学生も団体も経験値を上げる「まるキャン」と「ユースリーチ」

地域の学生と団体が関わって、さまざまな出会いと経験が得られる「ながの地域まるごとキャンパス」と「ユースリーチ」の両事業。取組開始から5年になりました。

「学校以外に居場所ができたのが、うれしかった」
「やることができた。任されることで自信を持てた。自分のカベを超えられた」
「いろいろな人と接して興味と関心の幅が広がった。人と関わることが好きになった」
「外から刺激をもらって自分の見方や感じ方が変わった」
「やりたかったことが実現できた。誰かに伝えたいと思った」
「ボランティアは楽しい」

2023年1月14日、長野市生涯学習センター第学習室で開かれた「ながの地域まるごとキャンパス×ユースリーチ『NEXT STEP~報告会と交流会で次の自分へ~』」に参加した学生たちの声です。高校生・大学生あわせて15名と参加企画を提供したNPOや団体の関係者など約30名が、それぞれの事業成果をシェアしました。

テーブルごと学生と団体が交流できるよう配置された会場

ながの地域まるごとキャンパス(愛称:まるキャン)は、長野市市民協働サポートセンターを窓口にする実行委員会で運営。活動に学生の参加を望むNPOなどの団体から「提案」を集めて周辺の高校へ広く案内し、参加したいという学生とを結び付けています。
2022年度は、新規12団体を含む31団体から提案があった活動に150名の学生が参加し、取組を盛り上げる学生ボランティア「まるキャン向上委員会」も立ち上がりました。
提案団体数が増えるとともに、参加する学生の学校数も増え、取り組みのすそ野が広がりました。

ユースリーチ~youth reach~は、特定非営利活動法人長野県NPOセンターが取り組む、長野市とその近隣の高校生・大学生を対象とした次世代人材育成事業です。学生が自然環境や長野の将来などを自らの課題として捉え、SDGs実現のためのアクションプランを企画・実行できるようサポートしています。

団体と学生それぞれの思いと共通の課題

第一部は、学生を受け入れた地域まるごとキャンパス提案団体のうち、10団体からの事例発表とテーブルごとのフリートーク。学生といっしょに取り組んだことや、学生と活動してよかったこと、課題などを話し合いました。

最初は「学生との活動に興味はあるが、どうしたらよいのかわからない」といった団体が、学生を受け入れた結果、若い力・アイデア・感性が入ることで活動が盛り上がり、団体の活動を見つめ直すきっかけになった。

学生は「任される」ことで自信を得て、地域の一員として楽しむことができた。

双方の課題は、連絡の取り方とスケジュールの調整。電話かメールか、それともLINEか。学生は思った以上に忙しく、夜しか連絡が取れなかった。団体は秋のイベント・シーズンに手が欲しいと思ったら、学生も秋が忙しかった、など活動を振り返りながら感想と課題を話し合いました。

第二部は、地域まるごとキャンパスとユースリーチからの活動報告。

ユースリーチは、特に盛り上がった8月のキャンプと、演劇公演「カイミトラの音楽隊」を行ったShine Projectなど、活動の様子が写真と動画で紹介されました。

ユースリーチキャンプは、5月に運営メンバーを募集して以来、実施までに2回の全体会議と5回の運営会議を重ねて企画と行程を練り上げてきました。当初は宿泊を伴う2日間の予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて日帰りに変更しました。参加者の感想は、全員が「満足」または「とても満足」という結果。農場での薪割りを楽しんだり、中山間地の現状などを知る機会になりました。

Shine Projectは、「みんな輝く!シャイな人も輝ける!」を合言葉に、みんなで喜び合える場をつくるプロジェクトです。21年8月にスタートした演劇プロジェクトは、話し合いと練習を重ねて舞台を創り上げ、22年3月27日に長野市芸術館で公演しました。約100名の観劇者に大きな感動を与え、メンバーは「最高に楽しかった!」と輝く笑顔を見せました。ほかにも、おしゃべり会やどんぐりのアクセサリーづくりなど、コミュニケーションをとることが苦手といった人でも参加できるプログラムを行ってきました。

キーワードは【越境】

パネルトークは「コミュニティづくりの達人」と称されるNPO法人CRファクトリー代表の呉哲煥さん(写真下)を迎え、学生と団体代表を交えたトークに続いて、テーブルごとにフリーでトークしました。

話の中に出てきたキーワードの一つは【越境】。普段とちがう場、いつもと違うメンバーの中に自分を置くことで得られる刺激と体験が、自分の興味と社会を広げること。学校では、同世代だけのつきあい。でも、社会に出れば老若男女さまざまな人との出会いがある。

そして、学生も社会人も、もうひとつの【居場所】を持つことでワーク・ライフ・コミュニティ・バランスがとれること。また、参加者同士の【関係の質を高める】と、より楽しくなり、成果も上がることなどを学びました。


経験値を上げた学生が教えてくれた「ふたりの自分」

もし「やるか、やらないか」に迷う時があったら、ふたりの自分を想像してみること。
ひとりは、緊張しながらも勇気ある一歩を踏み出した「やった自分」。
もうひとりは怖がるだけで、いつまでも歩み出せないままの「やらなかった自分」。

いつもの場所、いつものメンバー、いつもの行動という「井の中」にいたら「大海」を知ることはない。いつもとちがう水に飛び込む刺激が、新しい楽しさと感動を与えてくれる。

学生たちの感想を思い返すほど、「やってみよう」と思えてきます。

長野で経験値を上げた学生が、進学や就職へとそれぞれの道を進み、さらにレベルを上げて、いつかまた長野に戻ってきたらいい。

若者たちの将来と地域の明るい未来を夢見る壮大な「ながの地域まるごとキャンパス」と「ユースリーチ」。報告会・交流会での語らいも一つの「経験」として活きていくことでしょう。

まるキャンの「まる」っぽい感じをみんなで表現した記念写真

<取材・編集>ソーシャルライター 吉田百助