「若者の生きづらさ」という言葉を使ったイベントが目につくようになった。「生きづらさ」とは何か。逆に「生きやすい」人っているのだろうか。と著者はいつも疑問に感じている。

冒頭の基調講演では精神科医で長野大学客員教授の小泉典章さんが現状について説明した。

ヤングケアラー(10代で家族の面倒を見る若者)、ケアリーバー(福祉施設の支援から離れた若者)、不登校、ひきこもり、ニートなどの言葉が世間に飛び交っている。しかし、今、こうした言葉ではカテゴライズしきれないほど、多様な環境や課題に若者たちが直面しているのだ。それを無理やりひとくくりにして「生きづらさをかかえる若者」と呼ぶ。

2020年に行われた、ひきこもりに関するアンケートでは、県内約5千人いる民生児童委員により、2290人のひきこもりが報告された。その内36・9%が10代から30代の若者たち。しかし正確に把握することが難しいため、数倍はいるのではとも予想される。また20年までの5年間で中高生計54人の自殺が県から発表されている。

2022年10月8日に市内で長野県NPOセンターが主催し「若者たちの生きづらさを考える意見交換会」を開催した。子ども食堂や学習支援などを運営するNPO関係者や学生など約40人が会場で、30人はオンラインで参加した。

グループでの意見交換で、大学生を交え大人が本気で「生きづらさ」の原因や対策、自分にできることについて話し合った。特に興味深かったのは「褒められず否定されて育った」という意見が目立ったことだ。生きづらさの原因として「SNSでの人との比較」「学校での画一的な教育への不適応」「親や社会からの理想像の押し付け」「暗いニュースばかりの閉塞的な社会」「自立という名の経済的安定のプレッシャー」などが挙げられた。大人も同じ課題に直面しているという意見もあり、問題の根の深さを痛感した。

一方で、同センターが主催する居場所「学びの拠点」に通う10代学生から「人と話せるようになって、自分が何に苦しんでいるかの根本に気づけた」というメッセージがあった。自分を受け入れてくれる人との接点が重要で、安心していられる場所の必要性が浮き彫りとなった。しかし、民間の居場所運営資金の調達が難しい。

交換会の中でも「とにかく自分にできることを」との意見が大きかった。同センターでは学びの拠点存続のための寄付をオンラインで募っている。https://syncable.biz/campaign/3490

2022年10月25日長野市民新聞コラム掲載 執筆:寺澤順子(ナガクル編集デスク)

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