#食料・生活用品200セット無料配布! 「長野きずな村」の活動と貧困の実態 
取材協力 反貧困ネット長野 長野きずな村実行委員会 執筆 ソーシャルライター大日方雅美
 2023.2.10


息が白くなるほど寒い師走の週末。12月17日の午前。長野市新田町にあるJAビル前のスペースで「年末ふれあい・たすけあい・きずな村」が開催された。
テントスペースには、この活動に賛同し集まったお米やりんごなどの食料と生活雑貨が並んでいた。事前申し込みと当日受付、あわせておよそ200セット分が生活に厳しさを感じている人々に無料で配られた。

リーマンショックの年、首都圏で始まった活動がきっかけで「長野にも必要な人がいるのでは?」という想いから2011年に「年末きずな村」がスタートした。年の瀬に、一瞬でもあたたかい食べ物を口にしてもらい、不安な気持ちや、悩みを外にだせる場所として、豚汁などの炊き出しや生活物資、食料品などの配布と同時に、弁護士による相談会などもおこなう。コロナ禍が始まった2020年からは夏にも開催し、今回で14回目だ。

きずな村運営委員会事務局の藤本ようこさんに「活動を行う上での課題は?」と質問すると、一瞬の間があった。

「一番はきずな村が不要になることが望ましいのですが、今は、続けていくことができるかどうか…私たちも余裕がなくなっていることも事実です。地域に暮らす人同士の良心によってのみ運営されている現状には限界があるんですよね…。でも必要な人のためにも、続けていかなくてはいけないですね…」

ある時には、「おまえらのやっていることは偽善だ。ここに来ている人間が本当に困っているのかどうか、わかったもんじゃない。こんなことは意味がないし、俺は嫌いだ!」と、テントのそばにわざわざ言いに来る人もいたそうだ。
「もちろん、いろいろな考えの方がいても当然ですが、それはやはり事実を知らないからなのでしょう。見た目にはわかりにくくても、実際に十分な食べ物が買えない、生活必需品が買えないという人はいるんです。貧困がこの社会に確実に広がっていることをどう伝え、知ってもらうかも大きな課題です」

先進国内で日本はワースト2という衝撃! 

 長引くコロナ禍での経済的打撃や、ウクライナ侵攻の影響による物価高、変わらぬ所得、とさまざまな状況から、多くの人が経済的な不安や厳しさを感じているものの、どれだけの日本人が「貧困」と聞いて自国のことだととらえられるだろうか?

 確かに日本では発展途上国に比べ「絶対的貧困」のケースが少ないことは明白だ。しかし「相対的貧困率」から見ると、先進国において日本はワースト2位。それだけ格差社会が広がっていることを表している。

「絶対的貧困」とは、国・地域の生活レベルとは無関係に、生きるうえで必要最低限の生活水準が満たされていない状態のこと。世界銀行では2015年時点で1日1.90ドル以下(約200円)で暮らす人の比率。

一方で、「相対的貧困率」とは、国全体の平均より低い所得で暮らす人の比率を指す。厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査」による相対的貧困の基準は世帯年収127万円とされ、相対的貧困率は15.7%に達している。つまり日本人口の6人に1人、約2,000万人が貧困ライン以下での生活を余儀なくされている。

引用 「2019年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省) 抜粋


日本の子どもの6人に1人が「貧困」 

 筆者がもっとも直視すべきだと考えるショッキングなデータは、子どもの貧困率だ。

             引用 内閣府 子ども若者白書(平成26年度)
 

 その原因のひとつは、離婚の増加にともなうひとり親世帯の貧困があげられる。ひとり親世帯の貧困率はなんと50%を超えている。その多くが非正規雇用労働者であり、平均収入の低さが際立つ。

 長引くコロナ禍に、ロシアのウクライナ侵攻という非常事態が生活困窮に拍車をかけていることは事実だが、それはあくまで厳しい現実に追い打ちをかける要因の一つであって、今の日本の貧困問題、子どもたちの貧困問題を語るとき、自助努力だけで解決せよというには限界があると思う。

 私たちはまず社会的構造の問題によって「貧困を余儀なくされている」というケースがある現実を、正しく知ることから始めなければならない。

 未来を生きる子どもたちが、生まれた環境に左右されずに将来の選択肢を広げられる社会にすることが大人としての緊急課題だろう。 



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