若者のピンチを救う事業開始 ! 長野県内でワンストップ窓口設置

「若者サポートプロジェクト」始動!

親や親戚を頼れない若者たちを応援する「若者サポートプロジェクト」が6月から動き出しています。主催は長野県社会福祉協議会。「なんでも相談」の電話窓口がこの夏、開設に至りました。住まい・仕事・お金などについてワンストップで若者から相談を受け付けています。また、離職してしまい住む場所を失ってしまった場合、保証人がなくても短期で宿泊できる緊急スペースも企業と連携し準備しています。

若者サポートステーションや生活就労支援センター「まいさぽ」とも協働し、短期でのアルバイト経験からスタートできる就労支援にもつなげる体制が整っているのも、この事業の特徴です。

説明会で関係団体の協働を確認

8月29日には北信を中心とした福祉施設など関係者向けの事業説明会を長野市内のホテル信濃路でリアル開催し、40団体が参加しました。この事業の趣旨や経緯を事務局から説明し、賛同を得ました。

同プロジェクト担当者は今夏、北信地域を中心に6ヵ所の児童養護施設を回り、施設を出て自立した若者との関わりについて調査。

その結果「仕事や生活がうまくいかないときに施設を頼れない現状が見えてきた。ここ1年で6施設に相談があったのは100人弱。その内3分の1強が課題を抱えており、約10人に緊急性があることがわかった」と話すのは、プロジェクトリーダーの長峰夏樹さん(同協議会ボランティアセンター所長)。

また「これは氷山の一角」とも言います。施設出身者に限らず、コロナ禍という要因もあり、仕事を失って頼る先がなく、家賃を滞納することで住む所がなくなるという深刻な事例が顕在化してきました。

9月5日にはオンラインで全県向けに「こども若もの応援セミナー」を開催。こども食堂・児童養護施設・市町村社会福祉協議会・NPOなど、両日で合計70団体が集まり、この事業に向けた顔合わせをしました。

令和元年秋の災害からの「かりぐらしプロジェクト」事業が基盤に

長峰さんによると、この事業が立ち上がった根底には台風19号の復興支援の一環で、令和2年11月から1年間行った「かりぐらしプロジェクト」があります。月額5000円で長野市内に短期でまず居住できるというもの。コロナ禍でもあり、当初は県外からの移住者取り込みを見込んでの事業だったといいます。

しかし予期せぬニーズが顔を出します。 児童養護施設から、18歳で高校を卒業し一度自立した若者が、コロナで仕事の時間が減り生活できなくなったり、切られてしまうので入居させてほしいという要望でした。「若者が知人を泊り歩いている」というような緊急性のある問い合わせが県内で複数の施設からあったのです。一件について、7カ月入居となって課題解決に協力ができました。

「仕事がうまくいかないと、住むところを失ってしまう。施設出身者で相談できる人たちはまだいい。施設にも頼れず、両親や親戚を頼れない状況の若者たちの行き場がないのが現実でもある」と、長峰さんは強調します。

児童養護施設の入所理由として親からの虐待が理由の一位となっています。しかし「施設が利用できている子どもたちはまだいいのではないか」と同事務局は考えています。「制度改正で児童家庭相談センターが設置され、本人が自立するまで支える方向に動いているのは確か」と長峰さんは説明します。そのため、この事業に対して、児童養護施設を始め関係福祉団体は前のめりなのです。

「まいさぽ」やNPO、企業との連携で挑む

今回の事業の特徴としては、児童養護施設とのパイプはもちろん、長野県社会福祉協議会が核となった、県内4ヶ所の若者サポートステーション、県内23ヶ所の生活就労支援センターとの連携です。さらには、不動産関連企業との提携によるショートステイできる居住スペースや、保証人なしで契約できるアパートの斡旋など、速やかな対応を目指しています。

もう一つの特徴としては、子ども食堂を運営するネットワークや、学習支援を社会貢献事業とする企業との連携です。特に、子ども食堂やフードバンク事業を推進するNPO法人NPOホットライン信州の事務局長傳田清さんが、長野県社会福祉協議会の事務局でこの事業を担当。現場の課題や、子どもたちのニーズを大切にした事業運営が期待されます。

(写真提供/長野県社会福祉協議会 文責/ナガクル編集デスク 寺澤順子)