いまは「安心」の長野県産農産物
店頭に並ぶ農作物に「長野県産」の表示を見つけると「安心」できる。さらに生産者に知った名前があれば、迷うことはない。見た目や値段にとらわれず「安心」を選べるのがうれしい。
そんな農産物が店頭から消える日がやってくるかも知れない。2018年4月に廃止された主要農産物種子法の影響が心配だ。戦中戦後に食料難の時代を経験した日本が、「食料を確保するためには種子が大事」という国の意思を現し、米・麦・大豆の優良な種子を安定的に供給することを都道府県に義務付けていた法律が、マスコミも取り上げることなく静かに廃止された。
さらに国は、種苗法で定める農林水産省令を改正し、農業者による「自家採取を原則禁止」した。これらによって、種子は毎年「企業から買わなくてはならないモノ」になった。
失われる多様性と脅かされる健康
種子を巡る同様の動きは、すでに世界各地で重大な環境問題を引き起こしている。企業は最大の儲けを追求するため、種子の種類を限定する。地域のニーズは関係ない。大規模な単一農業で、地域にあった生物の多様性が失われ、土壌劣化などの環境被害が起きている。もうひとつの問題は、企業が扱う「遺伝子組み換え種子」とセットの農薬が引き起こす健康被害だ。
食べものを選べない
種子が「企業から買うモノ」になり契約栽培に縛られれば、そこからできる農産物もすべて企業のものになる。種子を支配すれば、食も支配できる。「それしかない」社会では、消費者が買うものを選ぶことすらできない。食料の6割以上を輸入している日本で、国内栽培の種子までが企業に支配されたら、国民は「与えられたモノ」を食べることでしか生きられなくなる。
子どもたちの健康も守れない
失うのは食べものを選ぶ権利だけではない。健康への影響も心配だ。アメリカでは現在、Non-GMO(非遺伝子組み換え)と有機農産物の消費が増え続けている。アレルギーや発達障害、内臓疾患、肥満、糖尿病、自閉症、うつ病などに苦しむ「子どもたちのため」を考えた母親たちの取組が、大きな社会現象になっている。
長野県産農産物の安心を守るには
もし、長野県内で「遺伝子組み換え作物」が栽培されるようになったら、「長野県産の農産物は安心」という信用はなくなってしまう。「安全性に疑問のある種子が栽培されている県」になるからだ。「うちは違う」と証明することも、下がった信用を取り戻すことも極めて難しい。
農業者の自由な栽培と消費者の選べる機会、子どもたちの健康を守れるとしたら、これまで長野県が守ってきた米や麦の種子を引き続き県が責任をもって生産・供給するともに、県産の価値を下げないため「長野県では遺伝子組み換えの米や麦を一切栽培しません」と、県が宣言し規制するしかない。これに、大豆やそば、野菜、果樹などを含めて県産の農産物すべてを対象にできれば、県は子や孫に世界にも誇れる「NAGANOブランド」を手にすることができる。その経済的な効果は計り知れないものになり、県民の大きな誇りになる。
(執筆:吉田 百助)
ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。