SDGsコラム38 新しい地域通貨の形

「奪うのではなく、与えるための通貨」と説明するのは、新井和宏さんが立ち上げたコミュニティ通貨「ユーモ」の共同代表で企画運営をする武井浩三さん。5月21日、オンラインで市民グループが開催したSDGsのトークセッションのゲストです。

スマートフォンでアプリをダウンロードして課金し、自気に入った加盟店にチップをつけて応援するしくみで、いわゆる地域通貨の一種です。「円から縁へ、交換から共感へ」をキャッチフレーズに、この通貨を通して会話と共感が生まれ、コミュニティを介して人の縁がつながって行くというもの。かつてあった紙の地域通貨とは違い、ICT技術を利用し、スマートフォンさえあれば全国どこでも簡単に使える画期的なシステムです。他にも上田市など全国で実証実験が行われている「まちのコイン」など、循環型社会を狙った第二の通貨として注目を浴びています。

武井さんは「空き家が社会課題なのに、毎年90万戸もの家が新築されている。経済をまわさないと成り立たない資本主義経済の仕組みに起因している」と指摘。仲間と畑で野菜を作って物々交換をしたり、竹を刈って流しそうめんをやるなど、子どもたちを巻き込みながら、コミュニティを作って活動。また平飼いの養鶏場や屋久島の宿などに支援をし、代わりに報酬を卵や宿泊と言うお金以外の形で得ていると言います。「法定通貨を介さないことも実は経済活動」とも話します。

「家事や子育てにお金を払って、夜遅くまで働き続け、更に不安を払拭するためにお金を貯めることが本当に健全なのかー。使わないと腐るという発想でコミュニティ通貨ユーモを考えた。ユーモは手にしたらすぐ使う仕組み」と説明します。

現在全国で加盟店が約400、ユーザーも6千人と増え続けています。「北海道のニセコで全住民に導入してもらい、実証実験が始まる予定」とのこと。

参加者からは「法定通貨1本ではなく、地域のコミュニティ内での通貨は自分たちで回すことが大事。円との交換もできるため、ベーシックインカムをこの通貨で実現することもできるのでは」と期待が寄せられました。

市内の加盟店はまだまだこれから。既存の概念にとらわれず、人を応援し支え合うための通貨を、ぜひ使ってみてはどうでしょう。

2023年5月30日長野市民新聞コラム掲載 執筆:寺澤順子(ナガクル編集デスク)
※お詫びと訂正/市民新聞掲載記事において武井さんのお名前に記載ミスがありました。心からお詫びもうしあげます。