「食品ロス」と聞けば、大量生産・大量消費・大量廃棄で環境に大きな負荷をかけている「もったいない」状況を思い出す。衣類も食料品と同じような状況だと聞き、現状を調べてみた。

環境省のホームページに「SUSTAINABLE FASHIONこれからのファッションを持続可能に」というページがある。そこには「ファッション産業は、製造にかかるエネルギー使用量やライフサイクルの短さなどから環境負荷が非常に大きい産業と指摘されており、国際的な課題となっています。そして、衣服の生産から着用、廃棄に至るまで環境負荷を考慮したサステナブルなファッションへの取り組みは、近年急速に拡がっています。一方、日本においては、そのような取り組みはまだ限定的なのが現状です」とある。

YouTubeにある「これからのファッションをサステナブルへ ~ Sustainable Fashion ~」という1分半ほどの動画が状況をわかりやすく解説している。

知らないことがたくさんあった。日本で売られている衣服の約98%が海外からの輸入だったとは。
服1着あたり換算のCO2 排出量が約25.5㎏とは、服の重量よりはるかに重い。水消費量が約2,300リットル(浴槽約11杯分)とはとんでもない量だ。服1着のどこにそれだけの水を使うのか想像もできない。 それほど資源を使った服が手放された後は68%が可燃ごみ・不燃ごみとして燃やされている。10トンの大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てしているとは思いも寄らなかった。

サステナブルファッションとは「衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みのことを言います」とある。 なるほど大量生産・大量消費・大量廃棄の現状を見直して、輸入と廃棄処分にかかるCO2 排出量を減らし、貴重な資源と水を守る必要を感じた。

すぐにでもできそうな取り組みは「古着を店舗に持ち込もう」だろうか。服1着が回収によりゴミとして廃棄・焼却されなければ、約0.5kg のCO2が削減されるそうだ。

子どものために求められる衣類

認定特定非営利活動法人フードバンク信州がまとめた「2020コロナ対応緊急子ども応援プロジェクト報告」によると、「食品以外に子どもの応援のために希望する取り組み」は、「学用品・文房具」が26%ともっとも多く、次いで「日用品・遊び道具」22%、「衣類等」20%、「居場所」13%、「学習支援」12%という結果だった。

5人に1人は衣類等を必要としている。毎日焼却・埋め立てされている大型トラック130台分のうち数台分があれば、子どもの応援になるだろうに「もったいない」ことだ。

毎月第3土曜日の昼に長野市ふれあい福祉センター(長野市大字鶴賀緑町1714-5)で開かれる「信州こども食堂」では、会場の入り口に学用品・文房具や衣類などが並べられ、希望者が自由に持って帰れる「無料子ども用品市場」が同時開催されていた。(現在は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、屋外での開催など3密を避ける工夫が凝らされている)
4階の会場まで、用品を何段にも積み上げた台車を押しながらエレベーターを何度も往復して準備するスタッフの大変さを知っている。

長野市内に常設された「回る周るハウス」

そのスタッフが望んでいた常設の子ども用品市場が、2020年7月に長野市内でオープンした「回る周るハウス」だ
「物の循環で子育て応援、SDGsに貢献」を掲げるハウスの利用者は、次の<お約束>を守る。
〇新品でなくても十分使えるものはみんなで大事に使いましょう。
〇SDGsの目標12は、地球上の資源を必要なだけ大事に使う事です。
〇1回に手提げ2個まで持ち帰れます。
〇今必要なものを必要な分だけ持って帰りましょう。(すべて無料です)
〇リサイクル店への転売は禁止です。
〇大事に使ってまた次の人に回せるようにしてください。

使い切ることが当たり前の社会にしよう

回る周るハウス実行委員会の小宮山綾乃代表は、「使い切ろうよ」と言う。「洋服でも文房具でも、ダメになるまで使い切ろうよ。捨てたり買ったりする前に、みんなでシェアできたら、金銭的な負担も大きく減る。すぐに使い捨ててしまう社会から、使い切ることが当たり前の社会にしようよ」と。 地球上の資源を必要なだけ大事に使うことは、SDGsが掲げる目標のひとつ。
なるほどハウスの利用者は、時代の最先端を行く「循環型社会サポーター」のようだ。

かつては近所や親戚へあげたり、もらったり。衣類の「おさがり」も普通に行われていた。それが現代の感覚では「おさがりは、もうらしい(長野県の方言で、気の毒だ、かわいそうといった意味)」になるという。「おさがりは着せたくない」、「みんなと同じで新品がいい」という現代人。いつから意識が変わったのか。変わってしまった意識を、もう一度「もったいない」へ振り向かせることが、持続可能な社会へ向かう一歩になる。

必要なくなった物を、必要としている人に使ってもらう。赤ちゃんには2~3カ月間しか使わないものがある。すぐに成長しサイズが合わなくなってしまったもの。学校では一時期しか使わないものもある。使う時に必要な物だけを用意できれば、余計なお金もかからずに済む。必要な時期が過ぎたら、また次の人に使ってもらえばいい。

貴重な資源を長く大事に使わないと「もったいない」

大事に使っていれば、物は長持ちする。次に使う人のことを考えれば、物を大事にする気持ちが強くなり、もっと長持ちする。そうして次々へ回り周って物が循環していく。いつか「使い切った」と言えるまで、貴重な資源を大事に使っていく「もったいない」と思う心が大事だ。

乳児・幼児・児童向けの衣類や学用品などが並ぶ回る周るハウス

そのまま使えなくなっても、使い切るためのアイデアや技術は、たくさんある。ランドセルや着物をリサイクルして小物を作ったり、衣類を切り抜いた布でパッチワークしたり、布ぞうりにしたり。毛糸をほどいて編み直すのも、かつては当たり前だった。最近はジーンズで作った小物も洒落ている。

残念なことに現代人の多くは、一部が汚れたり傷んだり、サイズが合わなくなったりしたら、まず手放すことを考えるようだ。中には「ぞうきんを自分で作ったことがない。売っているものを買う」という人もいる。リサイクルショップへ持ち込むのは、再利用の可能性があるだけマシだが、そのまま捨ててしまうのは、とにかく「もったいない」。擦り切れていても汚れていても、あの令和元年東日本台風の時は、泥水が入り込んだ家の掃除にとても重宝した。どんなものにも使い道はある。

回る周るハウスは、ものを大切にする意識の高い人が集まって、SDGsの目標達成に向けて循環型の新しい社会をつくる場所。大量生産・大量消費・大量廃棄の現代を見直し、貴重な資源と水を大切にし、CO2の排出量を抑えるためにも、サステナブルファッションを意識していきたい。

部屋を出る時にスタッフがかける「またね」の声は、「人も物も、いつかまたこのハウスを通って、回り周って持続可能な社会が続きますように」との願いに聞こえた。

<取材・文責>ソーシャルライター 吉田 百助

回る周るハウス
長野市西後町625-6 ヤマニビル2階(すやかめさんの斜め向かい、バルコン紳士服店の2階です)
毎週日曜日、午前10時から午後1時まで。

寄付・提供・持ち込みには、次のお願いとお約束をお守りください。
〇1回に手提げ2個程度の量でお願いします。(不用品の片付け屋さんではありません。郵送等は受け付けていません)
〇文房具はできるだけ未使用のものに限ります。(ノート、筆記用具、紙類)
〇子ども服は洗濯(3週間以内)して、サイズを書いたテープを貼って見えるようにたたんで持ち込んでください。(保管して1年以上たっているものは必ず洗濯してください)
〇使用済みの学用品はきれいにしてご提供ください。(できるだけ名前を消してください)
〇裁縫箱・絵の具セットなどは欠品があってもご提供ください。単品だけもください。
〇靴はよく洗い、サイズを書いたテープを貼ってご提供ください。
〇傷みや汚れのあるもの・使えない物はお受け取りできないことがあります。
〇できるだけ季節に合わせて、いま子どもたちに必要な物をお願いします。
〇160センチ以上のサイズの衣類も可。若者向けをお願いします。 〇特別な品についてはスタッフにご相談ください。