長野県内ボランティア関係者一同に! 被災経験から、協働で「まちづくり」を!

人は誰もが幸せになるために生まれてきた。

By 天野和彦さん(福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任教授)

ビートルズの名曲「イマジン」をBGMに始まったフォーラムの基調講演。東日本大震災から10年、講師の天野和彦さんは、福島市で災害の惨状を目の当たりにしてきました。その中で、支援や復興に、どんなことが必要か? 長年全国を回って訴え続けてきました。長野県も相次ぐ災害の中で、復興やまちづくり活動をしてきた関係者たちが、オンラインで一同に集まり、天野さんの話に聞き入りました。

オープニングでは、各方面から問題提起が!

長野県で初めて開催する「長野県 まちづくり・ボランティアフォーラム2021」は、2022年の2月5日にオンラインで開催し、全県から市町村の社会福祉協議会職員、福祉施設、民生児童委員ら、社会教育や地域福祉の関係者100人以上が参加しました。

👉フォーラムの内容はナガクルの以前の記事をご覧ください

テーマは「学びから実践へ 協働で取り組む ”まちづくり”」です。午前中は、社会福祉士で東洋大学教授の加山弾さんがコーディネーターを務め、各方面から問題提起と基調講演を行いました。

問題提起「社会教育と地域福祉による”まちづくり”の可能性」では3人が登壇しました。安曇野市社協山岸久美子さんが「社協がやってはいけないことは、人を不幸にすること、困っていることを見過ごすこと、それ以外は何でもやっていい」と強調。そして県社会教育委員連絡協議会会長の小池玲子さんは、「人を攻撃する社会になっている。育ってきた環境、辛い事情が背景にある。社会教育がもっとできれば」と発言。続いて信州Gプロジェクト代表でこども食堂の活動をする傳田清さんは、「フードバンクにも協力しているが、コロナでの損失は大きい。外に出ない子がいい子といわれる状況に。子どもたちを何とかしないと」と現状を話しました。

加山さんは、「社会教育・地域福祉の目指すところは一緒で、地域を良くしていきたいという同じベクトルに向かっている。子どもたちを事件や事故から守りたい。そして災害や高齢化など課題がある中で、持続可能な地域社会であり続けたい。その上位目標を元にやっていく機会を目指したい」と語りました。

基調講演では天野ブシが炸裂!

冒頭で紹介した天野和彦さんの基調講演について紹介します。改めて「学ぶ」を考えるということで、谷川俊太郎の詩「学ぶ」の朗読からスタートしました。そして、介護現場の日常の様子を紹介しました。

安心して暮らせる地域とは何か・・・。
人は、誰もが幸せになるために生まれてきた。
大事なことは、「想像力」イマジネーションを働かせること。

10年経っても、東日本大震災50万人はまだ避難生活をしています。熊本でも18万人の被災。未だ仮設住宅に入っている人がいます。そして、災害の規模が大きくなり、今後は700万、950万人の災害が未来には来る可能性があるのです。そして、長野県の災害の経験、教訓から学んでいく必要があります。これからは、モノの防災から、考え方の防災へシフトしていかなければならないのです。

天野さんは、イタリアでの災害支援の様子を視察し、日本の避難所と比較し、報告しました。

日本では、体育館や公民館の床の上に布団を敷いて避難します。90年前と避難所の環境が変わりません。
一方で、イタリアでは考え方が違います。多目的トイレがコンテナで到着します。そして1000食作れるキッチンカーが整備され、食事は普段と変わらない温かいものにワインまでつきます。ベッドは避難所に48時間以内に届きます。

そして、天野さんは災害援助の「スフィア基準」を紹介。災害援助は権利であり、個人の尊厳と人権保障するというものと説明しました。人権とは、誰もが人間らしく、幸せに生きる権利で「人間が人間らしく幸せに生きていくために不可欠な権利及び自由」なのです。

阪神淡路のとき、一人暮らしのお年寄りが仮設住宅に移った後、
避難所にもう一度戻りたかったと言い残して亡くなった。
「俺寂しい、寂しい」と言って死んでいった。
一人にしないことを大事に支援しなければならない。
交流と自治が大事。交流の場の提供と自治活動の促進が大事。
管理からは何も生まれない。

公民館が最も多い県。自治を大事にしてきたのが長野県ではどうなのか、との問いを投げかけました。そして、人は寂しいと死ぬ。人は一人では生きられない。絆が大事。人と人との協働が大事と参加者に呼びかけました。

最後に協働・パートナーシップの重要性を確認

6つの分科会を終え、最後に全員でシェアし合いました。
天野講師からは「コロナを乗り越えて、シェアして俯瞰できた。知恵が集まっている。固定概念に囚われない活動が大事で、垣根を越えて協働を進めていくために、自分の言葉で語れるようになり、周りの仲間たちと確認する場になった」とコメントしました。

加山コーディネーターからは「突破力のエネルギーに満ちたディスカッションだった。理念を共有できた。これからアクションプランを作って行動に移していくという次のステップへ」と締め括りました。

最後に、冒頭で課題提起した一人、傳田さんより「市町村社協77箇所、ボランティアが3万人、NPOや社会福祉法人もある。10万人、20万人が動けば長野県が変わるだろう。まるで、小さな雪だるまを作って転がしていき、ビッグ雪だるまを作るように。コロナだからこそオンラインでみんなでつながれた。ピンチをチャンスに変えて行こう! 」とエールを送りました。 

取材・文・編集/寺澤順子(ナガクル編集デスク)