NPOと福祉寮がコラボ!「人・物・食・心」をつなぐ「いのち」のプラットフォーム-長野市

 秋晴れのある日曜日、長野市新諏訪町の信濃福祉旭寮で「あさひまつり」が開催されました。

キッズダンスのパフォーマンスでスタートした会場は「元気とご縁」をキャッチフレーズに、カラフルなのぼり旗が立つ。「ひょうたんランプづくり」では予想を超える希望者に、急きょ机を増やすなど大盛況でした。綿あめやポップコーンのふるまいが行われ、バルーンアートを手に持つ小さな子どもたちや親子連れでにぎわっていました。

今回は、この「あさひまつり」を共催したNPO法人「ホットライン信州」を紹介します。


 

共食・食育でつなぐ子どもの居場所信州こども食堂
支え、助け合い、心と心が通う総合福祉拠点

NPO法人「NPOホットライン信州」の設立はおよそ10年前、2014年から法人として活動を開始しました。松本市に本部があり、長野県内4カ所に拠点事務所を設けています。24時間365日対応の無料相談、フードバンク活動、そして全県各地で開催しているこども食堂の拠点となる「信州こども食堂ネットワーク」の運営を行っています。現在「こども食堂」は県内で134カ所を超え、これまでになんと12万人が利用しています。


あさひ祭り会場のスタッフとして参加していた信州こども食堂運営委員長の篠原多緒さんに、話しをお聞きしました。

「小学生の時に行った『こども食堂』がとても楽しかったし、助けられたという想いがあります。“何かできることをお返ししたいね”という母との会話から、運営スタッフとして参加するようになりました。コロナ禍で社会全体が危機だからこそ『こども食堂』が必要にも関わらず、開催そのものが難しい面があり、もどかしいですね。コロナ禍以前では、たとえば、ただ食事を提供する場ではなく、異年齢の子どもたちみんなで助け合いながら、食器の配膳や片付けを行うことで自然に仲良くなれる場でもあったのですが、残念ながら今はできません。子どもたちに学ぶ楽しさを伝える学習支援も中止。これからは、途切れてしまった絆をもう一度、つなぎなおすことが私たちの役割だと思っています」

「こども食堂」食育指導担当の篠原修子さんによると、「こども食堂というと、以前はシングルマザーやその子どもたちのためというイメージが強かったと思います。でも現在は、老若男女どなたにとっても、ほっとできる大事な『居場所』。コロナ禍で、当たり前に顔を出せて何気ない話しをする場が奪われたことで、誰にも頼れないと苦しんでいる方、追い詰められたり孤独感が強くなっている方もいらっしゃいます。本当に必要な方に届いているのだろうか?気軽に足を運んでもらうためにできることはないだろうか?という点が緊急課題です」。

ますます複雑化し、課題は山積みだからこそ、協働で
セーフティネットの網目をカバーする社会

「あさひまつり」を主催する「社会福祉法人 信濃福祉」の理事長で、お祭り会場の救護施設「旭寮」の施設長である西村行弘さんに、「NPOホットライン信州」と共催する経緯などについて聞きしました。

「県福祉事業協会がパイプとなって、私たちが以前使用していた旧施設をフードバンクの倉庫として提供することから、ご縁ができました。40年近く続く『あさひまつり』ですが、今回初めてコラボ開催し、大成功!

この10月から信濃福祉旭寮で、子どもカフェ『おひさま』がプレオープンします。地域の方とのつながりの場としての『こども食堂』開催の目的と、本当に困った方々の居場所づくりの提供という想いを『NPOホットライン信州』と共有できました。これまでにない初めての試みですが、地域の新たな「居場所」として、取り組んでいきたいですね。

コロナ禍で社会的課題はより複雑さを増しています。が、いまこそ人的資源、物理的資源、時間や経験を重ね合わせ団体を超えて協力し合い、継続可能な形での支援を行うことで、本当に必要な人にサポートができるかもしれない、と思っています」

まずは 長野市内全小学校区でのこども食堂を目指す! ひとりも取りこぼさない 支援の仕組みづくりへ

ドラえもんTシャツで、フットワーク軽く飛び回る事務局長の傳田清さんに、NPOホットライン信州の今後についての話を聞きました。

「コロナ禍における会場確保は切実な問題ですね。感染拡大防止のためとはいえ、行政側ももう少し柔軟に対応できないかな、という想いもあります。物価高騰などからフードバンクの食材確保も困難。長引くコロナ禍で、これまでこども食堂の運営に意欲があった人たちでも、モチベーションの維持が難しくなってきました。

また、こども食堂に足を運べる人々だけではなく、制度的に本当に必要な方たちに、どう届けていくのか? という課題があります。学校や行政と連携し、より細やかにサポートを行うために、地域に根差したこども食堂の必要性を感じ、具体的な目標として長野市内の小学校学区すべてにこども食堂を増やすことを目指しています。

そして、SDGsの推進、貧困問題、食糧問題の対応策につながる『こども食堂』の取り組みへの理解と協力を行政・企業・市民に広げていきたいですね。既存の法律や仕組みの中では、法整備が追い付かず、行政や公助が十分でない現実に苦しんでいる人、困っている人は確実に増えています。守り切れなくなってしまっている人がすでに大勢いる厳しい状況が続く中、団体や組織を超えた取り組みを積極的に行っていくと同時に、公的施設を有効活用できるよう働きかけるなど、自治体への具体的かつ緊急性のある要望や提言も行っています。

さらに、児童養護施設出身の若者たちが、困窮した際に頼れる窓口を整えていく取り組みや、地元不動産企業との連携により、生活基盤となる『住居』の問題の解決策の模索など、あらたな取り組みも始まっています」


取材を終えて、NPOホットライン信州の活動は、深刻で複雑な問題もあきらめることなく、一人一人のメンバーが、人に寄り添う気持ちと支えあいをベースに様々な団体ともスクラムを組むことで、人的・物的制限をカバーしあい、「心と心が通い合う信州、社会全体で支えあい助け合える信州」への仕組みづくりという大切な役割を担っていると感じました。


 特定非営利活動法人 NPOホットライン信州
 公式ホームページ  http://hotline-shinshu.jimdo.com/
 無料電話相談    0120-914-994
 本部事務所:    〒399-0011松本市寿北5-4-28-1
 中野事務所:    383-0042中野市西条1089だがしやG

取材・執筆/ソーシャルライター 大日方雅美