小沼さんが珈琲ボランティアをはじめた経緯
ボランティアと一口に言っても高齢者や障がい者の支援、災害現場での支援など種類はさまざま。「珈琲を淹れるボランティア」もあります。東信地域で活動する「珈琲ボランティア連絡協議会」。
珈琲ボランティア連絡協議会の代表を務める小沼 史弥(おぬま ふみや)さん。
そもそも、なぜ小沼さんは珈琲ボランティアをはじめたのでしょうか?話を聞きました。
ボランティアと出会った中学生
――これまでの小沼さんのボランティア歴を教えてください。
中学3年生のころからボランティアをはじめたので、今年(2023年)で約16年になります。
――ボランティアをはじめたきっかけは何だったのですか?
軽井沢町社会福祉協議会が開催している「サマーチャレンジボランティア」に参加したのがきっかけです。サマーチャレンジボランティアとは夏休みを使って体験するボランティア活動です。さっそく、両親に相談したところ「行ってきていいよ」と言われたので参加しました。
ボランティアの内容は、軽井沢で珈琲やうどんを提供する軽食喫茶でした。提供するのが障がい者、お客さんが障がい者または健常者で、提供する側のサポートとして参加しました。
サマーチャレンジボランティアでは、ボランティアに参加するのは3日間。でも、日に日にボランティア活動が楽しくなり、受け入れ先の責任者に許可をもらったうえで夏休みのほとんどをボランティア活動に使いました。
サマーチャレンジボランティアそのものは夏休みが終わればおしまいです。でも、またボランティア活動をしたかった私は、夏休みが明けても土日祝日など中学校が休みのタイミングを狙ってはボランティアに参加していたのです。
少しずつ広がった活動がやがて珈琲ボランティアへ
――高校生以降はどのような活動をしたのですか?
さまざまなボランティアに参加していると、知り合いも増えました。参加したボランティア先などで別のボランティアのお誘いを受けることもあり、軽井沢町ボランティアセンター主催のイベントにも参加するようになりました。
――珈琲ボランティアをはじめたきっかけは何だったのですか?
もともと個人的にコーヒーが好きでした。そんな私に佐久市ボランティアセンターの方が声をかけてきたのです。「特別養護老人ホームでコーヒーを淹れてみないか?」と。
ただ、私は仕事(本業)をしながらボランティアをしているため、とてもじゃないけど一人で対応できるとは思いませんでした。そこで仲間を募ったところ、6人が集まってくれたのです。
――これまで何回ほどコーヒーボランティアを開催されたのですか?
2019年は39件でしたが、2020年はコロナの影響があり6件しかできませんでした。2023年はコロナが5類に移行したこともあり、件数を増やしていきたいと思っています。
――コーヒーボランティアはどのような場所で開催しているのですか?
これまでは特別養護老人ホームがメインでしたが、病院からも依頼がくるようになりました。また、イベントへの参加も精力的に行っています。2023年6月18日に軽井沢町で開催される「ちいき活動みほん市」への参加が決まっています。
イベントレポート「ちいき活動みほん市」で珈琲を振る舞う
「ちいき活動みほん市」は軽井沢町や周辺自治体(東信地域)で活動するボランティア団体や市民団体の発表の場。放射線状に34のパネル展示が並ぶ中心で、小沼さんたちは珈琲を振る舞いました。筆者もイベントを取材しました。
イベントがはじまると、中心のテーブルは多くの方で賑わっていました。
珈琲を振る舞うまでの準備
珈琲を振る舞うまでにはいろいろと手順がありますので、一つずつ紹介していきます。
はじめに豆をコーヒーミルで挽きます。(動画でお楽しみください)
豆を挽くときの、乾いた音が響いています。
挽いた豆をフィルターに入れて、お湯を注ぎます。(動画でお楽しみください)
お湯を入れると、抽出された珈琲が少しずつ注がれていきます。もちろん現地では香ばしい香りが漂っていました。
飲む人を笑顔にする珈琲
淹れた珈琲はイベントの来場者に振る舞われました。飲んだ人の笑顔からも美味しさと満足度が伝わります。
筆者も一杯飲みましたが、普段飲んでいる珈琲より苦味がやさしく、でも深い味わいを楽しめました。
この日に振る舞われた珈琲はこちらです。
小沼さんがオリジナルブレンドした珈琲豆だそうです。説明書きの通り後味スッキリで飲みやすく、用意した豆はすべて珈琲になり多くの人を喜ばせました。
今後の活動〜より多くの人に珈琲を〜
――珈琲ボランティアの新しい活動があるようですね。
小諸市動物園で「coffeeZoo」と題した珈琲ボランティアも行っています。通常は施設側から依頼を受けて珈琲を淹れますが、coffeeZooは私たちからはたらきかけて実施しているイベントです。より多くの人に珈琲ボランティアの活動を知ってもらうためにはじめました。簡単な椅子やテーブルもありますので、動物を見ながらゆっくり珈琲を飲めますよ。
――coffeeZooをはじめるきっかけは何だったのですか?
コロナが落ち着いてきたため、珈琲ボランティアを本格的に再開しようと思いましたがコロナ以前とメンバーが大幅に入れ替わっていました。また、私も珈琲を淹れる機会が減っていました。そのため、各メンバーとのコミュニケーションや私自身が珈琲を淹れる機会を増やしたくてcoffeeZooをはじめました。
――coffeeZooでは面白い方法でお湯を沸かしているようですね。
ソーラークッカーといいまして、太陽光を利用してお湯を沸かす器具を使っています。衛星アンテナのようなお盆状の形をしており、中央にポットを置いて太陽の方に向けておくとお湯が沸きます。ソーラークッカーはある方から借りているものです。なかなか長距離の持ち運びができるものでもありませんので、お借りしている場所から近いため小諸市動物園で開催しています。
――これまで、お客さんからもらったうれしい言葉はありますか?
特別養護老人ホームなどへ行ったときには「また来てほしい」「おいしかった」など、何気ない言葉をもらえるのがうれしいですね。coffeeZooでは動物を見ながらゆっくりコーヒーを味わっている方もいます。言葉はなくても伝わってくるものがありますね。
珈琲ボランティアの活動を取材して
長野県はボランティアに興味のある人が多い県。総務省の調査(※1)によると、長野県は2016年における「10歳以上の人口に占める過去1年間にボランティア活動を行った人の割合」は32.3%で、全国平均を4ポイント以上、上回っていました。
長野県は、滋賀県(33.9%)、岐阜県(33.4%)、島根県(33.1%)、熊本県(32.7%)、佐賀県(32.6%)、鹿児島県(32.6%)、富山県(32.4%)に次いで8番目に多い県なのです(全国平均27.9%)。
(※1)総務省統計局「社会生活統計指標-都道府県の指標-2023」
これからボランティアをはじめようとしている人、ボランティアに興味があっても一歩踏み出せずにいる人などに、知ってもらいたい活動です。珈琲を淹れる。日常の何気ない行動が、これほど多くの人を喜ばせるのかと驚いたのが筆者の正直な気持ちです。
今回coffeeZooの取材へは行けませんでしたが、小沼さんの話や「ちいき活動みほん市」の来場者の様子を見ていると、同様に多くの人が喜んでいる姿が目に浮かびます。
「ボランティア」と聞くと、なにか改まって素晴らしいことをしなくてはいけないと思うかもしれません。しかし、自分が苦労なくできること、普段何気なくしていることで多くの人に喜んでもらえることもあると思います。
ほんの少しの勇気で構いません。小沼さんのように一歩踏み出して、いろいろな人に喜ばれる活動をしてみませんか?
<取材・執筆> ソーシャルライター 廣石健悟
「珈琲ボランティア連絡協議会 お問い合わせ先」
■代表者:小沼 史弥(おぬま ふみや)
■メール:fukuboracoffeesoudan2019@yahoo.co.jp