長野市篠ノ井の有旅地区出身の五味さんは、結婚を機に芋井へ移住した際、山深く豊かな自然と、地域の結束感に驚いたそうです。
ある日、「インタープリター養成講座」が開催されると知り、興味をもちました。インタープリターとは、動植物に関する知識や自然のしくみを人々に伝える人。「虫は苦手だけど…自分もやってみたい」と思い切って参加しました。講座を通じて自然の恵みを知ると同時に、「虫をはじめ動植物が存在する環境こそが人間の元であり、守っていかないと」という気持ちが芽生えたそうです。
その後芋井地区広瀬で、生活協同組合コープながのが食農体験企画「野あそび塾」を開催。スタッフとして参加する中で、「どうしてここにこの花が生えているの?」など、参加者と一緒に考えることを大切にしてきたそうですが、この事業が終了してしまいます。
「このままではこの地は荒れてしまう。それだけは避けたい」と五味さんを含めた有志が集まり、2014年「天空の里 いもい農場」を発足しました。多世代の交流や地域との協働をめざした食農体験を実施、これまでに3000人近くが参加しました。
「スタッフ自身が楽しんで活動しているから、アイデアがどんどん出て形になる。それがありがたくて」と嬉しそうに話します。五味さん自身が、参加する子どもたちと同じ目線になって自然と触れ合い楽しむ姿は、どちらが子どもかわからなくなるくらいだそうです。
そんな穏やかな五味さんですが、40歳過ぎたころ仕事先で事故に遭い左手を切断。手術で手はつながりましたが、後遺症もあり障がい者手帳をもつ身になりました。
「障がいを負ったことで、何もなく生きてきた頃よりも世の中の知らない面を知ることができた」と前向きに話してくれました。
インタビュー中、終始「ありがたい」と何度も口にする五味さん。どうしてそんなに感謝の気持ちが芽生えるのかたずねると、「だって本当にありがたいんですから」と。その表情は何の疑問もなく純粋な子どものようでした。
<プロフィール> 県内外にいる6歳から高校生までの4人の孫たちは、長期休暇に芋井の大自然で遊ぶことを楽しみにしているそうです。 <団体情報> 天空の里いもい農場 長野市広瀬2261 TEL090-9358-3286
(記事初出:市民協働サポートセンター発行「機関紙まんまる」2022年秋号)