「定年後、どうしますか」藤澤善博

本屋の新書コーナーに立ち寄ると「定年後……」という本の多さに驚きます。最近のベストセラーも「定年後」を扱ったもので、ターゲットは特に男性のようです。還暦は「赤いちゃんちゃんこ」が定番ですが、今やそれを喜ぶ60歳は少ないでしょう。見た目も体力もまだまだ「ご隠居」ではないのです。

定年が65歳から70歳になろうとしています。国は自分の老後資金は自分で稼げと言わんばかりで、悠々自適とはいかないようです。60歳を過ぎると多くの職場で再雇用形態など以前と環境も変わり、働く意義も変化しているのではないでしょうか。何のために、いつまで働くのか—。

「定年後、どうしますか」藤澤善博
うんちくを語りながら知らない小路を街歩き


数年前、「長野県シニア大学」の学生約250人にアンケートを取りました。「定年後の不安は何ですか」の回答は、1位「健康」、2位「お金」、3位「生きがい」で、「退職後に困ったこと」では「時間の過ごし方」が1位でした。働いている間は感じなくても、いずれリタイアを迎える時にこんな不安を感じるのでしょうか。気力、体力が衰え始めるその時になって「さて、これからどうしよう?」では遅いのかもしれません。50歳を迎えたら定年後を意識することをお勧めします。

ゆる〜いおっさんの会(通称・ゆる会)は定年前後のおやじの集まりで発足から4年目です。メンバー30数名の半数がまだ働いています。

ゆる会には3つのルールがあります。「過去の肩書を口にしない」「お互いを批判しない」「男性限定」です。肩ひじ張らず、何事もゆるーくかかわっていこうがモットーです。メンバーがもつ経験や知識、ネットワークを活かして、自然散策、街歩き、農園で野菜づくり、ボランティアなど自発的な活動が生まれています。楽しみながらの活動が、時には誰かの役に立って感謝されることもあります。また、親の介護、自身の健康などの不安を共有でき安心の場にもなっています。

私の現役時代は家庭と職場の往復で、知っているようで知らない世界があることに気付きませんでした。働きながらも時間をつくって少し勇気を出して一歩踏み出すと違う世界が見えてきます。リタイア後が楽しみになってきます。ゆる会には自分の知らない世界をもった人たちが大勢います。

執筆: ゆる〜いおっさんの会
初出 : 長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2022年12月17日掲載