寄稿/社会貢献教育ファシリテーター 戸井田 由奈
※社会貢献教育ファシリテーターとは、日本ファンドレイジング協会が認定する社会貢献に関するさまざまな教育プログラムを理解し、学校教育現場に社会貢献に関するプログラムを提供する案内役です。
高校生がNPOから寄付について学ぶ授業
「寄付の教室®」とは、自分の価値観で寄付先を選ぶという疑似体験を通して、寄付の成功体験を得ることをめざすプログラムです。
2021寄付白書によると、日本における個人の寄付総額は、過去10年で約2倍の1兆2,126億円まで増えています。その一因として、東日本大震災を契機に寄付への関心が高まったことやコロナ禍の支援などが考えられます。
近年目立つのは、クラウドファンディングというインターネットを介して不特定多数の人から資金を調達する方法。この寄付総額は、2014年から5年で約10倍の2,000億円を超えており、寄付者にとっても寄付を集める側にとっても身近なものになりつつあります。
寄付はNPOにとって自由な財源であり、活動を支える応援者の存在を感じられるものです。市民にとっては社会貢献に参加するきっかけです。しかし、内閣府令和2年度非営利活動法人に関する実態調査では、日本でNPO法人の67%が寄付への取り組みをしていない現状があります。
(ながののNPOと市民をつなぐ機関誌まんまる 2022冬号の特集より)
どの団体へ、なぜ寄付するのか?
地域にある課題を知るためには、地域へ足を運ぶフィールドワークが必要だと準備しはじめた、長野県塩尻市にある東京都市大学塩尻高等学校探求コースの1年生たち。まずは、地域で活動しているNPOの人から話を聞きたいと、信州ファンドレイジングチームを経由して「寄付の教室®」の講義の依頼があり授業を行いました。
2022年9月6日、教室に集まったのは「NPOという言葉も意味もわからないが、ボランティアや寄付はしたことがある」という生徒がほとんど。
まずは「NPOってなに?」という話から。NPOと寄付のつながりについて少し知ったところで、実際に寄付先を選ぶ体験をしました。
3つのNPO団体の紹介を受けてから、「自分だったらどの団体に寄付をするのか」を考えます。
「なぜそこに寄付をするのか」という問いに対し、苦労しながらも自分の言葉で表現していました。
「海外の児童労働をなくす活動をするNPOに寄付をしたい」と言った生徒は、「自分にとって当たり前のことが、海外で自分よりも小さい子ができないなんて信じられないし、嫌だから」と、理由を話しました。
ここで「自分は何を大事にしたいのか」「自分が気にかけることは何なのか」と、自分自身を見つめる機会につながります。
迷い悩みながら自分で選ぶこと
続いてグループワーク。グループとして「どの団体へいくら寄付するか」をまとめます。
最初は一つの団体に絞ろうとしていた学生たちも、ほかの人の意見を聞くうちに迷いがでてきたようで、最終的に一つの団体に絞ったグループは1つ。寄付金額を分散させたり、お金以外の寄付を探したりしたグループもありました。
「チョコレートを買ったら支援につながると聞いた。お金ではなく、そういった形もあるなら積極的にやりたい」と話す学生もいました。
最後は全員で意見を共有。どのグループも迷い悩みながら寄付先を選んだことがわかりました。ある生徒は「とても悩んだ。でも他の人の意見も聞くことができてとても面白かった」と話しました。
大事なことは、そのプロセスであり、正解はありません。生徒たちが自分で考えたことに自信を持ってほしいですし、今後も自分の目と考えで選ぶということのきっかけになってほしいと思いました。
【報告】戸井田 由奈(特定非営利活動法人 長野県NPOセンター/長野市市民協働サポートセンター コ―ディネーター/社会貢献教育ファシリテーター)
【編集】ソーシャルライター 吉田 百助
教育機関や企業などでの「寄付の教室®」開催のお問い合わせは、
特定非営利活動法人長野県NPOセンターへ 電話 :026-269-0015