みんなで創ろう! 長野市域災害時支援ネットワーク

幅広いボランティア団体らが参加した3回目の交流会

令和元年台風19号被災から2年余。被災地は復興に向けて懸命の取り組みを重ねています。長野県下では全壊家屋1,087世帯、半壊家屋2,889世帯におよび、人的被害は被災直後死者5名だったものが、その後に関連死が増え続け、合計で23名になってしまいました(令和3年9月6日現在)。

被災当初、さまざまな支援団体・グループが現地に入り、7 万人を超す災害ボランティアが復旧支援にあたりました。「泥かき」以外の多様な支援活動も展開されました。その当時を振り返りながら、各種ボランティア団体・グループが平時からつながっていて、いざというときに「協働」の取り組みができるようにしようとの機運が長野市内で高まり、昨年2回の長野市域支援ネットワーク交流会が行なわれました。

さらにそれを発展させる形で3回目の交流会が11月3日(祝日)、長野市のふれあい福祉センターで実施されました。主催は長野市災害ボランティア委員会。掲げたキャッチコピーとテーマは「みんなで創ろう! 市域災害時支援ネットワーク~平時のつながりを活かした災害支援活動へ~」でした。

ボランティア団体・グループの代表のみならず、行政の災害関係担当者、企業、労働組合、大学関係者、弁護士など幅広い参加がありました。会場の都合で44名の限定参加でしたが、来られない人たちはzoomで参加しました。

事前に、参加申し込み団体に、下記アンケートが実施されており、当日一覧にして配布されました。これは相互につながるための工夫であり、貴重な資料として今後に活かされることになります。
▽今年になって災害支援活動をしたか
▽得意分野は何か
▽19号台風災害時にやりたかったけどできなかったこと
▽平時の活動
▽つながっている団体・グループ について

災害支援スペシャリスト園崎秀治氏講演と参加者交流

前半(午前)は、災害支援スペシャリスト園崎秀治氏の講演と参加者同士の交流でした。園崎氏は全国社会福祉協議会在職中、全国各地の災害支援活動に関わっていました。現在は、より積極的に被災地支援に貢献しようと独立し、全国で講演や災害支援・防災アドバイスの活動に携わっています。

園崎氏は冒頭で、最も大事な「支援の三原則」を説明し、「被災者中心」「地元主体」「協働」だとしました。この中で、外部支援の意義について「地元だけでは充足できないマンパワーを復旧・復興に提供する」「行政や制度では行き届かない、きめ細やかさで被災者に寄り添った支援ができる」「自発性に基づいた積極的で多種多様な支援となる」ことを挙げました。さらに「地元住民でない(しがらみがない)特性を生かした支援(外部者だからこそできる支援)が可能である」ことを指摘し、外部支援の力を活かす地域の「受援力」が被災地側にも必要であることを説明しました。災害支援の意義を改めて確認できる内容でした。

日常のボランティア活動を災害時に活かす視点としては、どんな活動でも支援に役立つと事例をあげて説明しました。そして、災害ボランティアの活動というと「泥かき」「がれき撤去」となりやすいので、参加できるボランティア活動のメニューを増やす必要性を強調しました。

アフターコロナにおける災害ボランティアセンター(VC)の運営についてもふれ、
▽フェイスブック/メッセンジャーによる即時連絡調整
▽Zoomによる頻繁かつ短時間の打ち合わせ 
▽キントーン(かんたんマップ)による災害VCの運営
―を「三種の神器」として挙げました。これからの災害に対応するための新たな発展的な方向です。

「協働」の必要性については、被災者に提供できる「支援の幅と可能性を広げる」ためだと説明しました。さまざまな分野で活動するボランティア団体・グループが平時に連携しておき、有事の際に「協働」することによって多様な支援が可能になることを明確にする内容でした。それぞれの平時の活動が役立つことを示唆し、参加者のモチベーションを喚起するものでした。

避難所運営シミュレーション「さすけなふる」に挑戦!

後半(午後)は、避難所運営シミュレーション「さすけなふる」にグループ毎に取り組みました。

最初に災害ボランティア委員会の鈴木義人氏が「さすけなふる」の概要を説明。避難所の役割は「いのちと人権を守ること」にあると強調しました。そのためには「人と人とがつながるしくみの構築が必要となりますが、それまでの日常のコミュニテイーが壊れてしまっているので「その場コミュニテイー」が必要になるとしました。

避難所では想定外のことがたくさん起きます。そのときに役立つのが「さすけなふる」です。

全体像をつかんだあと、災害ボランティア委員会の小池啓道氏から事例が出題され、どう対応したらよいか話し合いました。避難所にいる人数分の新聞が届いているが、一人でたくさん持って行ってしまう者がいたときどうするか、小麦アレルギーの子がいる家族に特別の調理や食料の提供をしていたところ、その対応の一部を見て「我慢すればよいのにわがままだ」とのクレームが出たときどうすればよいか…などです。

避難所での対応に正解はなく、臨機応変で迅速な判断が求められます。大切なことは「想像力」を養うことで、やってしまいがちなこととして「排除」「隔離」「無視」「我慢の強制」があるとの説明がされました。

災害当時を振り返った時、どんな団体・グループかわからず、連携や支援の受け入れができなかったとの反省が交流会準備のなかで出ていたようです。平時のつながりを強めておき、いざというときに有機的に連携できる状況がこの間の取り組みで整いつつあるものの、中心になっている人たちの話を聞くと、災害時にネットワークを活かす人的体制をどう構築するかという課題が残っているようです。

ネットワーク構築の推進の先頭に立っている人たちの多くは、それぞれフルタイムで働いており、災害時にどれだけ動けるかは未知数です。この支援ネットワークに賛同する人たちが、お互いの状況を理解し、どう協力し合って「協働」の力を発揮いくかを模索することが今後のテーマになりそうです。

取材・原稿 : 太田秋夫(ナガクルソーシャルライター/支援団体Hope Apple代表)