SDGsコラム27 スウェーデンの学習権保障

「SDGsコラム26」に引き続き「質の高い教育を保障」を柱としたSDGsのゴール4に関連して、今回も清泉女学院大学のアカデミック講座「欧州のセカンドチャンス教育から考える —日本の基礎教育保障の課題—」の第2回目を受講して感じたことを書きます。

講師は信州大学の林寛平さんで「スウェーデンにおける生徒の学習権保障の仕組み」について。スウェーデンでの教員経験に基づく研究内容でした。

「子どもの権利条約4つの原則」長野県社会福祉協議会資料より

興味深かったのは、教室内の権力についての説明でした。生徒は教員を「先生」と呼ばず、名前で呼びます。教室内で先生が威圧的な態度を取ることはけしてありません。なぜ関係がフラットなのか—それは60年代の学生運動にさかのぼります。学級が崩壊し教員が被害をこうむり、一斉授業から個人学習形式にへと変容します。現在は、教員はチームで生徒のグループを受け持ち、教員同士の連携や交流を大切にします。

子どもたちがいかに効率的・効果的に学習できるか。そして居心地が良く、恐怖を感じない、安心していられるスペースにするのかが前提となって、学習権補償の仕組みが考えられています。

スウェーデンでは子どもの権利について学校でしっかり学んでいる。そこが日本と違う」と林さんは強調します。89年に国連で採択され、日本でも94年に批准された「子どもの権利条約」では、特に「子どもに関することが決められ、行われるときは、その子どもにとって、最も良いことは何かを第一に考える」としています。

スウェーデンでは奨学金や現金給付などが全員に配られ、返済不要。学校での教材、給食、文具なども全て無料です。高校に行かない20歳未満の全ての若者へのフォローアップは、自治体の若者に対する活動責任として支援や活動提供をしなければならないとしています。

一方で、就学義務は親ではなく子ども自身に課され、出席しないと給付が打ち切られる厳しい側面があります。保障を得られ、様々な権利も得られる代わりに、納税できる大人になるため、努力し責任を果たさなければならない。

スウェーデンは、人口規模も日本の10分の1程度で、少子化が進んでいます。一見、素晴らしく見えますが、若者にとって余白のない厳しい制度とも言えるのではと率直に感じました。

2022年6月28日長野市民新聞コラム掲載 執筆:寺澤順子(ナガクル編集デスク)