日本のコウノトリやトキが国土から消えてしまったのを知っていますか? 遺伝子の近い鳥を国外から入手し保護機関を作って、増やそうと努力しています。が、餌となる水生生物が水田や野山で減っているなどの理由から、なかなか育たないことがわかっています。生きとし生ける者はみなつながっているのです。
SDGsの目標15「陸の豊かさを守ろう」とありますが、特に中核となっているのは「生物多様性の損失を阻止する」ということです。
生物多様性には「山や川などの生態系の多様性」「生き物種の多様性」「遺伝子レベルの多様性」という3つのレベルがあります。地球上には3000万種の生物がいると予想され、年間4万種の生物が絶滅していると環境省のホームページに記載されています。森林や耕作放棄地の放置、河川工事、農薬散布など、人間の都合による様々な影響で、小さな生き物たちがどんどん姿を消してしまっています。
この課題は国連生物多様性条約締約国会議、通称COPが中心となって解決にあたっています。2010年に愛知県でCOP10が開催され、長期目標として「自然と共生する世界」とし、短期的にも効果的かつ緊急な行動実施がうたわれ、具体的な20の目標も策定されました。しかし、世界からは愛知目標が達成されなかったと酷評されています。
世界の人口は約78億人で増加中。国連開発計画によると、開発や温暖化などが原因で、毎年1300万ヘクタールの森林が失なわれています。ユネスコ製作の学校向けビデオの「生物多様性の保全を学ぶ」をユーチューブでみることができます。
自然の損失を失くし回復軌道にのせる「ネイチャーポジティブ」な社会を実現させるため、日本も行動を起こす必要があります。2022年4月開催予定のCOP15第2部では、30年までの目標が策定される予定です。
長野市周辺でも、低農薬や自然栽培を取り入れた農業を始めたり、ホタルやメダカなど小さな生き物を保存しようという個人や団体が努力を重ねています。「ながの環境パートナーシップ会議」は、行政やNPO、教育機関、企業が連携して、様々な側面から環境保全を進めています。自分にできることは何か、ぜひ調べてみてください。
2021年10月19日長野市民新聞コラム掲載 執筆:寺澤順子(ナガクル編集デスク)