恒例の「どんど焼き」をすべての区で実施 復興に向けた足音響く(被災地長沼)

被災とコロナを乗り越えようとする住民の思いが、天高く冬の空に届きました。
恒例の「どんど焼き」が、被災地の長野市長沼地区4つの区全部で開催されました。主催は育成会です。

令和元年東日本台風(19号)による被災から3回目のお正月を迎え、甚大な被害が出た長野市長沼地区では、中断していた地域の恒例行事が少しずつ復活しつつあります。

「当たり前の日常」を取り戻し始める

大きな災害は住民の暮らしを壊し、生業を壊し、コミュニティーをも破壊します。それまで当たり前に行なわれていた祭りや諸行事ができなくなってしまいます。家屋の損壊や精神面でのダメージに、そうした事態が追い打ちをかけ、立ち上がるのが困難と感じるような思いにまでさせてしまいます。

被災から最初の1年は、地域の行事などは考える余裕がまったくありませんでした。あれから2年3か月が経過し、3回目の新年がやってきました。新たな気持ちで復興に立ち向かおうと、ついに育成会主催による「どんど焼き」が復活しました。長沼地区は大町、穂保、津野、赤沼の4つの区があります。そのすべてで実施できたのです。

被災から2年目の昨年は育成会の活動がまだ困難な状況でした。住民による復興団体「穂保希望のつどい実行委員会」が主催して、穂保区1か所で実施できただけでした。それが今年は、他の団体の協力も得て、すべての区で育成会が中心になって開催できたのは大きな前進でした。

「当たり前の日常」が被災によって一転し、被災住民に喪失感が生まれます。復興とは、そうした状況を乗り越えて、以前の「当たり前」を取り戻すことと言われます。そんな段階に、ようやくなってきたのです。

子どもたちにとって故郷の思いでづくり

1月9日、風はあるものの天気は晴れ。午後2時から3時にかけて、各区の「どんど焼き」の櫓(やぐら)に点火され、炎が勢いよく舞い上がりました。

赤沼区では、点火前に子どもたちが集合して写真を撮りました。こうして大切な思い出を刻みます。点火の大役を務めた小学6年生の女の子は「ちょっと緊張しました。今年は中学に進むので、勉強がんばりたいです」と話していました。子どもたちの元気な様子を区の役員の人たちが見守っていました。

赤沼地区のこどもたち。点火前に記念写真

家族で楽しむ ひととき

穂保区の会場には70人ほどの家族連れがお餅などを持参して、煙を避けながら焼いていました。「これを食べると風邪をひかないんだよね」。いまの時期、「コロナに感染しないように…」という願いもあったかもしれません。マシュマロを用意した子どもたちもいました。みんなの笑顔が明日への希望を示していました。育成会長は点火に先立ち、協力してくれた氏子や区の役員、消防団などに感謝を伝えるとともに、「コロナに気をつけて楽しんでください」と呼びかけました。

お餅やだんご、マシュマロを焼いて、「1年元気に過ごせますように」と祈る

成人式は2年分を挙行

地域の諸行事は、その地域の伝統を受け継ぐものです。コロナの感染拡大で集まることがままならぬ中、被災地ではコミュニティーをどう再生していくか模索しています。どんど焼き以外にも復活した動きがありました。

今年は、長沼仮支所で成人式を挙行することもできたのです。各神社の獅子も徐々に舞うことができるようになってきており、成人のみなさんをお祝いしました。昨年は成人式を実施できませんでした。今年は午前と午後に分けて、令和2年度と令和3年度の2年分を実施しました。

令和2年度成人式
令和3年度成人式
お祝いの獅子奉納

復興に向けて、長沼地区では住民が力を合わせて突き進む空気が着実に生まれています。住民自治協議会では、地域の人たちに特技を生かして「ごっしゃん」(先生)になってもらい、ふれあいの輪を広げていくことを構想しています。

「どんど焼き」や成人式挙行は全国各地で正月の恒例行事として実施されていますが、それは被災地長沼地にとって、特別の意味を持った動きなのです。

取材・執筆 太田秋夫(ナガクルソーシャルライター)