「子どもも大人も性教育が必要」白澤章子

私は、小中学校で40年間養護教諭を勤め、学校に保健室があるように地域にもまちかど保健室があると良いのではと、2009年10月から「川中島の保健室」を始めました。

活動は、相談の受付、本の貸し出し、講演、性教育をしています。今年で13年目になり利用者は月平均20人です。当初13%だった「性の相談」が最近では23%に増えています。

「クラスの人に女子なのに声が男みたい、おかしいと言われる。どうしたらいい?」という小学生。「そのままでいいよ、変えたら自分にならないもの。個性だからそんなこと言うほうがおかしいね」と話しました。

性被害に遭った方の相談は深刻です。専門機関に受診されていますが、今でもフラッシュバックにおびえます。加害者は身近な人が圧倒的に多く、被害者はまだ子どもで何があったのか解らないままの出来事でした。誰かに言うこともできないまま、自分の中に閉じ込め悩みます。

20代になって不安と孤独感に襲われる時、この保健室に電話がかかってきます。

地域で行う性教育「自分のからだのこと知ってる?」

不安な気持ちを丁寧に聴き「今日も頑張ったね」と声を掛け、「ほめ笑いカフェ」作成の「ほめカード」から1枚選び「今日の幸せカード/あなたはあなたが思っている以上にはるかに素晴らしい」と伝えました。

被害を受けると何かいつもと変わった様子がうかがえるはずです。周りに居る大人は日々の観察から感じ取り、丁寧に「どうしたの?」と聴いてほしい。「それはDVだよ」と伝えて、一緒に専門機関に相談してほしいです。

日本の性教育はとても遅れています。大人も学んでいないので子どもに伝えられません。性は思春期になってから学ぶものではなく、自然なもの、ごく当たり前なこととしておおらかに日常的に学んで欲しいです。

ユネスコは「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」を全世界に提示し、包括的セクシュアリティ教育を年代に合わせて繰り返し行うよう訴えています。学校が指導計画を作り、教科として学ぶことにより、子どもたちは自己肯定感を持って自分らしく生きることができます。

性教育を受けなかった大人世代は、大人を対象にした講座や講演会を公民館や住民自治会、PTAなどで実施してほしいと思います。

文責:川中島の保健室 代表 白澤 章子 (しらさわ あきこ)
初出 : 長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2021年10月16日掲載