「門前まちづくりサロン」へ参加してみよう。ゲストが話す中山間地域の課題とは?

昼は観光客で賑わうことの多い善光寺ですが、夜になると真っ暗になることはあまり知らないかもしれません。そして、真っ暗になった善光寺界隈であるサロンが開かれているのです。

「まちづくりしたい人」を巻き込んだ勉強会

「門前まちづくりサロン」の案内

その名は「門前まちづくりサロン」。主催は長野県立大学グローバルマネジメント学部の築山(つきやま)秀夫ゼミと、箱山正一さん(長野市議会議員、ふとん店4代目)です。

「まちのことを語り、学生とまちをつなぐ場所をつくるため」に開催しているこのサロン。

まちづくりに興味はあるが、一歩踏み出せない学生がいると知りました。そのような学生とまちづくりをやっている大人の接点を作るために、築山先生と共にこのサロンをはじめましたと話すのは箱山さん。

サロンでは毎回ゲストを迎え、まちづくりへの取り組みについての講演を企画しています。

過去には吉本興業の芸人や善光寺の住職をゲストに迎えたこともあります。

2020年12月から毎月1回、今回で24回目を迎えたサロン。
現地(リアル)だけでなくオンラインを含んだハイブリッド形式で開催。なかなか会場に来られない人でも気軽に参加できます。今回は現地とオンラインを合わせて12名が参加していました。(参加希望者は、記事の最後の連絡先までメールで申し込みを)

今回のゲストは、株式会社ラポーザ(以下、ラポーザ)の代表取締役の荒井克人(かつと)さん。
(冒頭の写真 前列中央)

ラポーザは長野市の善光寺北西の往生寺地区に本社を置き、ドローンやレーザーを使った測量を行っています。

メインの事業は測量ですが、近年力を入れるのは遠隔操作による自走式ロボットを使ったスマート農業。中でも危険で作業効率が悪い、中山間地域における農業のスマート化を提言しているそうです。

農業に必要なのは若くて体力のある人材ではない!?

荒井さん(写真右奥)のお話を真剣に聞く参加者

荒井さんが提言するスマート農業では「若さも体力も必要ない」とのことです。荒井さんは一つずつ紐解いて丁寧に話していました。

中山間地域の課題とは?

荒井さんは課題の説明の前に「中山間地域」とは何かを説明しました。
「長野市街地と飯綱高原などの山間部の間には、往生寺地区などの中間地域があります。これが中山間地域です」。

そして、中山間地域の課題をこう説明します。
「中山間地域では農家の方の高齢化や後継者不足により、耕作放棄地が増えています。耕作放棄地が増えると、中山間地域に下りてきた野生動物のエサがなく、市街地まで下りて来てしまいます」。

荒井さんが提言するスマート農業とは?

さらに荒井さんは「中山間地域の農業の課題」を説明します。

「中山間地域は農業機械を使いにくいという問題点があります。スマート農業が想定しているのは、通常、平らで広大な土地です。急な斜面がある中山間地域はそもそもスマート農業に適していません」。

そのため、荒井さんの会社では次のような農業ロボットを開発。

「100キログラムの荷物を載せ、最大25度の傾斜を登れる自動式ロボットがあります。このロボットは荷物の運搬に使え、遠隔操作によって動きます。軽トラックに乗るサイズなので、農地までの運搬も楽です」。

農業をスマート化できれば重労働から解放される

荒井さんは続けて自身の事業に対する想いも話しました。

「すべてをスマート化したいわけではありません。ロボットはあくまでもツールであり、農業には人が必要です。ただ、農業をスマート化できれば農家の方は重労働から解放されます」。

長野県の未来を変える力を秘める学生たち

学生が会場の準備をしました

ときにはメモを取りながら、荒井さんの話を熱心に聞いていた長野県立大学の学生たち。講演後には次のような感想を話しました。

「長野でもスマート農業をやっているとはじめて知った」
「専門的でおもしろい内容だった。自分でもさらに調べて勉強してみたい」
「祖父母が農業をやっている。りんごの収穫作業は単純でおもしろくないが、ロボットを使うとおもしろそう」

会場をセッティングしたのも学生でした。他にもサロンの詳細を案内したり、Zoom(オンラインミーティングツール)への入り方をサポートしたり、細かな気遣いができる学生が目立ちました。


学生とまちをつないだ先にある未来

長野県の農業、とりわけ中山間地域の農業には特有の課題があるとわかりました。そして、その課題を解決しようと活動する人たちがいました。

荒井さんのような人材が周囲を巻き込み、取り組めば、地域にある課題を解決する明るい希望が見えてくる気がしました。

月1回のペースで開催される「門前まちづくりサロン」が学生とまちをつなぎ、多彩なゲストが地域の課題やまちのことを学生へつなぐ。そして、学生のアイデアと若い力が未来へ希望をつなぐ。そのような可能性に筆者も胸が踊ります。

<取材・執筆> ソーシャルライター 廣石健悟

「門前まちづくりサロン」お問い合せ
■担当者:小林千ひろ(長野県立大学学生 2023年1月現在)
■メール:20G057@u-nagano.ac.jp