空き家は、全国で820万戸といわれ、長野市では、住んでいない家は、約2万5000戸で全体の14・5%。その内、管理されていない家は約8000戸。さて、市の空き家対策をどうすればいいのでしょうか。
人口減少や高齢化などに伴い、急速に空き家が増加傾向にあり、空き家は、防火・防犯・衛生・景観の面で、地域の生活環境に深刻な影響を及ぼしています。平成27年5月施行の空家法(空家対策の推進に関する特別措置法)にあわせ、市では29年4月より空家等対策計画(案)が審議され、今年1月に決定公開されています。
不肖、私も協議会審議委員として加わり、NPOの生活支援活動で訪れた数百の経験を元に、提案発言をさせていただきました。中山間地と平地部とを分けて考える必要があるとの発言をし、調査統計・諸対策に採用されました。
現実的な提案として一部の空き家は、1人暮らしのお年寄りや、子育て世帯向けに、公的賃貸住宅として登録活用し、改修費の相当部分や家賃を補助すれば、一石二鳥と考えます。
子ども食堂の話し合いで、収入の少ない若い母親から「広い庭の土の上で子どもを育てることが夢だ」と言われ、その通りだと思いました。片や、夫を亡くした1人暮らしのおばあちゃんにとっては、草木に悩みの多い広い庭など手に負えず、雪かきもいらない狭いマンションに移りたいというのは当然です。
なんと矛盾が反転一致するのでしょうか。
市は全国に先駆けて、空き家を子育ての若者たちに提供して人口増加を図るべきです。高齢者持ち主や相続した方たちが、手に余り放置した多くの空き家問題の解決にもなります。
また、市内55の小学校に最低1つ、子どもたちとお年寄りが交流できる居場所があればより良いと考えます。ですから、なるべく小学校近くのわかりやすい空き家か、空き店舗があれば、行政が借用・回収し提供して行くことも良いのではないでしょうか。
私たちNPOは、JR三才駅前会館のそば店舗跡を改修し、信州子ども食堂・高齢者との三世代ごいっしょ食堂・高齢者の「居場所づくりと出番の拠点」をオープンしました。
広い空き家と高齢者たちは、見方を変えれば少子高齢化対策の切り札となり、賢い利活用を政策化すれば、福祉住環境の整備こそがキーとなり得ると考えています。
執筆: NPO法人ホットラインながの理事長 井出光人
長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2018年4月17日掲載