「貧困家庭」であり、子どもの6~7人に1人が「貧困家庭」にあるといわれています。

子どもの虐待防止のためのオレンジリボン運動

2012年(平成24)の民法改正では離婚時に別居親との面会交流と養育費の取り決めを行うことが明記されましたが、罰則規定がないこともあり、面会交流は3割前後、養育費を受け取っているのは2割未満にとどまっているのが実態と言われています。いま単独親と子で構成される家庭が危機に瀕しています。家庭を支援する親族、地域や職場の支援力も衰退してきました。お互いに深く係わらない人間関係の希薄化、「自己責任論」が拍車をかけています。

親の離婚は未成年の子どもたちに大きな衝撃を与えます。

そのような子どもと家庭を支援することは絶対に必要です。しかし、「家庭に介入する」ことは教員、学校にとって厚い壁があります。
両親の離婚に至るまでの様々な対立、そして離婚は子どもたちに大きな衝撃を与え「自分は捨てられたのではないか」「自分のせいで離婚したのではないか」「これからは父(母)会いたいけど口にしてはいけない」など不安な気持ちに陥れます。子どもの成長には、「自分は両親から愛されている」「必要とされている」「理解してくれる親や大人がいる」といった信頼感や安心感が不可欠なのですが、離婚に伴う子供の喪失感は生涯にわたって心に深い傷をもたらすことが多いのです。人間関係を作る意欲や自信が損なわれ、鬱症状が現れやすくなります。結果として不登校やいじめ、また非行・犯罪の発生率も高くなります。このような「問題行動」の背後に「離婚に伴う要因」があることを踏まえた指導・支援策が大切です。

離婚家庭への十分な支援がなく、子どもの健全な成長が阻害されたままですと、親の貧困が子の世代にも引き継がれる「負の連鎖」による階層の固定化が懸念されます。そうなりますと将来膨大な社会的コストが必要となります。したがって現在、せめて高校を卒業し、仕事得て自活できるまでは、基礎自治体を中心に社会の支えによって「一人前の大人」になれるよう物心両面から母(父)子家庭支えることがきわめて大事です。なおこの際、行政の医療・保健、福祉、教育、産業・労働など各分野の一体的な支援体制、即ちワンストップの横断的かつ継続的な支援体制ができるかどうかが解決の鍵であると思います。

離婚は親にとっては男女関係の決裂ですが、子どもにとっては一方的に片方の親を失うことになります。虐待やDVによる離婚は例外としても、本来なら子どもの成長にとって父性的なものと母性的なもの双方が両親によって提供されることが必要なのです。せめて成人するまでの間、親子関係が面会交流など何らかの形で維持され、父親や母親として子どもに向き合える環境を整えることが子どもにとって大切ではないでしょうか。

私たちのNPO「子供・家庭支援センターHUG」は公正、中立の第三者的立場から別れた親と子どもの面会交流等のお手伝いを通じて子どもの成長・発達を目指す組織です。
今年になって国においても新しい動きが出てきました。6月、法務省は来年度「法制審議会」に共同親権制の導入を諮問すると報道されました。現在の単独親権制を維持しながら、共同親権制も選択できる民法改正を目指すとのことです。離婚しても子どもとの親子関係は切れるわけではありません。母親、父親としての責務を果たすことが子どもの成長の保障となる民法改正と具体的で効果的な制度設計が求められるところです。

筆者プロフィール 山口利幸さん
昭和22年長野市生まれ。昭和44年度から長野県の高校教員として勤務し、高校4校、中学校1校で社会科などを担当。平成3年度から県教育委員会の指導主事として教育行政に従事、その後高等学校長を経て平成18年度途中から県の教育長を2期6年半務め平成25年3月に退職。現在は母校の小・中学校の教育ボランティアや、NPO「子ども・家庭支援センターHUG」の副理事長などを務めている。

 

NPO法人子ども・家庭支援センターHUG会報掲載記事を再執筆(民生児童委員の皆様、学校教育に携わっておられる皆様へのお願い H30.8.13)していただき、ナガクル編集室で編集したものです。 

寄稿: NPO「子ども・家庭支援センターHUG」副理事長 山口利幸さん

ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。