#クライシスサイコロジーの視点から新型コロナウイルス感染を考える
寄稿: 太田秋夫/HopeApple(穂保被災者支援チーム)代表、脳力開花研究所 クライシスサイコロジー アドバイザー 
 2020.5.14

こころのなかから不安を取り除くには

新型コロナウイルス感染が日本列島を襲い、国民を不安に陥れています。「緊急事態宣言」が出されたことにより経済活動もストップ状態で、こちらの面でも不安が広がっています。*クライシスサイコロジーの視点から、この現状と対応策を考えてみたいと思います。

クライシスとは「危機」「重大局面」のことです。そのとき人間の心理はどのようになるのか、どうすればよいのかをお伝えしましょう。不安と恐怖が蔓延している局面を乗り越え、暗闇から脱出する方法です。

人間はクライシスの状況に直面すると不安や恐怖を感じます。今回の新型コロナウイルス感染拡大でも、昨年10月の台風19号災害でも、「危機」に対して人間はそのような心理状態になります。脳のはたらきがそのときどうなっているかというと、大脳辺縁系(好き嫌いなどの感情基づく本能的な情動や記憶を司る部分)のなかにある偏桃体が活発に動きます。ここには恐怖や不安といった生命の危機に関わって本能的な行動を駆り立てる機能があり、交感神経を刺激し、心拍や血圧が上がり、全身の筋肉を収縮させるなどの身体反応も起こります。

この反応は危機に対して「攻撃」もしくは「逃避」するための本能的なはたらきで、危機から脱出するために人間に備わった本能的機能であり必要なはたらきです。しかし、問題になるのは、偏桃体が優位になると思考や認知・判断をする大脳皮質のなかの前頭前野のはたらきが低下してしまうことです。つまり、的確な判断や行動ができなくなってしまうのです。

そのため人間は意味不明な行動をとるようになります。今回のコロナ騒動でも、デマが広がってコロナとは無関係なトイレットペーパーがなくなり、在庫が十分にあると報道されてもなかなか買い占め行動がとまりませんでした。感染していない医療従事者のお子さんが登園するのを拒否した保育園もありました。理性がはたらいて考えれば、おかしな対応であることは明らかなのに不可解な行動に出てしまったのです。外出自粛のために家庭内でのDVが問題になっていますが、これも精神状態が恐怖と不安に巻き込まれているためと考えられます。県外の車両を傷つけるといった事件も起きていますし、海外ではマスクをつけていない人を殴るといったことも起きています。先が見えないためにうつ状態になる人も増えます。これらはいずれも前頭前野の思考が低下しているがための現象です。

正しい情報を自らの意思で入手し、客観的に判断することが大事

危機に直面すると偏桃体が不安・恐怖を呼び起こす。偏桃体のはたらきが優位になると、前頭前野のはたらきが低下して思考・判断力が鈍る。

 次に、どうすればよいかということですが、前頭前野を正しくはたらかせ、偏桃体の動きにコントロールされないように(つまり恐怖・不安に支配されないように)する必要があります。そのためには、正しい情報を自らの意思で入手し、高所対処にたって判断することが大事です。テレビや新聞などのメディアから流れてくる情報をうのみにしていると不安が増幅するばかりです。ちょっとでも咳が出たり喉が痒かったりすると「自分が感染しているのでは」と不安になる人がたくさんいます。それは、「自分もすでに感染しているかもしれないと思って外出を控えてマスクをし、人にうつさないように」と連日脳に刷り込まれているからです。

日本の感染者確認数は5月5日現在、1万6067人で、死亡者は579人です。これを抑えるために外出自粛や三密防止をするのは当然ですが、実は毎年冬季におなじみになっているインフルエンザは、昨年の冬は1200万人(今年の冬は激減して730万人)が感染し、3300人が死亡しています。交通事故の死亡者も一時1万人を超していたものが年々減少したものの、年間3000人以上が犠牲になっています。今回のコロナとは比較にならない大量の感染者と死亡を出している現実があります。

長野県の感染確認者は72人(5月5日現在)です。人口比でいうと、およそ3万人のうち1人です。確認されていない人もこの何倍かはいるでしょうが、それでも圧倒的な人は感染しておらず、根拠なく隣の人が感染しているかも知れないと不安に思う必要はまったくありません。しかし、日々のメディアの報道だけに接していると正しく判断ができなくなり、不安が深まるばかりです。前頭前野が得た情報を何の判断もなく受け入れると偏桃体の恐怖を増幅させてしまう危険があります。意識的に情報を選択し、正しく判断できるようにしましょう。

正しく恐れることが何より大事です。新型コロナウイルスの感染は飛沫感染と接触感染です。マスクの着用と手洗い・消毒が基本です。対面での食事を避け、三密を守れば感染のリスクは下がります。人と人とが接近したら伝染するわけではありません。前頭前野を働かせ、偏桃体の動きに支配されるのでなくコントロールするようにしましょう。

新型コロナ感染予防の国民的取り組みの効果からか、今年のインフルエンザが前年の6割に激減しています。コロナの予防策といっしょだからです。メディアで判断材料となる数値もようやく発表されるようになってきました。一時より再生産数が下がっているのも嬉しい情報です。頭をはたらかせて不安を取り除き、新しい生活スタイルを確立しながら暗闇から抜け出しましょう。

*クライシスサイコロジーとは/クライシスは「危機」「重大局面」、サイコロジーは「心理」「心理学」という意味で用いています。クライシスサイコロジーは機能脳科学者が提唱する新たな学問体系で、感染症流行や災害時の対応を心理面からアプローチするものです。

寄稿・文責: ゲストライター: 太田秋夫さん/HopeApple(穂保被災者支援チーム)代表、脳力開花研究所 クライシスサイコロジー アドバイザー 

ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。


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