子どもヨガを広げる母親グループの活動 学校の授業でも採用に

小中学生の中にヨガが静かに広がっています。コロナ感染流行の情勢も後押しをして、長野市では授業として取り入れる動きも出てきました。「子どもヨガ」を普及しているのは、その効果を認識した母親たちです。

放課後の子どもたちにヨガを伝える

長野市で小中学生にヨガを伝えているのは「子どものための出張ヨガ教室 えがおkids」(山口有佐代表)です。同会はこれまで、児童館や子どもプラザで放課後の子どもたちにヨガを教えてきました。放課後子ども総合プランアドバイザー制度を活用したもので、市内のさまざまな学校へ出向いてきました。

「子どもヨガ」のベースになっているのはYogaEd(ヨガエド)で、これはアメリカ・ロサンゼルスで貧困や暴力で苦しむ子どもたちを救うために私立学校のプログラムとして生まれたものです。同会によると、日本での指導者はまだ少ないものの、アメリカやカナダなど諸外国では小中高校の体育授業等に取り入れられているそうです。

ヨガをやってみた子どもたちから「イライラしなくなった」「いやなことがあったとき落ち着けそう」「自然に心がリフレッシュして楽しくなった」などの感想が寄せられたことから、児童館の館長やPTAなど教育現場の人たちにヨガへの理解が広がっていきました。

長野市の小中学校でヨガが授業に

こうした動きを背景に2022年度、長野市の「体力向上グッド!プラン」の事業として小中学校22校の授業に取り入れられることになりました。それぞれの学校の計画に基づいて実施。体育の授業だったり、総合学習のメニューだったりで、45分の授業として位置付けられます。クラス単位または学年単位となる場合もあります。

長野市教育委員会が取り組むこの事業は3か年計画で、2022年度は2年目。昨年度は共和小学校(4回)と徳間小学校(3回)の2校で実施されました。今年度は、より多くの学校での実施という形になりました。

コロナ禍で児童生徒の部活動や遊びが制約され、体力が低下していると言われています。長野県の児童・生徒は、からだを動かす時間に関連する項目が他の都道府県に比べて少ないという調査結果も出ており(長野県教育委員会のホームページ参照)、体力低下への対策は長野市のみならず長野県教育委員会としても課題になっています。こうしたことから長野市でも「体力向上グッド!プラン」の事業が進められています。

ヨガは勝ち負けがなく運動が苦手な子も自分のペースで取り組めること、スポーツのように道具や環境を整える必要がないこと、それにマットを一定間隔に敷いてその上で行なうので、コロナ禍においてソーシャルディスタンスが確実に取れることから教育現場で採用されやすかったようです。

ヨガの授業

ヨガの理解を促すために

「子どものための出張ヨガ教室 えがおkids」は飯綱高原にある「森のヨガスタジオ PLAVA」を拠点に活動しており、学校現場だけでなく、このスタジオでは「マインドフルネス瞑想会」を実施しています。コロナ禍ということもあり、大勢の人数を対象にするのではなく、プライベートレッスンの形をとっています。また健康優良企業の取り組みや一定数の人数が集まれば出張レッスンにも応じています。

ヨガはエビデンスとして「不安を取り除く」「呼吸筋の向上」が挙げられており、多くの人にヨガの効果を理解してもらう取り組みに同会は力を入れています。山口代表は、「紀元前からあるヨガの経典に、ヨガの目的は自分の生き方、感情をコントロールする力です」と話しています。

ヨガに関心を持つ母親たちが、このスタジオでヨガのレッスンをし、理解を深めていきました。その輪が徐々に大きくなっていきました。

ヨガを伝える母親たちのグループ

ヨガの真髄を理解した子育て中の母親たちによって2年前、「子どもたちへヨガを伝える会 ながの」が誕生しました。長野県下各地に15名のメンバーがいます。職業はヨガインストラクターが多くを占め、保育士、幼小中高教諭、理学療法士、作業療法士などまちまちですが、ママさんが多数を占めています。代表者の山口さんも中学3年の女の子と小学校2年の男の子の二人の母親です。

「伝える会」では今年、12月までの毎月1回(7~9月を除く)、「親子ヨガ in びんずる市」の活動に取り組んでいます。「善光寺びんずる市」は長野市善行寺周辺を会場に毎月実施され、手作り品を並べた出店があってコミュニテイーの場になっているイベントです。そこで出張ヨガを行ない、多くの人にヨガを体験してもらうのがねらいです。

ことし第1回の催しは4月23日(土)に行なわれ、チラシを見てかけつけた人のほか、会場に来ていた親子が参加しました(写真)。「びんずる市に行こうよ! 財布も持ったし、買い物バッグも持ったし、何を買おう?…」というトレーナーの誘導に合わせて、自由に体を動かしていきます。やがて呼吸を整え、ヨガのポーズに。親子で向き合って、腕を伸ばしたり回したり…。親子で触れ合う場面もあり、あたたかな雰囲気が漂っていきます。40分の予定時間はあっという間でした。最後は呼吸を整えて気持ちもすっきりして終了。こうした活動の積み重ねが、子どもたちに向けたヨガへの理解を市民の間に広げているようです。

ヨガを教育現場で伝える活動にチャレンジ

ヨガを教育現場に広げることをめざし、この活動に参加する母親たちは新たなチャレンジを模索しています。専門講座で学ぶ制度を整え、この講座を修了した専門家が講師として学校などに出向く取り組みです。体育・総合学習・自立活動や教育相談、教員研修会などで「ヨガ専門士」として活躍したいという構想です。その母体となる組織として「一般社団法人子どものポッケ」をこの夏を目処に立ち上げたいと、代表の山口さんは今後の計画を話しています。

子どもたちの間に静かに広がりつつあるヨガ。その担い手となっているのは子どもたちの成長を願う母親たちです。彼女たちはヨガが子どもに与える効果を実感しており、学校教育のなかでも広がっていくことに期待をかけながら、地道な取り組みを重ねています。

【関連サイト】

子どもの為の出張ヨガ教室 えがおKids (egaokids.com)

長野市ヨガ | ヨガ|飯綱高原 森のヨガスタジオPLAVA|長野市 |ガンサバイバー|体が硬い (iizuna-plava.com)

子どもたちへヨガを伝える会 ながの (amebaownd.com)

取材・執筆 太田秋夫(ソーシャルライター)