「よって、たかって、ほめっこしよう」と呼び掛けてはじまった「戸隠つながるサミット」。
前年に続いて2回目が2026年3月7日(土曜日)、長野市の戸隠農村環境改善センターで開かれ、集まった約30名が地域で活動する10団体の取組発表を聞きました。


主催したのは、農林水産省の農村RMO事業に取り組んでいる「戸隠地域づくり協議会」。
この3月末で3年間の事業が完了し、「これからどうするかを模索している」と言います。
小林会長は「昨年のサミットでは『大豆の栽培を手伝いたい』という人とつながることができた。各団体の取組や課題を学び、これからのことを考えたい。どう発展させていくか。さまざまな事業や活動のことを学び、互いに元気を出して地域を盛り上げていきたい」と期待を寄せました。


集まる場づくりを展開する「戸隠地区住民自治協議会」
長野市に32ある地区住民自治協議会のひとつ「戸隠地区住民自治協議会」。
各区から役員を選出して、5つの委員会①総務委員会②地域振興委員会③健康福祉委員会④公民館委員会⑤青少年育成委員会を構成。市役所から受託した広報誌配布や地域福祉活動計画に基づく13の事業などに取り組んでいます。
計画の基本理念は「やさしさと思いやりで未来へつなぐ戸隠」。
4つの目標①たすけあう・支えあう②育てる③集まる・ふれあう④知る・考える・つなぐ、を立てて各事業を実施しています。
協議会ではコロナ禍で薄れてしまったコミュニティを取り戻そうと「集まる場」づくりを展開し、「こんな場所で、こんなこと」という提案を募集中。また、地域助け合い事業で運行している福祉自動車の運転手を募集しています。


歴史ある大根の種をつなぐ「戸隠おろし振興会」
江戸時代から地域で栽培され歴史ある大根「戸隠おろし(戸隠で栽培されている大根=戸隠大根)」を絶やさないように、栽培と普及に取り組んで27年になる「戸隠おろし振興会」。
「戸隠大根」は信州の伝統野菜(全85種、うち大根は11種)として認定されています。肉質が硬く色白で辛みが強い本来の形質を保つため、採取用の大根を選抜して、種をつないでいます。
戸隠大根は、江戸時代に麻を交易する商人が持ち込んだと伝えられています。また、戸隠神社の宿坊には、江戸時代からそばの薬味としていた記録が残っています。現在はおろしやたくあん漬けに利用します。根長は20センチ程度で、根重は200-300グラム。円筒形で尻部は下膨れします。肉質は緻密で硬く漬物用として優れています。「おいしい信州ふーど」図鑑より
採種は毎年11月の土づくりと約700本の定植からはじまり、春にマルチシート張りと支柱立て、ビニール掛け、開花後はミツバチ箱の設置、刈り取り、はぜかけ、脱穀、選別などの作業が続きます。
また、戸隠小学校・中学校の総合学習の授業で「育てよう・食べよう」といっしょに栽培しています。
振興会では、採取作業に取り組んでくれる人を募集しています。また、「個人宅の庭先でもよいので、ひとりでも多くの人に栽培してもらいたい」と呼び掛けました。



信州の伝統野菜のサイト
農福連携をコーディネートする「クロスオーバー」
収穫期など農作業が忙しい時に、障がい者の施設外就労として助っ人を送る。農業者との間に入って状態を見ながらコーディネートし、お互いがwin-winになるような契約に結び付ける「一般社団法人クロスオーバー」。
契約方法は、時給または作業全体の出来高払い(面積当たりや重量当たりなど)。作業内容は、草刈りや収穫、ふどうの袋掛け、大豆の選別などさまざま。作業に適した人を障がい者施設で選び、自動車1台あたり職員1人と作業員3~4人のチームで作業しています。
作業に参加した人は「障がいがあっても社会貢献することができる」と実感し、農業技術を習得することができ、室内作業より収入が多くなるそうです。
一方、農業者は作業繁忙期など必要な時に人手が確保でき、シルバー人材に頼むより安価で、作業効率を考えた新たな手順が見つかるなどのメリットが生まれているそうです。
農福連携コーディネーターの沖村さんは「人手不足で困ったらクロスオーバーへ連絡を」と呼びかけました。


一般社団法人クロスオーバーのサイト
観光で地域を盛り上げる「戸隠観光協会」
情報発信、観光案内、ガイド派遣、ツアー企画、PRイベントの出展など、観光で地域を盛り上げている一般社団法人 戸隠観光協会。
最近では「すべての人に、戸隠の杜を歩く喜びを」をテーマに、アウトドア用車いすでのユニバーサルツーリズムや、戸隠牧場での体験会なども開いているそうです。
また、善光寺から戸隠神社奥社まで25kmの戸隠古道を歩く2日間のウォークイベントや、繁忙期の渋滞緩和対策、車両誘導、交通量調査、外国人観光客の受入体制の整備などにも取り組んでいます。


戸隠観光協会のサイト
高齢者も住みやすい地域をめざす「青空の会」
高齢者の心身の健康維持を目的に「みんなに会って元気になろう」と呼び掛けて、毎週木曜日10時から12時に開く「青空の会」。7年目になり、19名のボランティアで運営しています。参加登録者は約40名。
受付で豆やビー玉を箸でつかんで移す手指の運動から、牛乳パックを障害物にして並べつまずかないように歩くコース。週替わりで①室内ゲームを楽しむ②話を聞く会③みんなで歌う④みんなでやる、など運動や体操、脳トレーディングになる内容が盛りだくさん。
参加者同士が仲良くなり、「参加する張り合いがある」など好評だそうです。一方、参加者が固定してきていて、男性の参加が少ないなどの課題もあります。
「青空の会」の西さんは、「高齢者が安心して暮らすために、安否確認のシステムや日常生活のちょっとした手助け、詐欺から守るための身近な相談などに取り組みたい」と話しました。


移動販売者と場所をつなぐ「ながの移動販売つなぎ局」
長野県内のキッチンカー108店が登録(2026年2月時点)。移動販売する出店者と、場所・スペースの提供者とをつなぐ「ながの移動販売つなぎ局」。
暮らしをより良くするため4つの柱①経済循環②地域福祉③地産地消・エシカル消費④災害時の支援・防災、に取り組んでいます。
毎月第3木曜日(「青空の会」の後)は、戸隠地域づくり協議会と連携して戸隠農村環境改善センター前で出店。毎月さまざまなキッチンカー数台が入れ替わりながら、主食系、おかず・おつまみ系、おやつ・スイーツ系と幅広いメニューを提供しています。
昨年夏には、戸隠地域住民自治協議会の提案で土曜日の夜にビアガーデンを開き、多くの人が飲食を楽しみました。続いて9月には戸隠中社秋祭りに出店するなど、地域の祭りやイベントにも出店しています。
つなぎ局の村上さんは、「地域イベントとの連携や地産地消にもアプローチしたい」と話し、気軽に相談してほしいと呼びかけました。



ながの移動販売つなぎ局のサイト
観光と生産で地域貢献する「蕎麦の国」
そばと戸隠大根を栽培する農業生産法人 有限会社蕎麦の国。法人の作付面積は20年間で4倍に増え、夏そばと秋そばを合わせて209ヘクタールになっています。
そばは稲作と比べると労働時間が7分の1で済む省力作物で手が掛からないため、高齢の生産者でも栽培することができます。また「そば処 戸隠」として地域の思いもあって面積が増えているそうです。
そばは6月から9月まで花を楽しめる景観作物でもあることから、法人の竹内さんは「夏そばの栽培を増やして観光と生産で地域に貢献したい」と言います。「戸隠大根も増産したいが、収穫が手作業のため人手が足りない。夏の草刈りも人手が足りていないので、地域の人といっしょに仕事がしたい」と呼びかけました。


蕎麦の国がある株式会社おびなたのサイト
介護や福祉などの総合相談窓口「地域包括支援センター」
長野市役所の1階にある「長野市中部地域包括支援センター」は、高齢者の介護や医療・福祉などに関する総合相談窓口。自分らしく長野に暮らしていてよかったと思えるように、医療・介護・生活支援に取り組んでいます。
戸隠は5年後の推計で生産年齢人口が現在の1,242人から1,026人まで減少し、地域の支え手が減ってしまうことが見込まれています。地域で生活を続けていくためには①介護予防②社会参加③支え合いで、地域でつながることが大事になっています。
デンターでは、困ったときに誰が、どう支えるか、自分自身の【自助】と、みんなの支え合いの【互助】、介護保険などサービスの【共助】、行政による【公助】を連動させ、各団体と連携・協働して住み慣れた地域で暮らし続けられる地域づくりを考えています。


戸隠で育つ子どもたちを応援する「とがくしっこ応援団」
保育園・小学校・中学校と地域が連携して、子どもたちを応援する窓口「とがくしっこ公演団」。
部活動の地域移行に合わせて「戸隠カルチャーマルシェ」をはじめ、陸上・バドミントン・軽音楽・ドローン・スラックラインなどを稼働。小学校のクラブでは、太鼓・料理・忍者も加わりました。
小学4年生から中学3年生までの子どもたちと地域の大人たちを対象にした「地区懇ぷらす」では2025年10月に「オシゴトブース」を開設。出展した22のブースで、仕事紹介と体験を通して「戸隠でこういう仕事ができる」ことを知りました。
取組の様子は季刊「とがくしっこ応援団かわら版」を各戸配布し、小学校でいっしょに掃除しながら子どもたちの成長を応援する「おそうじマイスター」も募集しています。
事務局の徳武さんは「地域のみなさんとつながって子どもたちを応援する取組を展開していきたい」と期待を話しました。


とがくしっこ応援団のサイト
つながって地域を盛り上げたい「戸隠地域づくり協議会」
サミットを主催した「戸隠地域づくり協議会」はこれまで、3本の柱①農用地の保全②地域資源の活用③暮らしの支え、に沿って活動してきました。
農用地では、農地現況のマップづくり、草刈り隊の結成と作業、中山間地直接支払いのネットワーク化。
資源活用では、大豆栽培で味噌と豆菓子の製造、販売。ブランド「戸隠の台所」。有機堆肥の製造。空き家の活用。活動拠点「戸隠ベース」づくり。
暮らしの支えでは、キッチンカーによる買い物支援、とがくしっこ応援団カルチャーマルシェへの支援など。
昨年から地元のキッチンカーとして「畑と食卓を繋ぐ」をコンセプトに、戸隠産の米と大豆でつくった味噌を使った豚汁やおにぎりを提供する「悠々」が活動を始め、杉を使ったアロマやアクセサリーもつくっています。
悠々を運営する青木さんがめざすのは、地元の方々の「楽しみの場」になることです。



戸隠地域づくり協議会のサイト
以上、10団体の発表のほか資料で、20代の若者が戸隠の耕作放棄地を再生してブルーベリーなどを育てている泉屋ファームが紹介されました。
つながって地域を盛り上げていきたい
参加者は各団体の発表を聞きながら手元のふせん紙に「よいところ」や質問、応援のことばなどを書き留めていました。
・元気に活動されている様子が知れて良かった。
・また協力させていただきたい。お手伝いできることがあれば、ぜひやらせてほしい。
・すてきな活動でした。見学に行きたい。
・今後も期待しています。がんばって。



主催者は「これからも情報を共有できる仕組みを考えたい。互いに連絡を取りあって、できることをいっしょに考えていきたい」と期待を込めて会を結びました。
地域をあらためて知る「サミット」のすすめ
人口減少と高齢化の進行によって地域の支え手が減っていくのは、さまざまな地域・団体が抱えている課題です。しかし、実際にどのような支障や問題が起きているのか、なにが足りていないのかは、当事者から具体的な話を聞くまで分かりません。
「人手不足」と言っても、時期と内容が違えば、団体間で互いに補い合える可能性があります。
催しも協働すれば、時期や内容を調整することができます。
「サミット」は、地域のことをあらためて知る機会。地域のたな卸しとも言える取り組みです。地域にあるさまざまな団体や事業者の活動内容や課題を知り、地域外の団体・事業者とつながる機会にもなります。
できれば地域でなにかをはじめようとする前に、関係者と地域住民を一堂に集めて交流するサミットの開催をお勧めしたいと、長野県NPOセンターでコーディネーターを務める筆者は思いました。
<取材・編集>ソーシャルライター 吉田 百助







