現在、移行期支援というワードが全国の小児医療の中で大きな話題となっている。
小児期に慢性的な治療を要する病気を発症した患者が成長し、成人科医療へとシフトしていくことをいう。近年の医療技術や薬品技術等の進歩により、今まで治らないとされてきていた小児慢性期疾病(子どもの時より長く治療や管理が必要な病気)が緩和、治療できるようになってきた。
一方、小児から成人への切り替えができていないため、現在小児科が飽和状態になっている。
具体的な数としては、2016年に全国で多くの難治患児を診る医療機関5施設を調査した結果、通院入院含めた全患者の内、移行期支援の対象者とされている15歳~19歳が8.5%、20歳以上は4.8%となっている。その数は年々増えてきており、30、40代になっても小児科に通っている人もいる。
移行期医療の課題は、医療側と患者側の両面にある。
医療者側の主な課題は、①患者の加齢に伴う症状や合併症の変化への対応が確立されていない、②小児科の専門外である子どもにはみられない病気(成人病等)を発症した場合の対処が十分できない、③先天性の難治疾病を診る成人科医師が少ないなどが挙げられる。
患者側の課題は、①幼い時から信頼している医師にずっと診てもらいたいという希望と、いつまでも小児科には通いたくないという葛藤②年齢が成人領域に入ったという理由で主治医を変えさせられるのではないか不安などが挙げられる。患者・家族ともに幼い頃からの環境からの脱却ができていないことも理由のひとつだ。
移行期には成人科の医師に対する小児慢性疾患への知識・経験の付与、小児科医と成人科医師との連携、移行に向けた患者・家族への教育などが求められる。
症状をトータルで診る小児科と異なり、成人科は各科の専門性が強い。
小児科の時は、主の病気のついでに別の症状も診てくれることがあるが、成人では難しい。そのたびに別な科を受診する必要がある。
採血や点滴をとる時も、小児科では針を一度刺して、そこから採血と点滴の確保を両方行うが、成人科では採血と点滴をとるのは別なことが多い。
こうした小児科と成人科との間にあるギャップに悩む患者や家族もいるのだ。
長野県立こども病院では2018年4月2日より、「成人移行期支援外来(現在循環器の元木医師の外来については成人先天性心疾患外来(成人先天心)へ名称変更された)」が始まった。患児が自分の病気と向き合いながら理解を深め、成人科・小児科の医療者と連携しながら、自立と社会参画を計画的に支援していくことが期待されている。
(文責:西山春久)
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