「お正月を語ろう」信州の食文化を伝承

暖冬といえども、こよみの上ではすでに師走。世はクリスマス雰囲気満載であるが、25日をすぎれば、そこは日本。ガラリと正月の雰囲気へ。さてその正月。大掃除をして「門松」を飾り、「御節」を用意。年が明けて「御雑煮」を食べて・・・。

なぜ門松を飾るの?御節の意味は?伊達巻って大好きだけど、どんな意味?

これらあらためて問われて答えに困らないようにとの思いの中、今回の企画が開催された。

朔(さく)の会が主催。年中行事のいわれ・しきたりを伝える講座を実施している。 朔の会代表者の村田逸子さん曰く「今日の聞いた話をご家族、ご近所、小さな子へお土産として持って帰り伝えて欲しい」

前回8月は「箱膳で食べてみよう 戦中の食事」を実施した。

朔の会代表:田村逸子さん

話さないと伝わらない

今回は、20代から70代の約20人の女性が参加。まずは講義。話すは、『飯綱町の食ごよみ』をはじめ、長野家の食文化伝承の第一人者でもある、長野県農村文化協会役員の池田玲子さん。「和食が世界文化遺産となり、すごい民族と認められたが、日本人がそう思っているのだろうか。」さらに、「今の若い世代が知らないのは、姑世代が教えなかったから」と、静かな口調ながら胸にささる一言。参加者同士の私語はなく、少し張り詰めた室内の空気。池田さんと資料に目を落としながら聞く様は真剣そのものである。

池田玲子氏

お正月は年神様をお迎えしてすべてが新しくなる日

池田さんは続ける。

話さないと伝わらない。結果、廃れていってしまう。正月は年神様をお迎えしてすべてがあたらしくなる日である。年神様を知っているのは40人学級では1~2人程度。全く知らないクラスもある。でも、子どもたちが悪いのでなく、伝えてこなかった私たちがいけない。

すす払いをしてきれいにした家に門松を飾る。これは、年神様が迷わないための目印。注連縄(しめなわ)は、神域と外界を区別するためのもので、鏡餅も供え「神様はここにいてください」の意味。

年取り魚を用意するのは、年男=家長がする。それは、年神様という尊い人をお迎えするからである。また、信州では、大晦日の日暮れと同時に、年神様が来るといわれる。よって、夕食時には御節を年神様と食べる。

お正月三ヶ日に使う、両端が細い柳箸。これは、片方は自分。もう一方は神様が使うのできれいにしておくもの。

年神様と過ごした正月。「どんど焼き」で帰っていく・・・。

食料自給率の減少から見えること

かつての日本は、細やかなことに感謝してきた。大事にものを使う。昔からしてきたことなど。

日本のカロリーベース食料自給率は、平成27年度39%、平成29年度38%、平成30年度37%と減少傾向。このままの減少推移の場合、あと三十数年で食料がなくなるということも考えられる。

伝えることを考える

次の世代に具体的な言葉で伝えていくにはどうしたらいいのか。それをしっかり考えるべき、と池田さんが講座を締めくくる。

御節料理づくり

講義後、会場を調理室に移し、代表の村田さんの指導のもと御節料理づくりを開始。

本日の見本の御節

煮物の野菜の飾り切りの実演。

飾り切り
飾り切り

フライパンで焼く伊達巻。

伊達巻 焼き上がり!
伊達巻 巻き簾で形を整える

なますを作る時の薄切りは「主婦の腕の見せ処」であるため、そのコツを伝授するは会員の小林さん。

その小林さんのお宅には先祖代々大切に保管されている五段重箱がある。専用の外箱に入れられ、100年もの時が経つものという。その年月は感じさせないもの。先に池田さんが話した「大事にものを使う」に通じる。

重箱の外箱
百年の歴史の重箱

年神様に「いだだきます」と手を合わせ出来上がり美味しく食べながら、それぞれの料理の意味や、なぜ、雑煮は、雑煮(ざつに)と表現するのかなどを池田さん、村田さんの説明を聞く参加者。「三口食べたら、おいしい、というと作った人は嬉しいね」

いただきます
くるみ入りの雑煮

「朔」は新月=スタート 

参加者全員からの感想が述べられた。その中、一部を紹介する。

70代の女性は「今まで手を抜いていたが、御節料理は意味あるもの。今年は気を引き締めて作る」と。

50代の女性は「子どもに伝えるために、今年は自分で作りたい」別の50代女性も「御節をつくるだけの講座でなく、いわれも聞くことができてよかった。娘、孫に語りたい」

会の「朔」は新月=スタートの意味から名付けたそうである。多くの参加者が「伝える」ことのスタートのきっかけとなった「お正月を語ろう」の会。次回の開催は、何がテーマであろうか、楽しみである。

左:代表の田村さん 右:重箱を大切に保管している小林さん
年神さまといただきましょう。

文責:ソーシャルライター 野菜ソムリエプロ 増田朱美

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