新!寄付企画で「信州の特色ある学び」26団体を応援ー長野県みらいベース

信州の豊かな自然を積極的に活用して保育を行う「やまほいく」や、山村に1年単位で移り住み、地域の学校に通いながら自然体験などを行う「山村留学」など、信州に根差した学びの場づくりの活動に取り組むNPO法人や任意団体が、県内に数多くあります。

公益財団法人「長野県みらい基金」の寄付募集サイト「長野県みらいベース」で、昨年12月から2月いっぱいまでの3ヵ月間、そうした「信州の特色ある学び」を応援する寄付プログラムを実施しています。

クラウドファンディングページより

寄付プログラム「信州の特色ある学び」で団体を応援

「信州の特色ある学び」は、今回が初めての実施。

昨年10月頃、長野県みらい基金と県の県民協働課との間で、やまほいくや山村留学など、長野県の自然や地域資源等を活かして行われる、子どもたちの個性を大切にした学びの活動やその実施団体を応援しようというところから話がスタート。参加団体を募集し、寄付月間として毎年全国規模で啓発キャンペーンが行われる「Giving December」の12月に合わせて、限られた準備期間でクラウドファンディングを開始しました。参加団体は「やまほいく」1団体、「山村留学」1団体、「フリースクール」9団体、「いろいろな学びの場」15団体の計26団体。

信州の特色ある学び事業全体と、各団体への個別の寄付、いずれも可能です。事業全体に寄せられた寄付は、参加団体に均等に配分されます。

長野県みらいベースへの寄付は、通常は10%が決済手数料として差し引かれて団体に入りますが、県が10%を補助金で充当するため、寄付額の全額を団体に渡せるところが特徴です。

記者発表会に集まった「信州の特色ある学び」への参加団体=12月15日、長野県庁(長野県みらい基金提供)

10年間、児童養護施設などでICTを活用した学習支援

「信州の特色ある学び」に参加する団体の一つ、NPO法人「ITサポート銀のかささぎ」の活動を取材しました。

ITサポート銀のかささぎのタブレットで学習する小学生

銀のかささぎは、2012年にボランティアグループとして発足し、東京児童相談所一時保護所での学習支援活動からスタート。2013年にNPO法人化。現在、主に10人のメンバーと学生ボランティア7人ほどで活動。長野市や千曲市の児童養護施設や子ども食堂などでICTを活用した学習支援を行っています。

1月15日には、児童養護施設「松代福祉寮」での今年初の学習支援に訪れました。コロナ禍の影響で、月2回を1回に訪問回数を減らし、一度に集まる子どもの人数も数人単位での支援になっていますが、活動を絶やすことなく続けています。

銀のかささぎが所有しているタブレットを、子どもたちは慣れた様子で手に取り、それぞれがやりたい学習アプリに取り組みます。3年生の男の子は「ゲームみたいで楽しい」と言い、夢中で操作していました。

ITサポート銀のかささぎ理事長の山越久美子さん(左)と宮内輝美さん

2020年度から今年度末までの3年間は、休眠預金事業ICT学習支援官民協働事業を行い、一般社団法人「ちくま未来戦略研究機構」と連携し、千曲市の「ちくま未来教室」を拠点にプログラミング教室を開くなど、活動の幅を広げてきました。

理事長の山越久美子さんは「児童養護施設や子ども食堂でタブレットを使った学習支援を10年していて、アウトリーチが得意でしたが、休眠預金のおかげでちくま未来教室という拠点ができました。休眠預金は今年度で終了ですので、無料で学習支援をしていた教室を続けていきたいという思いでプロジェクトに参加しました。

私は20年ほど学習現場にいますが、家庭の経済環境が随時変わり、塾代が出せない家庭の皆さんが多くいます。その子どもたちに学習を提供していきたいと思っています」と話します。

学習支援活動は無料で行っているため、寄付集めが大事です。

資金集めをして、もっと学習支援の回数を増やしたいそうですが、例年、個人からの寄付はほとんどなく、企業や団体からの寄付がほとんどだといいます。

クラウドファンディングは、普段団体とかかわりがない個人でも、団体を知り、オンラインで手軽に寄付ができるところがメリットです。

地域の方を自分たちの応援団に!

信州の特色ある学びの応援の募集総額は23,399,310円

これまでに集まった寄付は期間終了まで約20日となった2月9日現在、6,356,314円となっています。

学びに直接関わる事業を行いながらクラウドファンディングに取り組むのは、団体にとって負担が大きいのではないかと感じましたが、長野県みらい基金の高橋潤理事長は「NPOであっても法人経営なので、事業をやっていくということは社会的責任もあります。子どもたちが集まる場所をやっていて、経営がうまくいかないからと辞めてしまっては、利用していたお子さんや親御さんは途方にくれてしまいます。地域の方に活動を知ってもらい自分たちの応援団を増やし、私たちのような中間支援の団体と共に継続のための環境づくりをすることが大事です。今回のクラウドファンディングはそのための一歩だと考えています」と話していました。

子どもたち一人ひとりが自分に合った学びの環境を選べるよう、安定した学びの場が維持されるために、地域の人間としてできることを改めて考えさせられました。豊かな学びの場をつくる活動をする団体が地域にあることを知り、細くても長い応援をしていくことの大切さを感じます。

取材執筆/松井明子(ナガクルソーシャルライター)

問い合わせ先
公益財団法人「長野県みらい基金」
松本事務所
〒390-0852 長野県松本市島立1020 松本合同庁舎2階
TEL 0263-50-5535