問いに向き合って気づき、つながりを編む月1回の「哲学対話」

「いっしょに対話してみませんか?」をキャッチフレーズに、若者を対象にした「哲学対話の日」が2025年4月21日、長野市のもんぜんぷら座3階にあるながの若者スクエア「ふらっと♭」で開かれました。

主催したながの若者スクエア「ふらっと♭」は、学生をはじめとした若者が、同世代同士の交流やまちづくり活動、自主活動などのために“ふらっと”自由に集まることができる場所です。2023年12月から月1回のペースで、「哲学対話の日」を設けています。

「哲学対話」は、特定のテーマや問いについてじっくり考えて、他の人の意見を聞きながら、さらに考えを深めるという対話の形式です。いままでに「学ぶ(勉強)ってなんだろう」「将来のためってなんだろう」「権利をみんなで考えてみよう」などをテーマにしてきました。

この日のテーマは「人と仲良くする必要ってある?」でした。

ファシリテーター(会議やワークショップの進行役として、参加者が意見を出しやすいようにサポートする人)の山口泰聖さん(信州大学大学院2年)は、「SNSで簡単に炎上したり、友だち同士でも監視のようなチェックをされたりする現代社会のなかで、自分が思ったことや考えたことを、否定されずに自由に話せる時間は、貴重な自己表現の機会だと思います。そうした機会になれるよう、安全な対話空間を心がけています」と話します。

若者たちが話し合った「仲良くするって、どういうこと?」

この日の参加者は学生など4名の若者。簡単な自己紹介ののち、「人と仲良くすること」というテーマについて、付箋に感じていることや、思っていることを書き出しました。

「対話」に入る前に山口さんは、この場で大事にしていることとして、①なにを言ってもいい、②ただし、相手を傷つけることは言わない、③発言はしなくてもいい、④自分の経験を頼りに考える、⑤話はまとまらなくていい、⑥考えは変わってもいい、⑦気になったことには質問しよう、を挙げました。

人の考えを聞きながら問いを深めていく哲学対話

「友だちと呼べる人に対しては、あえて“仲良くしよう”と意識しないかもしれない」
「学校や職場の人と仲良くすることと、プライベートの人間関係での“仲良さ”には違いがあるように思う」
「友だちになる相手って、運や偶然で決まることが多い。だとしたら、仲良くするって何のためなんだろう?」など

人との距離感について、さまざまな視点から意見が交わされました。

哲学対話で大事なのは「答えること」ではなく、「問いを深めること」。
他者の意見を聞くことの面白さや大切さ、自分の考えを伝える際のバランスの取り方に気づく声も聞かれました。
無理して人間関係を築くことでの【心の負担】や、異なる意見をどう人へ伝えるかといった【悩み】にも話題が及びました。

「人脈を広げたり、新しい視点を得たりするために、仲良くして良い関係を築くことは必要だと思う」という意見もあり、信頼・尊敬・誠実さといった人間関係で欠かせない要素についても考えが深まりました。

気づきを得て考えることを楽しむ

「振り返り」では、それぞれが対話を通して得た気づきや内面の変化が共有されました。
率直な思いを言葉にできる関係の大切さ、他者への関心、対話そのものの楽しさなど多くの感想が出されました。また、「似た悩みを持つ人がいることに安心した」という声も印象的でした。

取材を通して印象的だったのは、一人ひとりが自由に話しながら、互いを尊重し、理解し合おうとしていた姿勢です。

ながの若者スクエア「ふらっと♭」で月一回の「哲学対話」。

5月は、31日(土)17:00~18:00で、テーマは「努力は必ず報われるもの?」です。

勉強、部活、試験や仕事…、結果はイマイチということも多い「努力」。
そもそも「努力」ってなにを指すのか。
頑張ったか、頑張ってないかってどんな基準?

みんなでしゃべって考えます。


今後の「哲学対話」の取り組みは、ながの若者スクエアのサイトのイベント情報インスタグラムで。

取材・執筆/ ソーシャルライター 板本泰治(いたもとやすはる)