「コミュニティフリッジ(地域の冷蔵庫)」とは何か。英国で過去5年ほどで100カ所近い場所が誕生している。SDGsのターゲットにもある「飢餓をなくす」ための取り組みとしてスタートした。あまった食べ物を企業や個人が寄付し、食べ物を買うお金が足りない人が持って行かれる仕組みだ。もともと英国は冷凍食品や缶詰・瓶詰などの加工食品が身近なため、日本ほど賞味期限を気にせずこの運動が広がっていったのではと推察できる。

日本でも貧困とフードロスを同時期解決できるしくみとしてフードバンクや、子ども食堂などがある。しかし、自分から声を上げられない当事者にどう届けるか、また日本人の食生活に必要不可欠な生鮮食品の提供が課題の一つだ。

NPO代表理事の石原達也さん

岡山NPOセンターでは、ICTを活用したコミュニティフリッジを岡山市の中心部、北長瀬でスタートした。市と連携してアンケートによるニーズをもとに、一人親家庭で食べ物に困っている家庭を登録。ショッピングモールの一角で、24時間いつでもスマートフォンを使って開錠し利用できる仕組みだ。必要な食品に付いたQRコードを読み込んで持ち出す。「米が大量に来ました」「キャベツが200個あり、今日中に取りに来てください」など、利用者へ一斉送信でき、フードロスはほぼないという。

主催NPO代表理事の石原達也さんたちは、このノウハウを仕組み化して、全国に広めている。2023年1月現在7カ所となっている。

1月15日、9人の有志でつくる「論語と算盤で考えるSDGs」研究会が企画したオンラインでの講座で、石原さんの運営する「コミュニティフリッジ北長瀬」をはじめ埼玉県草加市、大阪府寝屋川市など5つの運営団体が事例発表した。

成功の鍵は、他の支援事業での人脈を通じた寄付先とのネットワークや、行政と連携した利用者とのアクセス、他事業と兼務するなどスタッフの確保、企業の協力による場所や、冷蔵庫・棚などの設置だった。

しかし本県は地理的に広大でこのままの導入は難しい。長野県NPOセンターによると、行政や子ども食堂運営者らに働きかけ、県内各所に食品庫的な場が作れないか模索中とのこと。ぜひ企業にもSDGsの取り組みの一環としてコミュニティフリッジに目を向けてほしい。

2023年1月31日長野市民新聞コラム掲載 執筆:寺澤順子(ナガクル編集デスク)