清泉女学院大学のアカデミック講座「欧州のセカンドチャンス教育から考える」の最終回が2022年9月10日開催された。北海道大学横井敏郎教授が「夜間中学の意義と可能性」について基礎学習の機会の選択肢としての可能性を探った。

横井敏郎著書「教育機会保障の国際比較」の補章に夜間中学政策が触れられている。

「夜間中学」という言葉は新しい言葉ではない。戦後、10代が働きながら通う公立学校として全国で80校を超えていたという。70年代に減少し、30校が継続していたが、近年増加し21年には40校となっている。横井氏は今後、増えていくのではないかと話す。

北海道でも2022年4月、札幌市に「星友館中学」が開校されたところだ。現在90人が在籍し、9割が中学の形式卒業者。年齢は10代から80代まで幅広い。ニーズ調査では6人という数字しか出てこなかったが、その数字の裏にある現実を重く見て開講に踏み切った。

実は17年に長野県でも夜間中学開設の必要性について検討がなされたが、ニーズなしと判断された。市町村の教育委員会経由でのニーズ調査で、希望者がいなかったという回答が要因となった。横井氏はこうした調査によるニーズ把握に課題があるのではと指摘した。他県では、フリースクールなどで呼びかけて、必要な生徒が集まった事例もある。

また横井氏は不登校の実態として、体調の問題で学校に行きたくても行かれない子がいることもわかってきたと説明。他県の事例ではその選択肢に夜間学級がなっているのだ。

一方で、厄介な子どもを夜間中に選別し追いやるのでは。法的な観点から、不登校対策と夜間中学を別に考えるべきという議論もあるそうだ。講座参加者からは「中卒資格を自動的に得られる仕組みが逆に魅力ではないか」との意見も出た。

また横井氏は居場所としての夜間中学の可能性に注目。実情に配慮した学びと同時に、不登校ケアや多世代と触れ合える居場所になりうるからだ。

SDGsでは質の高い教育の保障がゴール4に示されてる。早い段階で、セカンド教育の機会を保障すべきだ。特にオンラインを活用した通信教育と夜間中学を連携させる仕組みはどうか。教員に負担をかけるなど、既存の教育現場の混乱を避けるべきだ。市が不登校支援で掲げる「自分らしく学び、自分らしく生きる」とは、まず基礎教育を受けられる場の選択肢を増やすことにあると思う。

2022年9月27日長野市民新聞コラム掲載 執筆:寺澤順子(ナガクル編集デスク)