#「サザエさん」から考える 家族のカタチと姓の選択

新しい家族の未来へ~選択的夫婦別姓制度への期待~

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文責:村上裕紀子(ナガクルソーシャルライター)
 2020.12.18

テレビアニメ「サザエさん」は、1969年に放送が開始されて以来、51年続く長寿番組で、日本人なら全国どこでも、子どものころ、誰もが慣れ親しんだアニメであろう。

いま、視聴者はサザエさん一家を違和感なく受け入れているのだろうか?

サザエさん一家は「磯野」姓と「フグ田」姓が同居する3世代家族であるが、今改めて見てみると、その家族構成とそれぞれのキャラクターが、絶妙なバランスを保ち、時代を物語っているように思える。特にフグ田姓のマスオの存在は欠かせない。1970年代までは、筆者の住んでいた長野県南信地域の中山間地域でも、隣り近所を見回すと3世代同居世帯はごく一般的であった。

しかし、今はどうだろう? 妻の両親との同居や姓の選択など、家族を取り巻く状況が、時代とともに変化しているのではないか。変わりゆく家族のカタチと姓の選択の関係を統計データを用いて掘り下げてみたい。

変わる家族単位、変わらない姓の選択

2019年の国民生活基礎調査(厚生労働省)によると、全国の全世帯数に占める「三世代同居世帯」の割合は5.1%。33年前の1986年は15.3%であり、比較すると30年間で10ポイント以上減少している。(表1)

一方、増加しているのが「単独世帯」と「夫婦のみ世帯」。それぞれ同年の比較で「単独世帯」は18.2%が28.8%に、「夫婦のみ世帯」は14.4%が24.4%に増加している。「単独世帯」と「夫婦のみ世帯」が全世帯の半数以上を占めていることになる。

しかし、これを独身者と子どものいない夫婦が増えたと単純にみるわけにはいかない。その理由は「高齢者世帯」の割合の増加である。1986年に6.3%だった「高齢者世帯」割合は、2019年には28.7%と、実に22ポイント以上も増加しているのだ。「単独世帯」と「夫婦のみ世帯」の増加割合は「高齢者世帯」の増加割合とほぼ一致する。つまり、高齢夫婦世帯、高齢独居世帯が増加しているのだと考えられる。家族の単位は数十年でかなり変化していることが明らかである。

では、婚姻の際の姓(氏)の選択はどうだろうか。

2018年の人口動態統計「婚姻に関する統計」では、婚姻の際に妻の姓を選択した夫婦はたったの4.3%で、1975年の1.2%からわずか3.1ポイントしか増加していない。残りの95%以上は夫の姓を選択していることになる。「女性は嫁ぐのが一般的」という固定概念が、現代の多様化するライフスタイルの社会にあってもなお、男性、女性共に一般的な認識であることが読み取れる。極論であるが、出生率が1.36(2019年)の時代に、大半の夫婦が夫の姓を選択するのなら、女性の姓はどんどん消滅していくことになる。

家族に関する地域性

急激に減少していることがわかった三世代同居世帯について、都道府県比較をしてみると婚姻時の姓の選択と興味深い類似点があることがわかった。それぞれの上位と下位の順位を見てみよう。

三世代同居率も妻の姓選択率も東高西低の傾向が顕著で、特に上位では同じ顔触れの都道府県が大半を占める(網掛け部分)。上位に東北地方の県が多いこと、下位に九州地方の県が多いことも地域性を表す大きな特徴である。その理由まではわからないが、三世代同居率が高い地域は婚姻の際に妻の姓を選択する夫婦が多い傾向があるということがデータに表れている。「家を継ぐ」という風土が影響しているのかもしれない。

いずれにしても、婚姻姓の選択率は三世代同居率ほどの都道府県間での差はなく、世帯の形が大きく変化した今の状況にあってもなお、夫の姓を選択することは全国共通の固定概念となっているようである。

長野県内における家族のカタチ

では、長野県内の状況はどうだろうか。

長野県は、三世代同居率は9.9%で13位、妻の姓選択率は5.5%で12位であり、両方とも高い順位にある。

残念ながら市町村ごとの婚姻時の姓の選択についてのデータが存在しないため、三世代同居率と妻の親との同居率という別の視点で比較してみた。

表4と表5、比較してみると一目瞭然であるが、上位の市町村がほぼ同じ顔触れとなっている。全市町村の両方の数値をグラフ化すると次のようになる。

三世代同居率と妻の親との同居率はゆるやかな相関関係が見て取れ、グラフ右上に位置するグループは南信地域の市町村割合が高くなっている。筆者は南信地域の出身であり、長女である筆者の姓を夫が婚姻時に選択した経験から考えても、このデータは「家を継ぐ」慣習が表れた結果だと納得できる。

しかし、ここで着目すべきは、三世代同居世帯がどんどん減っていることである。グラフ左下に位置するグループは、そもそも三世代同居世帯や親と同居する世帯がすでに少ないのではないか。家族の在り方が50年前とは変わってきている。

こうした状況で、姓の選択が、これまでの制度で取り扱われることが適当なのだろうか。

自由な生き方を選択するために

いま、日本は人口減少・超高齢化社会に突入しており、その出口は全く見えない。前記したように、合計特殊出生率は1.36(2019年)と減少が止まらない。にもかかわらず、日本全体の世帯数だけは年々増加しているのである。家族の単位がどんどん小さくなっていく。急激に変化する家族の在り方に制度がついていっていないのが現状ではないだろうか。

「選択的夫婦別姓制度」については、平成8年の法制審議会で導入が提言されている。それからすでに20年以上経過しているのだ。導入のメリットとして、姓を変えないことで、手続きの負担や仕事上の支障が解消できるという声をよく聞く。しかし、それだけではなく、根源的にこれまでの「家」制度的な慣習からくる姓の選択が、現状の家族のカタチや労働環境、そして当事者の意識に合っていないのではないか。

どちらの姓を名乗るかをもっと自由に、そして別々でも良いという選択肢があることで、どちらかが窮屈な思いをせずに生きられる社会になって欲しい。

菅内閣発足以降、自民党内で選択的夫婦別姓の議論が加速していると聞く。全国の地方議会では、早期実現や議論を求める意見書が可決される議会が増えており、長野県内でも、上田市議会が「選択的夫婦別姓制度について議論を求める意見書」を令和2年9月に、長野市議会が「選択的夫婦別姓制度について法制化を求める意見書」を令和2年12月に可決している。

この動きが今後さらに加速するのかどうかはまだ見えないが、選択的夫婦別姓制度が実現した日本には、「家」の結びつきとは違う、もっと自由な「家族」のカタチが見えてくるのではなかろうか。

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