映画監督とフリースクールが飯綱町産のリンゴとシードルのCMを制作!

旧牟礼西小学校をリノベーションして活用している施設「いいづなコネクトWEST」(長野県飯綱町川上)を拠点に活動しているフリースクール「OZ Field」(通称:OZ)は6月6日・7日の2日間、総合的な活動の一環で飯綱町内にあるリンゴ農園とリンゴのお酒「シードル」の醸造所を訪ね、それぞれのCM制作のための撮影会をしました。

全ての子どもの個性をありのままに尊重して育てるフリースクール

OZは現在15人の小中学生が在籍し、OZから巣立っていった高校生も活動を共にすることがあります。子どもたちは飯綱町内だけでなく長野市、信濃町、中野市、山ノ内町と、幅広いエリアから通っています。

信濃町のNPO法人ライフワーク・レインボーが運営し、OZの名称は児童文学の「オズの魔法使い」が由来。さまざまな個性を十分に発揮し、ありのままの自分が尊重される世界への願いが込められています。

いいづなコネクトWEST

理事長の出浦洋子さんは、発達障がいの息子を育てながら、母親仲間と障がいのある子の親の会の活動や不登校の子どもの居場所支援を行ってきました。2019年にNPO法人の活動をスタートし、障がいがあり一般企業で働くことが難しい子どもたちにも就労の機会をつくろうと、地元企業と連携して、仕事づくりの事業をしています。フリースクール事業は、学校とは異なる学びの場の選択肢をつくろうと、2021年から始めました。

「ここは、子どもたちをいずれ学校に帰らせることが目的ではなく、親、学校、OZの三者が連携して共に子どもを育てるための場所です」(出浦さん)

映像の出来栄えよりも、制作を通して「考えること」を楽しむ

日々の活動は、子ども一人ひとりに合わせたカリキュラムで行います。今回行われた撮影会のように、全体で行う活動もありますが、決して無理強いはしません。

撮影のために訪れたのは飯綱町内の倉井地区の「一里山農園」と、赤塩地区の旧三水第二小学校の校舎を活用した施設「いいづなコネクトEAST」の中にある「林檎学校醸造所」。インタビューは両方でするも良し、片方だけでも良し、どこの映像を使うも使わないも、子どもたちが自ら構成を考えて、撮影を進めました。

OZでは1年目から映像制作の活動を毎週行ってきました。日常の体験を撮影して編集し表現し、半年ごとに親が参加できる映像発表会で、完成作品を発表します。

映画監督の山﨑達璽さん(神奈川県)に月2回のオンライン指導を受ける中で、映像の企画、撮影、編集の進捗を一緒に確認し合います。 今回は、山﨑監督と共に映像合宿として2日間を過ごし、地域に飛び出して、地域で活躍されている方々と交わって活動するという初めての試みでした。

撮影会に出発する前にOZ でインタビューの練習をする子どもたち

山﨑さんは小学生から大学生、専門学校生など、子どもへの映像制作を通した教育活動に20年以上携わってきました。

「どういう意図、目的、構成で作るのか、誰に何を見せたいのかというものづくりの思考を重視して、映像制作を進めます。最終的な出来栄えよりも、思考して作れたかどうか。多くの子どもたちにとって興味関心のある映像制作を通して、考えること自体が楽しくなるといいと思って、子どもたちに関わっています。体系立てて指導する中で、視る視点、作る視点、客観的視点を持った作品を作れるよう、子どもたちは成長しています」(山﨑さん)

飯綱町特産のリンゴに関わる生産者を訪ねてのインタビュー

この日、最初に訪れた「一里山農園」は、手間をかけながらも減農薬でリンゴを栽培している、小野久則さんと悦子さん夫妻の農園。子どもたちは緊張した様子で、お二人にインタビューしていました。ほかにも、農園内で実っているリンゴや全体の景色など、それぞれに撮影を進めました。

園主の小野久則さん(右)と妻の悦子さん

小野久則さんは「おいしかったと言っていただけるリンゴづくりを心掛けているので、お客様からのその一言が一番うれしい」と、子どもたちからの質問に答えます。

「どんな質問が来るかなと考えていました。フリースクールの子どもたちに私ができる範囲で、できることをやってあげたいです」(小野久則さん)

山﨑さん(右)のアドバイスを受けながら撮影

場所を変えて次に訪れた「林檎学校醸造所」は、地元産のリンゴを使ったシードルを製造販売する醸造所。リンゴの栽培品種が50種類を超える飯綱町の特徴を生かし、シードルの種類は15種類ほどあります。

ガラス張りの醸造所で仕事中だった、北信五岳シールドリー株式会社代表取締役・CEOの小野司さんにインタビューしました。

「コミュニケーションの大切さは社会に出てわかることです。教科の学習では学べないことを、今回のような体験で学ぶことは大事なことだと思います」(小野司さん)

OZでは、中学生の職場体験学習の一環として、林檎学校醸造所のシードル瓶へのラベル貼りを今年5月から体験しています。

「商品に関わる責任感を感じていただけるといいと思います」と小野司さん

出浦さんは「異年齢の関わりの中で、子どもたちは年下の子たちに『昨日の自分』を見て、年上の子たちに『明日の自分』を見ます。いろいろな交わりをすることでコミュニケーション、社会性、自立性を学ぶ。そういうことが大事だと考えています」と話します。

映像制作を始め、日々の活動を通して、子ども同士だけでなく、山﨑さんのような映像制作の専門家であったり、地域に暮らし働くさまざまな年代の大人と関わり、成長に必要な実体験を積み重ねます。

一人ひとり、興味・関心が違い学びたいことも違う子どもたち、誰もが学ぶことを楽しめるように。学校だけではない学びの選択肢の豊さが必要だと感じます。

<取材・執筆>ソーシャルライター 松井 明子

フリースクール OZ Field

所在地:いいづなコネクトWEST-104(飯綱町川上1535)

連作先:info@oz-field.com