もし自分が、自分の子どもが、孫が、
ある突然学校に行かなくなったら、行けなくなったら。
どうなってしまうんだろうか。
本記事では、不登校の現状と、県内での取り組みを2例紹介していく。
文部科学省が毎年実施している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」では「小・中学校における不登校児童生徒数は164,528人(前年度144,031人)であり,前年度から20,497人(約14%)増加。在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は1.7%(前年度1.5%)。過去5年間の傾向として,小・中学校ともに不登校児童生徒数及びその割合は増加している」としている。
ただし、この調査の対象となっている児童生徒は、「何らかの 30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を. 心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、除いたもの」と文科省によって定義されており、保健室登校や欠席日数が29日以下の場合は含まれておらず、また「明確な理由がなく学校へ行かれない」児童生徒も現実でいることから、実際の数は164,528人よりも多いのではないかと言われている。
調査の中で不登校の理由として、学校に係る状況(いじめ、友人関係、教職員との関係、学業の不振、進路に係わる不安、クラブ活動・部活動等への不適応、学校のきまり等をめぐる問題、入学・転編入学進学時の不適応)と家庭に係る状況に分けられている。
不登校の理由として70%以上が学校に係る状況になっており、内訳は友人関係、学業の不振と続く。
長野県も例外ではない。
平成30年度調査では、小中学校合計で在籍比1.95%と全国平均よりも多い。
県や市町村は居場所作りや相談窓口を開設、運営しているが、不登校児童生徒は増え続けている。
当事者が立ち上がった!! 不登校への取り組み
2019年8月18日 #不登校は不幸じゃない というイベントが全国100箇所以上で行われた。
発起人は、10年間の不登校経験を経て、現在は実業家として全国で活動している小幡和輝氏(和歌山県)。長野県では千曲市、佐久市、木曽町の3箇所で開かれた。
佐久の様子を伝えていく。
会場は佐久市の旅館・野澤館さん
イベントのスタッフには、子どもや自分が過去に不登校だった人たちが多くいた。
実際に今不登校の子どもをもつ親御さんの話を聞く。
「1人じゃないとわかり、安心した」と涙ぐむ親御さんもいた。
大人が参加している間、スタッフの大越要さんや他のスタッフが、子どもと話をしたり、別室でゲームをしたりしていた。
佐久では当日来られらなかった人たちや、来てくれた人の居場所として、年に数回集まりを主催している。
「hanpo」長野で暮すマイノリティを生きる僕らのために、
僕らが作るフリーペーパー
hanpoは、不登校をはじめとする、難病、障がい、LGBTQなど一般にマイノリティ当事者が書いた記事が載っているフリーペーパーだ。
毎回5000部~発行し、県内各所のフリースペースや、病院、カフェなどに置かれている。
一歩ではなく、半歩。
今苦しんでいる子どもたちに、自分たちの経験を伝える。
3,4ヶ月に一度のペースで発行し、現在までに3部(4部制作中)が発行されている。
記事の内容は「普通」「夜」など毎回テーマごと異なる。
「必要としている子に届くよう、これからも継続して発行していきたい」
と編集長であり、不登校の元当事者でもある草深将雄氏は話す。
なお、費用は寄付や制作スタッフの自己負担でまかなわれている。
寄付は随時募集中。寄付先は以下
「ゆうちょ銀行 hanpo[ハンポ] 店名059 口座番号00510-5-0053632」
まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
文部科学省は「平成28年9月14日付 不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」において『(3)不登校とは,多様な要因・背景により,結果として不登校状態になっているということであり,その行為を「問題行動」と判断してはならない。不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し,学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが,児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要 であり,周囲の大人との信頼関係を構築していく過程が社会性や人間性の伸長につながり,結果として児童生徒の社会的自立につながることが期待される。』という通知を各都道府県教育委員長や知事宛に出している。
また、文部科学省は 令和元年10月25日付 不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」において、全国の知事や教育庁等宛で基本的な考え方の見直しを行った。
そこでは「(1)支援の視点
不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある」とあり、50年以上続けてきた「学校復帰を目的とする方針」の転換を行った。
これは大変大きな一歩であることに違いはない。
ただ、「一方で、,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。」と不登校におけるリスクの存在においても同文で言及している。
長野県でも、『「不登校への対応の手引き」H31 改訂版』を作成。
これは県教育委員会が実施した「不登校当事者である子どもたちに対するアンケート調査」を元に作成したものだ。
手引きでは「これまでの不登校対策は何か根本的に違っていたのでは」「学校以外の多様な学びの場への支援が不十分なのではないか?」といった問題意識を提示し、「科学的知見活用した取り組みを含め、学校そのものを変えていくことが必要である」「子どもたちの社会的自立を目指し、学校以外の多様な学びの場と連携した取り組みが必要である」という従来の在り方を見直す方向性を明示している。
アンケートと記事の序盤で示した児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果との違いで特徴的なものは、不登校になった要因だ。
アンケートでは学業の不振(30.6%)、教職員との関係(27.4%)、友人関係(24.2%)、入学・転入・進級(19.4%)となっており、家庭に係る状況は一番低く9.7%に過ぎない。
一方、問題調査結果では家庭に係る状況(43.4%)、学業の不振(38.8%)、友人関係(30%)となっている。
この開きは何なのだろうか。
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果は学校側が回答をしている。学校側は不登校の要因の多くを「本人と家庭」の問題としているが、当事者は「学業と教職員の関係」と認識している。
今回の手引きでは、学校と当事者との意識の差を踏まえている。
だが、課題はまだまだ山積しているのではないだろうか。
県教委は不登校児童生徒への理解を示す姿勢を表しているが、実際に現場で子どもたちと係わる教職員や市町村教委への認識の変化はまだまだのように見受けられる。
せっかく県教委から不登校の子どもたちに寄り添った指針を出しても、市町村教委、現場へと降りてくるまでに先細りし、従来の考え方が席巻してはいないだろうか。
県教委は全県で4箇所ある教育事務所や総合教育センターなどで、いじめ不登校に係わる研修に取り組んでいるようだが、校務分掌上仕方なく参加するという認識の教職員はいないだろうか。
一つの提案として、中学校区単位で元当事者や、現に不登校の児童生徒を持つ保護者、支援者の話を聞くリアルな研修の機会を学期ごとに実施するのはどうだろう。
現場では自分のクラスの児童生徒が不登校になり、悩んでいる教員もいる。ただ、それをベテラン教員に相談しても「先生が頑張れ」のようにアドバイスにもならない言葉をもらい、結局何にもできず不甲斐なさにさいなまれているということも考えられる。
教職員も学びたいはずだ。
民間の活動の後押しする動きが地方公共団体でとられていき、「不登校」への認識が変わっていくなか、県民・市民も従来のような「問題行動」ではなく「選択肢の一つ」としていくの認識をしていく必要がある。
ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。