SDGsのゴール4では、「全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を保障し、生涯学習の機会を促進する」とあります。

県の調べで、2020年度に小学校で1365人、中学校で2437人の児童生徒が、30日以上欠席をしています。計3802人という数字は、コロナ禍だけを理由にはできません。5年前の16年度には2219人で、年々増加傾向にあります。一方で高校生の不登校は628人でここ5年ほど横ばいです。(図参照)

県ホームページより県内国公私立小・中・高674校への調査結果


義務教育が徹底している日本は、世界からはさして大きな問題とみられていません。統計の指標に違いはありますが、実は欧州では学校に行かないで離れてしまう若者たちが10%以上もいる国も数多くあるそうです。

清泉女学院大学のアカデミック講座として「欧州のセカンドチャンス教育から考える —日本の基礎教育保障の課題—」が4回にわたって開催されています。第1回は5月14日に北海道大学大学院教授の横井敏郎さんが、デンマークを中心としたセカンドチャンス教育について講義し、筆者もオンラインで受講しました。

2019年時点でデンマークに78校ある「生産学校」の取り組みを紹介。離学してしまった若者が、機械・大工・織物・調理・メディア・音楽などをワークショップ形式で、地域の講師とともに1年間実践的に学べる仕組みです。失業率対策としての側面が大きいと感じました。

SDGsにもあるように、デンマークの教育施策の根底には、だれでも質の高い教育を受ける機会をつくるという理念があるのです。大学まで学費が無料で、学生への給付金も手厚い代わりに、公的教育をちゃんと受ける人材重視の国家政策。また福祉の水準を保つためには若者たちの就業確保は必須。人口は600万人弱で、少子化も進んでいますから、教育保障は重要な位置を占めます。

一方、人口の多い日本では、不登校やニートの規模は想像以上に大きいのです。教育費用の個人負担が大きく、離学は子どもの貧困問題とも深く関係しています。NPOなどが学習支援を各地で行っていますが、運営資金確保に苦しんでいます。

北欧に習えとは言いませんが、今、先進国が少子化の中でどう政策を創って行くのか。国境を越えて情報共有し合う必要があると感じています。

2022年5月31日長野市民新聞コラム掲載 執筆:寺澤順子(ナガクル編集デスク)