寄稿「ゴミを適切にかたづける責任」を

(寄稿 中村 健/ソーシャルライター養成塾2020卒業生)

SDGsの開発目標(持続可能な社会・自然を2030年までに達成しようという国連が定めた目標)の12番目に、「つくる責任、つかう責任」があります。

私はそこに、「かたづける責任」を付け加えたいと思い活動しています。 作って、使ったものは、片付けなくてならなのは当然のことだと考えるからです。「かたづける」と言っても、目に見えないようにするだけでいいのでしょうか?

「ゴミの片付け」について考えてみましょう。ゴミにも様々あります。 家庭から日常的に出るゴミ。飲食店や旅館・ホテルなどの宿泊施設から出るゴミもあります。そして、ものを生産する工場などから排出される大量のゴミなどがあります。

ここで「かたづけるゴミ」の具体例として、庭木などの手入れで出た「木樹の枝葉のゴミ」に注目してみましょう。 私自身の職業は庭師です。長年、仕事柄出るゴミをどのように処理するかが、大きな課題です。

実は近年、庭師の仕事として依頼される作業に、庭自体を新しく造る造園はほとんどありません。庭の持ち主の高齢化が進み、「高い庭木を切ってかたづけて欲しい」という依頼が増えています。

近年増える依頼に対応するため、庭木の手入れで出た大量のゴミを、どう片付けるかが頭痛の種です。以前は畑に運んで燃やしていた時代もあります。 しかし、一般的には、大量に出たゴミは、清掃センターなどのゴミ処理場に持っていって、有料で引き取ってもらうというのが普通です。 しかし、環境に配慮したばあい、そこには落とし穴があります。畑で燃やすにしても、ゴミの受け入れ施設に持って行くにしても、処理の段階で、CO2が出てしまうのです。

庭木のゴミは燃やさず埋めて土に還す

ここで、提案したいのが、プラスチックなどの自然に返らないものは別として、ゴミを地面に穴を掘って埋めるというやり方です。実際に、自身の敷地内にバックホーで穴を掘り、そこに、仕事の現場で出た枝葉を埋めています。こうすることによって、庭木のゴミは、人目には見えなくなる上に、地中で微生物によって分解され、土に戻っていきます。ゴミ処理(分解)を、自然界の循環に任せるのです。

NPOなどの団体が、すでに生ゴミをコンポスト入れて腐らせて、堆肥にするという活動を行なったり、行政と協働で市民への普及活動を進めたりしています。庭木についても、それと同じ原理を活用したらどうでしょうか。

庭木から出たゴミはもともと自然のものです。穴を掘って埋めることで、目にみえなくなり、地中で数年眠った後、新しい植物を育てる栄養のある土として生き還ります。そして、季節ごとに私達の目や心を楽しませてくれる木樹や草花の芽ともなるのです。

筆者は先日「庭師から学ぶワークショップ」3回シリーズを松本市内で開催しました。第3回では、参加者と庭木の手入れから始まり片付けまでの学びと実践を通して、SDGsの目的である「持続可能な社会・自然環境づくり」について考え、一人も残さずみんなが幸せになる社会について語り合いました。

講座のスタッフとして参加した千葉洋子さんは、「SDGsがぐんと身近になりました。第3回は特にスケールの大きな植栽の片付けについて学びました。自然物である植物でさえも放っておくだけでは循環しないのです。人工物なら尚更ですね」との感想をいただきました。

庭木の手入れで出たゴミ(細かな枝葉や太い丸太など)は、庭師の屋敷に運び込まれ、バックホーで穴を掘って片付けます

日常生活でできることからSDGsに貢献

市民一人一人が、「ゴミを適切に片付ける」という日常的にできることを通して、SDGsの目標の1つ「つくる責任、使う責任」に、「かたづける責任」を加えてみたらどうでしょうか。

一見、SDGsは地球規模で、具体的には目に見えづらい目標だと感じます。ですが、日常生活の中で「ゴミを適切にかたづける」という行為を通して、限りある地球の自然を大切にすると同時に、私達の心も豊かにしてくれるのではないでしょうか。そして、「ゴミを適切にかたづける」という日常的なことを通して、「かたづける」という責任意識を持ちたいものです。

《筆者中村健プロフィール》―9つ顔を持つ男―
①庭師(25年の経験)②ファシリテーター(繋ぎ役、力引き出し役)③ワークショップデザイナー④SDGs翻訳家(SDGsを分かり易く解説する人)⑤ツリーハウス「修復の家」管理人⑥「子どもの権利とSDGsについて語る会」代表⑦英語講師⑧にわか俳諧師(季節毎の自然を俳句・川柳で語る)⑨やまびこネット(地域づくりネットワーク長野県協議会)松本支部長・会長