「ヨガで子どもたちを前向きに」山口 有佐

子ども向けヨガを専門に伝えて13年。「次の授業で手を挙げる勇気が出た!」「本当はイライラしていた。自分を落ち着かせるのにいい」「心の中にあった変な黒いものが消えてスッキリした」など子どもたちから感想をもらいます。始めた当初は1人2人でした。子どもたちに認められ、ここまでヨガを伝え続けてこられたというのが正直なところです。




学校の体育館でヨガを体験する小学生

2022年度より市内の小中学校へ出向き、毎月1000人近くの子どもたちへ伝えています。欧米では20年以上前から学力向上やいじめ予防に学校でヨガが活用されていると知り、「日本の子どもたちにも届けたい」と思ったのがきっかけでした。

ヨガはフィットネスや柔軟性、美容の印象が色濃いですが、本来の目的は自分を俯瞰(ふかん)し、心身ともに健康的に生きる力や幸福感を養うことにあります。私はヨガの特徴を、お互いさまの精神やありがたさ、関係性に気づきを向けられる力、心にゆとりを持ち続けられるバランス力だと考えます。自分でも気づかないような身体の歪みや不健康な状態と比較的短時間で向き合いやすいのも特徴です。また、特別な道具や場所を問わないことなどから、生涯にわたって心身の健康を維持するための身近な技法だという魅力もあります。

ヨガは日常生活の中で行わない動きをわざわざ行いますが、子どもたちは「楽しかった!」「またやりたい!」と言います。一度保育園で親子ヨガを経験した子が小学5年生になって再会した時です。「あの時間がとてもよかった。今でもゲームをやりすぎた時とかに、ヨガの呼吸法をやったり、体を動かしたりしているよ」と言うのです。他の競技と違って、勝ち負けや優劣の評価がないところも良いようです。遊んだり、体を休めたりする時間も怠けているわけでもなく、「ちょっと立ち止まって、いろんな自分を抱きしめよう」と接します。

「本当はね、朝お母さんとケンカして気分良くなかったけど、上手くできるような気がする」など、胸の内を教えてくれる子もいます。不器用さの中に豊かさがあれば自分を抱きしめて前を見ていけるものだと信じ、子どもたちの活力へつながることを願って活動していきます。

執筆: 子どもたちへヨガを伝える会ながの代表
初出 : 長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2022年7月16日掲載