今、学校の枠を飛び出し、ボランティアや社会活動などさまざまなことへチャレンジする学生が増えています。学生団体として多人数での活動も多くなり、地域をまたいだ交流も多くなることで、仲間づくりなどに苦慮する人も多く見られます。
「どうやってメンバーをまとめていくのか分からなくて不安」、「せっかく活動をはじめたのに、メンバー間の温度差があって思うように進まない」、そんな悩みをもった人の参考になるようにと、初心者でもわかりやすいコミュニティづくりや仲間づくりの講座「NPOステップアップ講座 コミュニティマネジメント 猫でもわかるチームビルディング」が2021年9月23日(木・祝日)、長野市市民協働サポートセンターの主催で開かれました。

会議室に集まった参加者とオンライン参加者がつながるハイブリット形式の講座

参加者は、長野市もんぜんぷら座の会場に集まった12人と、オンラインで参加する12人を交えた合計24人のハイブリッド形式。防災・減災活動に取り組む高校生グループユースリーチのメンバーや、ぼかし肥料の作り方を学校の生徒などに教えているNPO法人地球環境フォーラム長野、であう・つながる・創造するをキーワードに市民総参加で持続可能なまちづくりをめざしている茅野市市民活動センターゆいわーく茅野など、多彩な分野から幅広い年齢層の人が参加していました。

講師にはコミュニティ運営に関わる非営利組織を支援しているNPO法人CRファクトリーの代表理事 呉 哲煥(ご てつあき)さんがリモートで登壇しました。

「すべての人が居場所と仲間を持って心豊かに生きる社会」の実現が使命という呉哲煥さん

講座のはじめは、医療的な統計データなどをもとにした市民活動やコミュニティ活動の重要性。家族以外の人との交流が週1回未満の高齢者は「健康を害するリスクが高い」。65歳以上の男性で社会参加していない人は、参加している人に比べて「うつになるリスクが7倍」などのデータが示されました。

コミュニティは健康面からみても重要とのこと。行政が行う「共助」と、自らが行う「自助」の間にある「共助」や「互助」が市民活動やコミュニティ活動に関わる部分になるので、こうした活動を豊かにしていくことが、多くの人に幸せをもたらすためにも大切だとの話がありました。

感想の共有タイムでは「私たちの活動は小さいけれども、行政の施策と同じくらい大切なものだと感じた」、「私自身、サークルに入ってから自分の心が徐々に満たされていくことを実感している。話を聞いて自分の感覚と一致したのでとても納得できた」などの声がありました。

続いて「自分の種を多角的に探る」と題して、自分自身のことを探る話とワークショップ。自分が持つ強みや、やりたいことを紙に書き出して、それが「活動が楽しい」と思う気持とどのように関係しているのか掘り下げて考えました。
考えを発表した「子ども食堂をやりたい」と考えている若者に対して講師の呉さんは「コミュニケーションが楽しいと感じるというのは、子ども食堂に向いていると思います。今にもはじめそうな勢いですね」とコメントしていました。

そして、呉さんが話す「コミュニティマネジメントの基本技」へと続きます。
・メンバーがミーティングに出てこない
・連絡をしても返事が遅い
・新しいメンバーが入って来ない、定着しない
・活動のスピードが上がらない、成果が出ないなど

日頃の活動によくある「コミュニティあるある」を例に、メンバー間にある温度差や、リーダーが感じる孤独に対する考え方、新たな人をどう巻き込んで主体的な動きをするメンバーに育てていくかなどの方法を学びました。 参加者は「あるある」の場面に、大きくうなずいたり、苦笑いしたり。これらに対する処方箋的な内容が大いに参考になったようです。

グループに分かれて自分がやりたいことや強みなどを発表し合ったワークショップ

今回のコミュニティマネジメント講座は「猫でもわかる」初級編。年1回の予定で開催し、次回は中級編の内容になるとのこと。講座を企画した長野市市民協働サポートセンターの田中一樹さんは「物事に対する温度差というのは団体運営で常に付きまとうものです。同じ団体内であっても、同じ方向を向き、思いや理念を共有し相互理解をするということはとても難しいこと。自分一人が頑張るのではなく、だれにも何かしらの役割を持たせることが大切で、思いを一緒に育むことが必要だと改めて感じることができました。学生も交え、このような形でいっしょに学ぶことがあまりないので、多世代交流やパートナシップ形成の意味でも大変意味がある講座になりました」と感想を話しました。

(取材:亀垣嘉明、編集:吉田百助)