先輩起業家に学ぶソーシャルビジネス

日本政策金融公庫とソーシャルビジネスサポートながのが主催した「ソーシャルビジネスセミナー~持続可能な暮らしを支える信州のコミュニティビジネス~」が2021年2月26⽇(⾦)、オンラインで開かれました。

セミナーを配信した長野市新田町にある長野県NPOセンターのオフィス

セミナーに先立って「ソーシャルビジネス」を検索したところ、経済産業省のホームページに次の説明がありました。「地域社会においては、環境保護、高齢者・障がい者の介護・福祉から、子育て支援、まちづくり、観光等に至るまで、多種多様な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて、住民、NPO、企業など、様々な主体が協力しながらビジネスの手法を活用して取り組むのが、ソーシャルビジネス(SB)/コミュニティビジネス(CB)です。SB/CBの推進によって、行政コストが削減されるだけでなく、地域における新たな起業や雇用の創出等を通じた地域活性化につなげることを目的としています。」https://www.meti.go.jp/policy/local_economy/sbcb/

簡単に言えば、「地域の課題を解決する事業」という感じでしょうか。具体的にどのような事例があるのか、セミナーでお二人の先輩起業家から取り組みを聞きました。

「共に生きる」選択肢

株式会社タブノキの代表取締役 深山直樹さんは、介護の仕事をしながら「仕事に没頭するほど、現状では問題を解決できない」ことを悟り、2020年4月に起業しました。小諸市の古民家を改修した「みんなの家タブノキ」は、赤ちゃんからお年寄りまで集まって生活をともにする地域のつどい場です。お年寄りは、赤ちゃんを見るだけで目の輝きが変わります。

ここでは、一方的に支援されたり、支援されるだけではない、持ちつ持たれつの「お互いさま」の関係です。当人がやりたいことを「してもらう」ことで、自己肯定感を高めます。「ありがとう」と言われることは、人として社会的な価値を感じる時。そんな状況や環境をつくり出し、「共に生きる選択肢」を提案しています。

深山さんは、「人は理由がないと動かない。利益ではない。自分にできることで、『ありがとう』と言われることが報酬になる。こうした価値を、たくさんの人に伝えることが、自分たちの価値になる」と話してくれました。

深山さんが描いた「図解スタッフのための指針」のひとコマ

みんなの家タブノキのFecebook

前向きに子育てできる社会へ

あべ母乳子育て相談室の代表 阿部久美さんは、二児の母。自身の子育て経験から産後ケアの必要性を実感し、上田市の自宅を増改築して2020年6月に相談室を開設しました。めざしたのは、お母さんが前向きに子育てできる社会。一人一人の症状にあわせて必要なケアや相談を受けています。

事業内容は、おっぱいマッサージにトラブルケア、母乳相談、子育て相談、産後デイケア、産後宿泊ケア、イトオテルミー(温熱刺激療法)と多彩。自分ではどうにもならず、ネット検索で調べてもマニュアル通りにはいかない悩みや思いを受けとめています。教えてほしい、助けてほしい、けれど人に聞けないままストレスを抱え込んでしまう人が多い。そんな時に、なんでも相談できる阿部さんは、心身ともに安らぐ存在。利用した方から「本当に助かった」、「また困ったら利用したい」と感謝の声が届いています。

あべ母乳子育て相談室のFacebook

あべ母乳子育て相談室の室内

人とのつながりを大切に

お二人の先輩事業者に共通していたのは、「人と人とのつながりを大切にする」、人に寄り添った事業です。深山さんは、「多様な生き方があるほうが生きやすくなる。選べる選択肢の一つになりたい」と語り、阿部さんは「自分ひとりではできないことを、いろんな人に『教えて欲しい』と素直に聞く力が必要」だと、ソーシャルビジネスによる多様な社会のあり方を語ってくれました。

地域の課題を解決するために、何かをしたいと思った方へのアドバイスは、まず動いてみること。分からなかったり、困ったことがあったら、相談に行ってみること。

長野県では、各種機関が連携する「ソーシャルビジネスサポートながの」が、社会課題の解決や地域活性化を促すソーシャルビジネスを支援しています。これはと思ったら、ぜひご相談ください。

<ソーシャルビジネスサポートながの構成機関>NPO法人長野県NPO センター、(公財)長野県中小企業振興センター、長野商工会議所、長野市商工会、信州新町商工会、長野県中小企業家同友会、NPO法人NPO夢バンク、(一社)長野県中小企業診断協会、長野県

ソーシャルビジネスサポートながののパンフレット表紙

取材・文責:吉田百助(ソーシャルライター)