「ふだん通っている道を注意深く見ると、危険箇所がたくさんあったことに気づきました」
(参加者の感想より)
2023年7月15日(土)、長野市飯綱東区で「防災マップづくりイベント~地区を歩いてリスクをチェックしよう~」が行われました。イベントの様子と参加者が学んだことを紹介します。
参加者はグループに分かれ、地図とチェックシート、筆記用具を手に地区内を歩きます。
いつも通る道に、はじめて通る道。近くに住んでいながら知らなかった場所もあります。
そして、気づいたことや危険だと思う場所などがあれば、なんでも「メモ」していきます。
見慣れた道路にある危険
「ここは雨が降ると、いつもすごい音がして水があふれている」
「あふれた水が、あっちのほうへ流れている」
「側溝はあるけれど、土砂で埋まっている」
「木や葉、ゴミが流れてくると排水口を塞いでしまう」
「ここは日が当たらず、冬に凍りやすい」
「この坂はきつくて、凍結したら登れない」
水があふれる場所や凍っている道路は、いざという時の避難には使えません。足を取られてケガをする危険もあります。どう迂回するかも考えておいた方が安心です。
頭の上にもある危険
「この大木は、もう枯れている。倒れたら怖い」
「樹木が電線にかかっている。あそこは電線が見えないほど茂っている」
「道路を覆う木は、除雪のじゃまになる。除雪車が引っかかって入って来られない」
「除雪できない分、道路が狭くなって接触事故が起きやすい」
台風の強い風で老木が倒れたら危険です。道路を塞いでしまうこともあります。
枝が折れて電線を切ってしまったら、停電になってしまいます。
道路に張り出している邪魔な木
「道路に出ている木を切りたいけれど、地主に連絡がつかない」
「『電線が危ない』と電力会社へ電話したが、木は切れないと言われた」
「市役所へ電話すればいいのか?」
車道や歩道などの道路上に枝葉が張り出してしまい、通行の妨げとなっている樹木を「支障木」といいます。
道路に張り出している樹木が支障木であるかどうかは、建築限界によって「歩道2.5m・車道4.5mの高さ以内には障害物となるようなものはなくす」よう法律で定められています。
また、支障木の伐採・剪定は、木がある敷地の所有者が管理しなければなりません。邪魔だからといって、所有者に断りなく勝手に切ってしまうと、場合によって不法行為と見なされ賠償責任が発生してしまうこともあるようです。
長野市はホームページで「道路上に張り出している樹木等の剪定にご協力ください」と呼びかけています。
道路上に張り出している樹木・草等の剪定のお願い
道路上に樹木や生垣等が張り出すと通行に支障となるだけでなく、折れ木・倒木・落葉が発生し、歩行者や自動車等の通行に支障となる場合があります。
また、道路の見通しを悪くしたり、標識や信号等を隠してしまう恐れもあります。
これらの私有地から張り出している樹木等は土地所有者の方に所有権があるため、倒木など緊急時を除き、市で伐採・枝払い等はできません。(※民法第233条)
折れ木・落葉等の樹木が道路にはみ出したことが原因で事故等が発生した場合は、所有者の方が責任を問われることがあります。(※民法第717条・道路法第43条)
歩行者および自動車等の通行安全確保のため適切な管理をお願いいたします。
長野市公式ホームページより
最近多いクマに襲われた話
「あそこの沢をクマが歩いていた」「あっちから向こうへ行くクマを見た」など、クマの目撃情報もメモしました。この辺りで人的な被害が起きたことは無いけれど、いざ出くわしたなら怖い。
身を守るためには、クマの通り道を知っておいて近寄らないことも大事です。また、けもの道になりそうな場所は、下草を刈って見通しを良くしておくことも予防になります。
当時を思い出す「あの災害の時」
あれもこれもと危険個所をチェックしながら思い出すのは、近年の災害。
この辺りでも大きな被害があったのは…、参加者は当時のことを思い出しつつ、防災について考えました。
2011年3月12日、長野県下水内郡栄村と新潟県県境付近で発生した長野県北部地震。
2014年11月22日、長野県北北安曇郡白馬村を震源として発生した長野県神城断層地震。
2019年10月に記録的な大雨で甚大な被害をもたらした令和元年東日本台風(台風19号)。
「地震で停電した時、水道が止まった。簡易水道は電気がないと水を汲み上げられない」
「トイレを流すこともできずに困った」
「給水車が来ても、重い水を運ぶのが辛かった。高齢者には無理がある」
「いざという時に、水をどうやって確保するかは、地区のみんなで考えておいた方がいい。個人では限界がある」
「地震が来た時に、区民の安否を確認するために一時的な集合場所を決めておいた方がいい」
「近くで集まれる広い場所は、どこがあるか」
情報をひとつの地図にまとめよう
みんなで持ち帰っ た情報を大きな地図にまとめました。
モニターには、所々で撮影してきた写真が映し出されています。
「水はここを流れて、あそこで合流している」
「この道は急で、冬は凍結しやすい」など、次々と情報が書き込まれていきます。
「本棚や食器棚は、しっかり固定しておいた方がいい。下敷きになったら大変」
「歩くことも困難な要支援者の安否確認と避難方法も共有しておいた方がいい」
「携帯電話は、ライト代わりに使える」
「蓄電池があると安心できる」
「100円ショップにある固形燃料でお湯を沸かすことができる」
「雷で家電がすべてショートしたことがある。ブレーカーの蓋が吹き飛んだ」
「大雨は予報で分かるが、地震は予想できないから怖い」…
地図に情報を書き込みながら、気づいたことや思い出したことを、あれこれと話します。
ひと段落したら、災害にそなえ、防災を学び、適時適切な避難行動を支援する「信州防災アプリ」を手持ちの携帯電話にインストールしました。
「今さら覚えるのは面倒と言う人もいるけれど、使ってみれば案外電話よりラク」
「区民lineは全員が入った方がいい。いざという時の連絡に役立つ」
「なにかと気づいた」参加者の感想(一部)
- ふだん通っている道を注意深く見ると危険箇所がたくさんあることに気づきました。
- 生活していて気づかない危険場所に気づけました。
- いろいろな場所の困りごとや災害のことなどを知ることができてよかった。
- 地区内を実際に歩いて、わかりやすく理解できた。
- 多世代が参加し、顔が見え、いろいろな話ができる関係づくりもできました。いざという時の支えあいは、こうした日頃からの交流が大切だと改めて実感しました。
マップづくりは「気づき」の一歩
区内をいっしょに歩いて危険な場所を知り、あれこれ話すことで親交が深まったようです。
区内に住むすべての住民が同じ認識を持って理解を広め、「すぐに改善・改修できることがあるか」、「地主や行政に相談するか」など、3年後・5年後、先々のことも考えながらみんなで話し合うことが、地域の防災力を高めていくことだと実感しました。
昔は「忘れた頃にやってくる」と言っていたのに、最近は「忘れる間もなくやってくる」災害。
日頃からの備えは、個人や家庭だけのことではなく、地域で一体になって考えることもとても大事だと思ったイベントでした。
<取材・編集>ソーシャルライター 吉田 百助