SDGsコラム20 平和と公正は人権につながっている

長野県の未成年者の自殺死亡率は、総務省の人口動態統計で平成24〜28年の平均では、都道府県別でもっとも高い水準にあるとされています。
「平和と公正をすべての人に」

長野県の未成年者の自殺死亡率は、総務省の人口動態統計で平成24〜28年の平均では、都道府県別でもっとも高い水準にあるとされています。また、15歳から39歳の死因の半数が自殺です。県の精神保健センターによると、2021年までの過去5年間、毎年県内の自殺者合計は300人を上回っています。

さて、SDGsの目標16は「平和と公正をすべての人に」となっています。今年6月にSDGsの目標達成の評価レポートでは、日本のランキングは世界で18位。ゴール別では今年この「目標16が日本で達成された」と評価されています。しかし本当に達成されたのでしょうか。

16の具体的な目標には「全ての形態の暴力と暴力に関連する死亡率を大幅に減少させることや、子どもに対する虐待や搾取などをなくす」としています。

一例ですが、最近「ヤングケアラー」という言葉が、報道で注目を浴びています。病気や障がいのある家族の介護を大人と同じように担っている未成年のことです。そのために、時間が奪われ、やりたいことができない。経済的な問題も絡み、思うような進路を選べなかったり、助けを求められない。というように、子どもの権利が奪われているというものです。今年9月県教委が高校生に調査しましたが、「自身がヤングケアラーに該当する自覚がある」と答えた生徒が全日制で1・6%、定時制で3・0%という結果に驚かされました。

長野県の未成年者の自殺死亡率は、総務省の人口動態統計で平成24〜28年の平均では、都道府県別でもっとも高い水準にあるとされています。
イメージ写真(筆者撮影)

また厚生労働省の平成30年の調査によると、児童養護施設では全国で2万7千人、県内で約500人の児童がすごしています。その内、虐待を経験した児童が全体の65%を占めているというのです。育児放棄や心理的虐待、身体的虐待がその要素となっています。つまり、外部に閉じられた家庭という世界で、抵抗できないままに虐待に遭ったり、介護や家事などの労働をせざるを得ない状況にある未成年が私たちの身近にも少なからずいるということです。

更に、この目標16で見落とされがちなのは「全ての人々が司法にアクセスでき、効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築すること」という一節です。「人権とは人間が人間らしく生きる権利で生まれながらに持つ権利」と法務省は説明しています。自殺をなくし、誰もが幸福を追求できる社会はまだまだ遠いと感じています。

2021年11月23日長野市民新聞コラム掲載 執筆:寺澤順子(ナガクル編集デスク)