「悩みは人に話すべしー男性の自殺について思うー」松村隆

私は「長野いのちの電話」での活動を続ける中で、どうして日本での男性の自殺者は女性の2倍にもなるのかと考えさせられてきた。男女で自殺者に差がないのは、中国などいくつかの国はあるが、他の国も圧倒的に男性の自殺が多い。

日本はジェンダーギャップ指数が150カ国余りの中で、120位という世界でも指折りの男性中心の社会である。男性中心が当たり前の日々の生活が、疑問を挟む余地もなく流れていく。

その中で、生まれた時から呪文のように男性は「男らしくしなさい」と「男らしさ」を求められ、「泣き言を言わない」、「弱音を吐かない」、「毅然としている」ことが「男らしさ」だと周りから刷り込まれる。問題や悩みを抱えた時にそれを人に話すことは「男らしさ」に反することになる。「男らしさ」を貫こうと悶々としていると出口の見えない闇の中で苦しみもがき、それが続くと耐えられなくもなる。男性・女性にかかわらず、こう言う状況が続くと死にたくなる人もでてくる。

そうなる前に手を打つ必要がある。長野いのちの電話の相談件数は女性からの相談が男性よりも多い。「死にたい」と訴える女性の相談は男性の2倍になる。しかし、実際に自殺する男性の数は女性の2倍となっている。


人は悩みを誰かに話すことで、抱えている問題を整理し、生きる道筋を見つける力を持っている。傾聴されることでストレスの軽減にもなり、よく眠れればエネルギーも湧いてくる。しかし、話さなければその効果は出てこない。いのちの電話は匿名で、なんでも話を聞いてくれる。悩みにぐるぐる巻きにならないうちにお話しすることをお勧めしたい。「男らしさ」を一旦棚上げし、毅然としていない自分のありのままの泣き言や弱音を吐いてみてはどうだろうか。

いのちの電話ではこのような機会を一人でも多くの人に提供していきたいと願っている。しかし、現状は傾聴する相談員が不足している。月2回電話の当番に入り、月1回継続研修に参加できる相談ボランティアを募集している。第25期相談員養成講座は4月2日から1年間の研修が計画されている。関心のある方はまず、公開講座(4〜6月)にお申込みいただきたい。

文責:社会福祉法人長野いのちの電話 事務局長 松村隆(まつむら たかし)
初出 : 長野市民新聞 NPOリレーコラム「空SORA」2021年3月19日掲載