空き家バンクの建物を猫シェルターに。自治会が取り組む「地域猫活動」

場所は上田市上丸子。

一見すると、築年数を重ねたごく普通の民家といった外観の建物。中は地上2階と地下階の計3フロア、9部屋ある広い室内。各部屋をのぞくと、猫たちが思い思いに過ごしています。

猫シェルターの一室

ここは、NPO法人「一匹でも犬・ねこを救う会」(以下、救う会)の拠点兼、猫シェルター。

救う会は2009年に発足し、現在猫シェルターにしている一軒家を取得するために、2018年にNPO法人化。 その団体名のとおり、犬・猫が殺処分にならないように、一匹でも多く救いたいという気持ちをもった会員たちが活動しています。シェルターでのお世話や、譲渡会での対応など、会の活動を中心に行う正会員は20人弱、そのほかに犬・猫の預かりボランティアが10人ほどいます。保護がメインではないといいながら2021年度の保護頭数は犬92匹、猫107匹。今年度も同程度の保護活動をしています。

地域住民と協力して行う地域猫活動

救う会は、保健所に保護されたり、もとの飼い主が飼えなくなってしまった犬・猫を新しい里親につなぐ活動からスタートしました。

しかし、活動を続けていても、飼えなくなって飼育放棄される犬や猫が後を絶たず、代表を引き継いだ清原雅浩さんは、猫の保護や譲渡といった「下流」での対応ばかりではなく、「上流」での蛇口対策に力を入れてきたといいます。

清原さん(前列左)や猫の責任者の松井ルミさん(前列左から2番目)ら、一匹でも犬・ねこを救う会のメンバーたち

そのひとつが地域猫活動です。
地域猫活動は、飼い主がいない猫による様々なトラブルを解決するための対策です。

清原さんは「野良猫がいてはいけないわけではありません。問題は、野良猫に餌をやる人と猫に庭を汚される人などの間で住民同士のトラブルになってしまうこと。行政や地域住民、獣医師とボランティアが協働して、野良猫の不妊去勢手術をする。バースコントロール、蛇口対策が重要である」と、話します。

地域住民の理解と協力を得ながら、餌場に来る猫全頭を捕獲し、動物病院で不妊手術し、手術済みの目印で耳先にカットを入れて、元の場所に戻す。定められたルールのもと、耳カットのある猫たちを地域住民によって、引き続き管理をしていきます。

※上田市や上小地域の地域猫活動の取り組みは、上田市ホームページと県ホームページ内の上田保健福祉事務所のページに掲載されています。

他団体、住民、行政との連携を深める

救う会は、2022年8月、長野市で勉強会「『長野県の動物愛護』を考える」を開催。コロナの影響で、やむを得ず予定よりも半年遅れでの開催でしたが、県内各地のボランティア団体や行政がそれぞれの取り組みを発表し、意見交換をしました。

※勉強会はオンラインでも視聴できるよう、Facebookライブでも公開。動画はこちらから視聴できます。

勉強会を開催しようという契機になったのは、その1年ほど前に大きなニュースになった、犬を劣悪な環境で飼育していた松本市の繁殖業者の事件。業者は約1000匹という数の犬を飼育していたといわれていますが、問題が大きくなる前にバックヤードは取り壊されて跡形もなくなってしまい、犬たちは関係する業者により県外に移動されてしまいました。県内各地には犬の愛護団体がありますが、介入することができず、なんとか県内行政で保護できたのは20匹弱だったそうです。

「はがゆい、情けない、悔しい、そういう思いでした。こういう事態が起きたときに、ボランティア団体も迅速に対応し保護できるように、足元から連携をつくっていかなければなりません」

勉強会は、ボランティア団体同士の横のつながり、行政、住民とのつながり、それを足元からつくる第一歩にしたいとの思いで開きました。

各団体が得意とする分野をリスペクトしながらも共有したかったのは蛇口対策の重要性。

犬や猫の保護活動がいらない社会をつくるため、蛇口対策につながるしくみづくりを促すのが僕たちのミッションだと考えています

まずは連携の第一歩。今後も勉強会を開きたいということでした。

猫シェルターの玄関には、卒業していった猫たちの写真が貼られている

現在、救う会は月1回の譲渡会を開催。譲渡会への参加には予約が必要です。
救う会の公式サイトのトップページのお問い合わせフォームから、参加申し込みができます。そのほか、里親になりたい方、ボランティアになりたい方、すべて同じお問い合わせフォームから問い合わせができます。

「ペットショップに行けばすぐに犬や猫を売ってくれるのに、いろいろ規約があって僕たちから受け入れるのは、面倒だろうと思う。でも何度もつらい目に合わないように、終生飼育してくださる覚悟のある方に譲渡したいのです」という清原さん。お話を聞き、命を扱う活動の重さを感じさせられました。

執筆・撮影/ ソーシャルライター 松井明子

NPO法人一匹でも犬・ねこを救う会
問い合わせフォームはホームページ

事務局 inuneko_sukuukai@yahoo.co.jp