松村さんを東京から長野へ導いたのは、学生時代に参加したキリスト教青年会(以下、YMCA)での活動でした。学生ボランティアで信濃町をはじめ、県内各地を訪れたことが縁になりました。
卒業後はYMCAに就職。長野市に移り住み、キャンプディレクターとして青少年の育成に力を注いできました。長野での生活が19年を過ぎた頃、故郷の秋田か東京に戻ろうかと思案していると、長野で生まれ育った3人の子どもたちは「ここがいい!」。その一言でこのまま長野で暮らすことを決めました。
YMCAを退職後、1994年に当時の内坂徹新生病院院長(小布施町)からの誘いを受け、「長野いのちの電話」事務局長に就任しました。
「日本の自殺率は先進国(G7)の中でトップ。子どもの頃から男らしく、女らしく、子どもらしくといった世間の常識に縛られてきたことが背景にある。自分らしさを追求していくことが人生。自分で自分の人生を絶つことは何よりももったいない」
と、相談者のすべてを受け止め、寄り添う「いのちの電話」の存在意義を示します。また、「電話相談員は、非常に大きな役割を背負っている。使命感を持って臨めるかです」と、相談員に必要な心構えを話しました。
松村さんのすべての活動に通奏低音のように響いているのは、「人間の命は尊厳と敬意で扱われなければならない」という信念。だからこそ「人には自分らしい幸せな人生を全うする権利がある」と断言するのです。
(取材・執筆 ソーシャルライター 佐藤テイ子)
プロフィール
社会福祉法人 いのちの電話 事務局長。1956年、秋田市生まれ。長野県NPOセンター理事。長野市吉田地区在住・妻と二人暮らし。好きな食べ物は旬のもの。長野県社会福祉施設BPC*策定アドバイザー。
*BCP(Business Continuity Plan)=事業継続計画。自然災害、テロなどの緊急時、重要な業務が継続できる方策を用意し、生き延びられるようにしておくための計画
団体情報
社会福祉法人 いのちの電話事務局
住所: 長野市大字栗田857-1 TEL:026-225-1000
(記事初出:市民協働サポートセンター発行「機関紙まんまる」2023年夏号)