物流のノウハウで農業者の青果集荷場を開始ー松本倉庫株式会社

見たこともないほどの巨大な倉庫、1986年築の3階建築建物で延床面積はなんと、3,300坪(約11,344㎡)。大型トラックが次々と品物を運んでくる。それを上手に専用リフトでキャッチし、倉庫の中に積み上げていく。そのスピードと正確さは圧巻だ。

流通団地配送センターの巨大な倉庫の前に、巨大なトラックがついて、次々と積み荷を降ろす

 

市民の知らない縁の下で物流を支える

松本倉庫株式会社の流通団地配送センターには、県内外で生産された段ボールの原料となる原紙や飲料水などが次々と運び込まれる。ここで保管されて、連絡があると今度は段ボール製造会社や大型店舗などへと運ばれていく。いわゆる段ボールや食品トレイなどの製造の工程の間の物流にかかわる『生産物流』と、家電や飲料などのメーカーと販売店をつなぐ『消費物流』の二つの物流を地域で担っている。我々市民の知らない縁の下で物流を支える存在だ。

製造メーカーにとっては、PCで言うと「外付けハードデスク」的な存在ともいえる。生産したものを一旦外の倉庫に保管して、必要に応じて必要な場所へ確実に配送される。それが松本倉庫の役割だ。現在、徹底した機械化・自動化・省力化を図っている。

段ボールの紙材をスピーディに運ぶリフト

「我々の仕事は、地域での信用を生かした物流です」と話すのは、総務部取締役部長の川舩正康さん。会社の理念は「信頼し合える人のつながりを育み、常に地域に愛される会社をめざす」としている。創業は1950年に南松本で旧国鉄の仕事からスタートし、現在は山形村を本社に、松本南部の流通団地、穂高の3か所に巨大な敷地と倉庫を伴う物流のハブを経営している。

左から課長の帯刀優一さん、野村章一さん、取締役の川舩正康さん

物流と言えば、震災の影響はどうだったのかたずねてみた。地域の顧客、輸送トラックのネットワークを生かし、調整弁としての機能を果たしたという。「震災が起きると、実は被災地だけでなく、世の中から水が消えるのです」と話すのは営業課課長の帯刀優一さん。一般市民は事が起こると飲料水を買いにスーパーやコンビニへ走る。すると在庫が切れ、メーカーでは輸送が課題となる。そこで力を発揮するのが物流の会社というわけだ。飲料水に限らず、止まってしまった物流の保管場所としての倉庫会社の役割は大きい。緊急時にも目に見えないところで、社会を下支えしているのだ。

 

農家のひとことから始まった新しい挑戦

「10年ほど前、社長から『倉庫や運送以外で、新しい柱を』と話しがありました」と帯刀さんは話し始める。ある日、農産物の生産者が集まるセミナーに参加。そこで、ソーシャルビジネスとして農業に着手し、新しい販路を探している人物と出会った。「すると多くの農業者さんたちが、独自の売り先が欲しいが、自分達ではなかなか開拓できないことが分かりました」と、帯刀さんはこの課題に着目する。物流のネットワークを持つ我が社なら、農業者のために、なにかできるのではないか・・・と考え始めた。

一方で、和歌山県を拠点にしたベンチャー企業、株式会社農業総合研究所と遭遇した。地方の採れたて野菜をなんとか都会のスーパーに届けられないか。青果の産地直売コーナーが都会のスーパーにあったらいいのではないか。そうした試みを展開していた同研究所と提携し、集めた野菜を流通する事業に乗り出したのだ。

現在、青果集荷場の面積は約80坪。登録農家は山形村・安曇野市・松本市(今井)中心に約300名となった。東京、大阪、名古屋などのスーパーへと輸送する。「やってみると、保冷しなければいけないなど、様々な課題はあった」と話す帯刀さん。今では社の売り上げ全体の1割程度にまで事業が発展している。

各農家さんは梱包された状態の野菜を弊社集荷場に持込み、専用端末で各量販のバーコードシールを発券して添付。写真にある緑色のコンテナに格納していきます(コンテナには各量販店の店名が記載されています)
 
 

そしてまた新たな展開を模索

「実はいま、新たな事業を模索しているのです」と話してくれたのは営業課の若手ホープ、野村章二さん26才。野村さんは入社後、運送の仕事からスタート。営業課に配属になり、とにかく今は様々な勉強会や集まりに顔を出して、ヒントをつかもうと努力中だ。「地域の困りごとを一つでも解決できればうれしい」と話す。社会課題をビジネスで解決するというソーシャルビジネス的発想だ。

社長の野村俊介氏は「『汗と涙』の会社から『ビジョンと知恵』の会社へと生まれ変わる段階」と唱えている。若手社員も他の社員と垣根がなく、自由な発想で発言でき、事業を提案できる社風がここにある。

長野県中小企業家同友会B-cipなどにも加盟し、社員研修や新しい事業づくりにも力を入れている。

 

松本倉庫株式会社 〒390-1301長野県東筑摩郡山形村8228

 

ナガクルは国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGs(エスディージーズ)に賛同しています。この記事は下記のゴールにつながっています。