2023年10月21日(土)、長野市新田町もんぜんぷら座3階に若者が集まりやすい新たな「居場所」が誕生しました。
この居場所づくりに参加した学生たちと、長野市の荻原健司市長、住民自治協議会や長野県NPOセンター関係者など若者を見守る大人たち、合わせて約40名が参加するオープニングセレモニーが開かれました。
学生たちが居場所の名称を書いた黒板に幕がかけられ、発表の時を待ちます。
いよいよ序幕です。
名称は “ながの若者スクエア「ふらっと♭」”
名称は、ワークショップで学生たちが候補を出し合って、最後は投票で決めたもの。
「ふらっと立ち寄れる場所」という意味を込めて、それに音楽記号の「♭」を付けたそうです。
仲間と歩んだ5カ月の軌跡
当初「(仮称)若者スクゥエア」と呼ばれていた長野市が主催のプロジェクトで、もんぜんぷら座3Fの「市民協働サポートセンターまんまる」を運営するNPO法人長野県NPOセンターが立ち上げから運営を担うことになりました。
日頃から、「ながの地域まるごとキャンパス」や「ユースリーチ」、「学びの拠点Fourth Place」と、若者たちの活動や居場所を推進してきた同センター。立ち上げにあたって、学生をはじめとした若者の有志に声をかけ、企画会議を実施してきました。まず最初の企画会議が開かれたのは2023年6月のこと。
そして、開催されたワークショップの回数は20回、検討には総勢45名の若者が携わりました。
最初のワークショップは、文字通りゼロからの出発。
6月には、居場所とする場所も活用方法もあり方も考えがなく、若者スクエア「ふらっと♭」の影も形もありませんでした。
7月には、もんぜんぷら座内の空きスペースを視察して歩き、アクセスの良さや使いやすさなどを考えて、どこに居場所をつくるかを決めました。
8月には、使い方や内装の詳細を検討。9月に、内装作業(DIY)をはじめました。
そして10月、名称の候補に対して、一般の人を含めた投票をお願いし、ようやく若者スクエア「ふらっと♭」が誕生したのです。
ながの若者スクエア「ふらっと♭」の役割
この施設には次の五つの役割があります。
- 集まる
- 仲間づくり
- アイデア発想
- アイデア実現
- 人が人を呼ぶ
若者のアイデアが実現して、さらに仲間を呼んでいく。
このサイクルにより若者どうしのつながりが強まり、時には大人とのつながりが強くなっていく。
そしてまた新しいアイデアが生まれていく…。
このサイクルを回すための構想は、すでにあるようです。
- 人が集まるためのイベントの企画・運営
- 仲間づくりのための掲示板
- アイデア発想をサポートする専属コーディネーター
- 人が人を呼ぶための発信(HP・Instagram)
出会いや発想は偶発的なもの。
しかし、居場所を運営する仕組みがなければ、やがて若者は離れていくかもしれません。
ワークショップに参加した若者はハード面としての居場所だけでなく、ソフト面としての居場所のあり方もきちんと検討していたのです。
「新しいことをやりたい」という刺激になれば
オープニングレセレモニーがはじまる前、本番に向けて準備をしている学生の想いを少しだけ聞きました。
ーーワークショップに参加してみてどうでしたか?
山口さん: 6月に開催された1回目のワークショップからずっと参加していました。普段は同じ学部やゼミの友だとしか関わる機会がないため、高校生から社会人までさまざまな人に出会えたことは、私にとって本当に貴重な経験になりましたね。
ワークショップではグループに分かれて討論して意見をまとめる場面がありました。年下のメンバーも多くいたため、自分の意見を言うだけでなく「どうやってみんなの意見をまとめようか?」と頭を働かせていました。
ーーこの場所をどのように活用してみたいですか?
山口さん: 個人的には同世代の人たちとゆっくり話したいと思っています。
ただ、この場所には幅広い年齢層の若者が集まります。私は大学4年生ですが、年下の人は「新しいことをやりたい」と思える刺激を受け取ってほしいですね。そして年上の人は、ぜひ社会人としての経験を学生の人に伝えてあげてほしいと思っています。
ふらっと一人でも、友だちも連れて来たい
ーーワークショップに参加してみてどうでしたか?
山口さん: 参加のきっかけは学校の夏休みの課題でした。「自分の好きなボランティアをする」という課題でしたが、その中に「(仮称)若者スクゥエア」企画があったため、面白そうだと思って参加しました。
参加してみると、普段は関わらない年齢の人もいたので、はじめは緊張していたことを今でも覚えています。
でも、ワークショップに参加していた皆さんがやさしかったので、とても話しやすかったですね。
ーーこの場所をどのように活用してみたいですか?
山口さん: たまに遊びに来て、それが交流のきっかけになればいいなと思います。この場所の良いところは、ふらっと一人でも来やすいところと、友だちを連れて来たいと思えるところですね。
これまでみんなで力を合わせてこの場を作ってきました。ワークショップとしてはもう終わるので、寂しく感じますね。
市長へ伝えた学生たちの想いと考え
オープニングセレモニーで名称を発表した後、若者と市長のトークセッションが行われました。
学生代表はワークショップに参加していた5名。この場所に込めた想いなどを話しました。
「この居場所を自分たちでつくり上げた感想や印象深かったこと」を聞かれた学生たち。
ワークショップは自由な発想で、さまざまなな意見が出て、おもしろかったようです。
床にシートを貼ったり、壁にイラストを描くのは楽しくもあり、やりがいがあったとのこと。
また、名称を描いた黒板アートは、文化祭での経験が役に立ったそうです。
迷ったのは「壁の撤去」。壁を取り払ってオープンにするか、一部でも壁を残すかなど慎重な議論があって「本気で悩んだ」そうです。
「今後この場所でやっていきたいこと」を聞かれた学生。
たくさん人と関わりたい、若者だけでなくもっと幅広い年齢の人に来てほしい。本を置いて貸し借りできるようにしたいなど、さまざまな意見が出ました。
荻原市長もこの場所の活用方法について言及。
「若い人が何を考えているのか、直に話して知りたい」とのこと。若者と、上の世代の人たちの交流にも活用できる可能性を示唆していました。
また、「長野市の未来について」質問された学生。
自然の豊かさと人の温かさを伝えたい。県外や海外の人たちが旅行に来てくれたらうれしい。きれいな紅葉や雪化粧が見られる場所に便利にアクセスできれば、という意見が出ていました。
世界中の色々な場所へ行って、色々な人と出会ってください
荻原市長が学生たちへ、自身の経験から感じたことを話しました。
自然の豊かさを感じて暮らしてほしい。そして、世界中の色々な場所へ行って、色々な人に出会ってほしいこと。そうすれば、長野市の良さがより分かるとのことでした。
長野市の未来をイメージできた時間
筆者は普段、高校生や大学生と関わる機会はほとんどありませんが、この取材を通して一番感じたことは、若者の”頼もしさ”でした。
何もないところから企画を考え、それを形にしていく。一人でできることは限られているため、多くの仲間の意見を聞く。ただ、聞けば聞くほど良い意見が出て、いざまとめるときに苦労したのだと思います。しかし、会場にいた若者の顔には、むしろ力強さと頼もしさを感じました。
グローバル化が進み、多様な価値観が顕在化する時代。今後「正解のない問題」を解決しなくてはならない場面が増えることでしょう。そのような時、きっと今回の成功経験が役立つと思います。
長野市の未来は、多くの人を巻き込んで若者たちが創ってくれると信じています。そのためには、私たち大人もこれまでの経験を活かして若者をサポートしていく必要があります。
きっと、ながの若者スクエア「ふらっと♭」は、そのハブとなるでしょう。
ながの若者スクエア「ふらっと♭」
HP :https://www.wakamonosq.com/
Instagram:https://www.instagram.com/wakamonosq/
E-mail :nagano@wakamonosq.com
<取材・執筆> ソーシャルライター 廣石 健悟