長野市西鶴賀エリア を歩いて、まちづくりを議論

「西鶴賀エリアリノベーション」という言葉に引き寄せられて、3月30日(土)、第1回西鶴賀エリアリノベーションワークショップ「まちの魅力と暮らし方発見想像会議」に参加した。50人の定員?! だったはずが、なんと150人?!を超える人たちが、会場の「勤労者女性会館しなのき」に集まった。

西鶴賀は、長野駅から長野大通りを1.3kmほど北上、権堂アーケード入口のイトーヨーカドーを左手に見て、右手アーケードの終わりから、まっすぐ西へ向かって300メートルほど伸びる飲み屋の並ぶ道路沿いの一帯。明治時代は繁華街だった権堂町から五丁(550m)の位置に1万平方メートルの大歓楽街「鶴賀新地」が造成され、五階建て遊郭・大黒楼があったと言われている。

その後、西鶴賀町は小規模の飲食店や商店、職人の街として発展してきたそうだ。昭和の高度経済成長期には、エリアの北側や西側に巨大な公営住宅群が整備され、昼間は買い物や通勤に利用する市民も多かった。駄菓子屋やバン屋、床屋など生活に必要な店があり、下町のような雰囲気も漂っていた。

今でも、昭和の名残のある店が点在

 

私の記憶では、小さな飲み屋が軒を連ねており、二次会にちょっと寄る、味のある店が多かった。一方で、特に夜になると、狭い路地を入ると女性は目を背けざるを得ない店もあるなど「怖い」イメージもあった。

経済成長に陰りが出たころ、長野市は長野五輪に沸いたものの、バブルが崩壊し「官官接待」が禁止となり、料亭やしゃれた小料理屋が廃業に追い込まれた。西鶴賀にも空き店舗が目立つようになり、放置されたり、建物が取り壊され、コイン駐車場になってしまったところも多くなった。少子高齢化で商店の後継者もいなくなり、子どもたちの声も響かない商店街になっていった。

しかし、西鶴賀の周辺には大規模な県営住宅、総合病院、長野市役所、映画館、イベントホールなどがあり、善光寺からも長野駅からも歩いて20分ほどという好位置にある。しかも大きな建物が少なく、中心部にありながら陽の当たる町だ。

初めて空き家の中に入ったり、細く入り組んだ路地を歩いたりしてみた。タイ料理などのアジア系の料理店があったり、新しい美容室や、リニューアルした自転車店もあった。改めて、飲み屋が軒を連ねる長屋をまじまじと見ると、実に味がある。

おもしろい! いいじゃん! もったいない・・・!

「まちの魅力と暮らし方発見想像会議」では、参加者に改めて、この街を歩いてもらい、魅力に気付いてもらうことが第一歩と考えていたのだろう。その目論見は成功した!

このイベントの目玉はNPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事 豊田雅子さんの講演会だった。空き家のリノベーションについて語るとき、多くの専門家がこの豊田さんたちの取り組みを先進事例に挙げる。

一人の女性が海外経験を経て、故郷に帰ってきた。そして、空き家が朽ち、壊れていく街並みを何とかしようと立ち上がったのだ。彼女の行動をSNSで発信。共感した若者たちが尾道に集まってくる。そして次々と空き家をおしゃれにリノベーションして移住し、商売を始めたのだ。

そして、NPO法人ができ行政と組んで空き家バンクを運営するだけでなく、自分たちが主導でどんどん空き家を再生させた。今では、豪邸の空き家まで手を付け始めている。社会課題を意識しことで、町が再生し、コミュニティが再生して、住民に副産物が与えられた事例だ。

「まちの中庭」住生活を楽しめるまちに

講演会の後に、4つのグループに分かれて前記したように、実際に西鶴賀を歩いた。そして、会場に戻り、気が付いたこと、作りたいものなどをグループごとに議論した。

筆者が参加したグループには、建築士、信州大学工学部学生、木曽の地域おこし協力隊員、行政マン、美容師、地域のタクシー会社社員など多様な面々。

空き家活用について、寺子屋、オーガニックな店、多国籍な店や屋台の町、高校生の下宿村、ゲストハウス、空き家アスレチック、料理教室のできる場、懐かしいコロッケ屋などなどの意見が出てきた。

ターゲットは一定のものにせず、多様性にあふれる街・・・「まちの中庭」住生活を楽しめるまちになれば、子どもたちも帰ってくるのではないか。楽しい妄想が展開された。

各グループの発表もあった。特に地元の小学生のいたグループからは、「子どもから大人までワクワクドキドキ楽しめる街」という提案があった。子どもカフェ、宝探し、クリスマスパティなど、イベントのアイデアも。

第1回西鶴賀エリアリノベーションワークショップ「まちの魅力と暮らし方発見想像会議」

主催 長野市中心市街地活性化協議会 協力 (一社)長野県建築士会長野支部 

今後のスケジュール 第2回ワークショップ 6月1日を予定。第3回は夏、そして秋には三軒の空き家で、実践ワークショップを開催する予定。

問い合わせ まちくらしたてもの案内所 TEL090-1553-1485(平日9-18時)

(取材・文 寺澤順子)

 

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