人と街を“のきした”でつなぐ(上田市)

おふるまい 12/31 18:00~ 鍋・そば どなたでも!!無料です!!

まちの一角に、こんな看板が出ていた。
しん―――と静まり返った2022年大みそかの夜。

場所は上田市海野町商店街(中央二丁目)にあるゲストハウス兼カフェの「犀の角(さいのつの)」。
12月31日から1月3日までの4日間、「おふるまい」として、寄せ鍋やそばなどの温かい食べ物、もち、食料品を無料で配布していた。

主催団体は「のきした」。年末年始に地域の人たちが集う場として開かれ、今年で3年目となる。
のきしたの運営には近隣のNPO法人をはじめ、社会福祉法人、一般事業者、地域の人たち50名以上が様々なかたちで携わっている。

筆者もそのなかの一人だ。

今回は、のきしたの重要な活動の一つである「おふるまい」を取材してきた。

薪ストーブの上で寄せ鍋を炊く

おふるまいで使われるものは、寄付と借りもので成り立っている。

白菜、大根、こんにゃく、そば、もち米、杵にうす、もち米を火で蒸す蒸し器。
器、割りばし、飲み物。
近隣住民や、のきしたのつながりから、たくさんの物品が集まった。

年末のおふるまいというと、生活に困窮している人やホームレスの人が対象になることがあるが、

ここでは「本当に困っている人」かどうかは問わないし、問われない。

温かさを求め、にぎやかさを求め。
何も求めていなくても、ふと足が向いた人もいるだろう。

いろいろな人が来ていた。ちょっと通りかかった人、親子連れ、学生、遠くから来たという仲間など。

4日間で、延べ150人ほどが来場した。

1月3日の最終日には餅つき大会が行われ、つきたての餅がふるまわれた。

歩き、走り、つなぐ 「いいな」と感じる場所

この日は、別所温泉から会場までの約14キロほどつなぐ「駅伝」も催された。
事前に募った参加メンバー数人が、歩いたり、走ったりしながらタスキをつないだ。
その模様は会場内のスクリーンに随時映され、「今どこ!?間に合うの!?」とハラハラしながら見ていた。無事に完走した際は、会場にいた全員で迎えた。

親戚の集まりのようだった。
ただし、血のつながりだけでなく、地縁のみでもない。
携わる人たちの様々な縁(えん)によってこの場はもたらされている。
民家の縁側の軒下のように、ちょっと寄っていって、ちょっとつまんで、話をして。
「あぁ…なんか、いいな」と感じられる場所だった。

【支援求む】寄付でつなぐ明日への希望の場所

のきしたは、地域に開くことでどんな人でも来やすい場を提供する一方、実際に支援が必要な人への活動も行っている。
困りごとを抱えた女性のための雨風しのげる宿「やどかりハウス」の運営である。

NPO法人場作りネットが犀の角との協働で、犀の角ゲストハウスの一部を必要な方へ1泊500円で提供しているものだ。

その資金も寄付や補助金でまかなわれているが、今後も同様の補助金が獲得できる見通しは立っていない。
収益を目的とした事業ではないため、寄付金を常時募集している。

あたたかい布団とご飯と、あたたかい人たちと。
ここを必要としている人がぬくもりに触れることで、静かにそしてゆっくりと、『自分は生きていてもいいんだ』と思い、明日への希望へとつなげていく。
「やどかりハウス」はそのような場所である。

私たちが普段見ている世界は、あまりに狭くそして小さい。
だけど、想像もできない世界や状況は常に隣にある。

取材執筆/さらみ(ナガクルソーシャルライター・のきしたメンバー)
「のきしたの活動にご協力いただけるようでしたら、下の寄付受付口座へ」

【寄付受付口座】

銀行名:長野県労働金庫(2966)
支店名:上田支店(374)
種別:普通 
口座番号:4069025
名義:特定非営利活動法人場作りネット 理事 羽田啓

写真提供:やぎかなこ(@g0hvpn)  のきした