「小規模多機能自治」という言葉を知っていますか?

小規模ながらも様々な機能をもった、住民自治の仕組みのことです。概ね小学校区域において、目的型組織や地縁型組織等のあらゆる団体が結集し、地域課題を自ら解決し、地域運営を行います。

長野市市民協働サポートセンターまんまるの主催で9月16日に「小規模多機能自治ゆるっと勉強会」がオンラインで開催されました。長野市内の5つの地区(芋井、大岡、鬼無里、戸隠、長沼)の住民自治協議会(都市内分権を基本とした長野市独自の自治会)と行政職員など、15人が参加。住民主体の地域運営に取り組む当事者同士の率直な情報交換の場にするため、セミクローズドで行われました。

市民協働サポートセンターは、全国で小規模多機能自治を推進するIIHOE(人と組織と地球のための国際研究所)代表の川北秀人さんを講師に迎え、2019年10月に長野県社会福祉協議会との共催で講演会を実施。以来、講演会に参加した住民自治協議会関係者が中心となり、各地で取組みが進められてきました。

各地区の取組みを共有することで、お互いに学び合うことを目的に、今回の勉強会が企画されました。

(「ゆるっと勉強会」次第)

各地区の取組みの共有

芋井地区

芋井住民自治協議会では、2021年11月からNPO法人長野県NPOセンターと協働で「いもいリビングらぼ」の取組みを開始。住民だけでなく、芋井地区で活動する団体や大学生など幅広い参加者を募り、多様な視点で持続可能な地域づくりに挑戦する場として立ち上がりました。これまで「ミニ太陽光発電の勉強会」や「草刈りバスターズ養成講座」など、「情報共有」「学び」「実験」の3つの柱を中心に、月1回程度の開催を重ねて小さなアクションを積み重ねてきています。

(芋井地区の住民である長野県NPOセンター代表理事の山室秀俊さんから取組みを共有)
ナガクルの「いもいリビングらぼ」に関する過去の記事はこちら

鬼無里地区

鬼無里地区では、地域福祉活動計画の策定の過程で「全住民アンケート」の実施を予定しており、11月に配布、冬に集計と分析を予定しています。全住民アンケートとは、地域運営に住民の意向を反映し、参加や協力を引き出すための手法で、世帯主だけでなく中学生以上の全住民を対象に地域が取り組む活動・事業重要度と満足度の評価、困りごと、手伝えることを調査します。新潟県を拠点に地域づくりを推進する都岐沙羅パートナーズセンター事務局長の斎藤主税さんの助言を仰ぎながら、現在アンケートに向けた準備を行っています。事前に地区内の区長にアンケート項目を確認してもらったところ、字の大きさや、言葉の言い回しをどうしたら回答しやすいかなど、積極的に意見をもらえたそうです。

戸隠地区

市町村合併以降、長野市の総合計画はあるが戸隠地区の総合計画がないことから「10年後の戸隠のビジョンを考えた方がよい」と、現在ビジョン策定を計画中。夏に開催を予定していたワークショップは新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて延期となってしまいましたが、地区の多様な住民を巻き込み、長野県立大学の協力も仰ぎながら取り組む予定だそうです。

大岡地区

長野市内で最も取組みが進んでいるのが、大岡地区。2019年の講演会後に川北さんを何度か招き、住民自治協議会の役員や住民向けに小規模多機能自治の勉強会を開催。その後、都岐沙羅パートナーズセンターの斎藤さんからもオンラインで助言をもらいながら、2021年8月に全住民アンケートを実施。アンケート結果の入力作業は、高齢者が多い住民自治協議会のメンバーが読み上げ、それを地域の若手住民や長野県立大学の学生たちが入力していく形で実施したそうです。昨年11月には斎藤さんを招き、住民自治協議会役員や学生など53人が参加してアンケート分析ワークショップを実施。生活支援コーディネーターの内田光一郎さんは「『全住民アンケートの後が大事』と、斎藤さんからも繰り返し言われている。アンケート結果を踏まえて、どう変えていくか。大事な局面に入っていることを自覚しながらやっていきたい」と熱く意気込みを語りました。

(2021年11月に開催されたアンケート分析ワークショップの様子)

勉強会は質疑応答をはさみながら進行し、「外部から講師を招く予算はどう確保したか?」「アンケートに回答しにくい85歳以上の高齢者の方には、どうフォローしたのか?」など、参加者からは具体的な質問が飛び交いました。「地域づくりは終わりがない」という言葉にみんなで深くうなづく場面も。

参加者からは、「こういう機会があると刺激になるし、勉強になる。自分がやっていることが正しいのか間違っているのかの確認にもなってありがたい」「長野市で同じ苦労をしながら、住民主体の地域づくりに取り組む仲間がこれだけいるのは元気づけられる」などの感想が聞かれました。

勉強会には、令和元年台風19号で被災した長沼地区の住民自治協議会の役員や、オブザーバーとして長野市および佐久市の職員と佐久市市民活動サポートセンターのスタッフも参加。住民主体の地域運営に取り組む人たちの話から、今後、長野市内はもちろん、県内各地へとこうした取り組みが広まることを期待します。

(市民協働サポートセンターまんまるセンター長 阿部今日子さんの進行で、終始なごやかな雰囲気で意見交換)

(文責:ナガクルソーシャルライター 粟津 知佳子)